理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
変形性股関節症患者の座位側方移動動作における腰椎アライメントの特徴
工藤 賢治山本 澄子櫻井 愛子石渡 圭一畔柳 裕二
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p. Ca0262

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抄録
【はじめに、目的】  変形性股関節症(変股症)は股関節の機能低下により歩容異常を呈することが多いが、股関節機能に対する治療だけでは歩容が十分改善しないことも少なくない。変股症はHip-Spine Syndrome(HSS)の代表的疾患でもあり、脊柱が股関節に影響を及ぼすこともあるため、股関節の影響を極力除去した脊柱機能を捉えることも重要と考える。しかし、HSSの評価は、X線画像を用いた静止立位の検証、すなわち股関節の影響も含めた脊柱のアライメント評価に留まることが多い。変股症の歩容は、一側下肢への荷重量が増大する時期の側方への過度な骨盤傾斜や体幹動揺やこれらの左右差が特徴的であり、変股症患者では前額面における脊柱の動きの制限や左右差の増大が予想される。本研究の目的は、股関節の影響の少ない座位での側方移動動作における腰椎アライメントについて変股症患者と健常者を比較検討することである。【方法】 対象は変股症患者3名(年齢64±8歳、日本整形外科学会X線病期分類:進行期2例、末期1例)と健常者10名(年齢26±3歳)とした。変股症患者は片側性に有痛症状があり、脊椎及び両下肢に手術の既往がないものとした。 X線撮影は整形外科医の指示のもと放射線技師により実施され、静止座位と側方移動時(患側・健側)の3条件における全脊柱を撮影した。撮影肢位は、椅子の上に設置した2台の体重計の境界線上に被験者の仙骨稜を位置させ、股関節内外転・内外旋中間位、股・膝・足関節90°屈曲位で撮影する静止座位、静止座位時の2つの体重計の合計値を基準に、片側の体重計がその80%となる位置まで側方移動する80%荷重位とした。側方移動については、できる限り骨盤を動かさず、胸郭を側方に平行移動するよう口頭指示した。 撮影したX線画像から、前額面における第1腰椎(L1)から第5腰椎(L5)及び仙骨底(S)の傾斜角度、Sの中点から立ち上げた垂直線から各椎体の中心までの側方距離を算出した。分析項目は、L1傾斜角度とS傾斜角度の差(腰椎側屈角)、L1とSの側方距離(腰椎変位量)、荷重側への傾斜角度が最大となる椎体の高さ(最大傾斜高)、変位量が最大となる椎体の高さ(最大変位高)の4項目とし、左右両側荷重位の平均値及び左右差について変股症群と健常群で比較検討した。椎体の高さはSから椎体までの鉛直方向距離とした。なお、距離因子は実測値を静止座位時のL1からSまでの鉛直方向距離で除した値で表した。統計処理にはMann-WhitneyU-testを使用した。【倫理的配慮、説明と同意】 計測に先立ち、全対象者に文書及び口頭にて研究の趣旨を説明し、同意書への署名をもって同意を得た。なお、本研究計画は国際医療福祉大学の倫理審査会の承認を得ている。【結果】 変股症群と健常群の比較において、左右両側荷重位の平均値は、腰椎側屈角に有意差はなく、腰椎変位量は有意に変股症群で小さかった(p=0.002)。最大傾斜高に有意差はなく、最大変位高は変股症群で有意に小さかった(p=0.001)。また、両群間の左右差は、腰椎側屈角及び腰椎変位量には有意差はなく、最大傾斜高及び最大変位高においては変股症群で有意に大きかった(p=0.006、0.007)。【考察】 今回の結果では、変股症群の腰椎変位量は健常群より有意に小さかった。今回の側方移動は骨盤を動かさないという制約があり、変股症群では骨盤固定位での腰椎の変位は困難であることが推察される。腰椎の側屈よりも変位による重心移動の方が上位の脊柱のアライメント変化は小さくなると考えられ、両側における腰椎変位量の減少は変股症の脊柱機能を捉える重要な因子になる可能性がある。また、最大変位高・傾斜高の左右差が変股症群で有意に大きかった。これは荷重反対側への動き、すなわち立ち直りが始まる椎体から骨盤までの距離の左右差の増大を表すと考えられ、側方移動時の骨盤の固定性に関与する腰椎機能の左右差を表している可能性がある。さらに、最大変位・傾斜高が必ずしも患側で高位(あるいは低位)になるとは限らなかった。このことよりこれらの左右差の増大は変股症患者の股関節ではなく腰椎機能の特徴を意味するとも解釈できる。以上から、座位側方移動時の腰椎アライメントから股関節機能とは別に腰椎自体の機能を表す因子を抽出できたと考える。【理学療法学研究としての意義】 HSSの観点から変股症患者の腰椎機能が股関節や歩容に影響することは多いと思われる。本研究により抽出された腰椎自体の機能と股関節機能や歩容との関係を検証することで、歩容改善のために股関節だけでなく、腰椎機能に対するアプローチの有用性を明らかにできる可能性があると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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