理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
大腿骨頸部・転子部骨折における術後早期患側下肢荷重が術後経過におよぼす影響
辻村 康彦星野 啓介
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p. Ca0281

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抄録
【目的】 高齢者における術後早期回復の鍵は,いかに早く歩行能力を再獲得できるかにあり,この際最も重要なのは患側下肢への荷重コントロールが可能か否かである.術後早期より荷重コントロールが可能であることは,その後の経過に大きく影響することは周知の事実であり,近年では平行棒内歩行可能時期と杖歩行獲得時期の関係や,術後早期荷重と歩行能力再獲得予測に関する報告などが多数みられるようになってきている. そこで今回,術後早期患側下肢荷重に影響を与える因子と,荷重率が術後経過に与える影響につき検討した.【方法】 2008年1月から2010年8月までに大腿骨頸部・転子部骨折にて骨接合術(γネイル,ハンソンピン)を施行し,当科に依頼のあった患者の中から,1.60~80歳,2.術後3日以内にリハビリテーションを開始した,3.リハビリテーション実施に支障となる運動・精神機能障害がない,4.受傷前に屋内ADL・歩行が自立していた,5.退院・転院時杖歩行が可能,以上の条件を満たす47例(男性11例,女性36例,平均年齢73歳)を作為的に抽出し対象とした. 荷重測定方法に関しては,平行棒内に下肢荷重計(アニマ社製G620)を設置したプラットホームを作製し,その上で自由歩行を行い荷重量を測定し,体重で除した値を荷重率として用いた.また,この際生じる疼痛に関しては,Numerical rating scale(NRS)を用いて評価した.荷重測定は毎日実施し,歩行プログラムに反映した. 歩行プログラムは,1.歩行器への基準:荷重測定で50%以上の荷重率で,平行棒内歩行が3~5往復(30m以上)可能,2.杖歩行への基準:荷重測定で70%以上の荷重率で,歩行器で50m以上の歩行が可能,と設定しできる限り遵守した.また,歩行器及び杖歩行トレーニング開始時と,退院・転院時にはバランス評価も実施した.評価にはOG技研社製GB-210にてFunctional reach test(FRT)を実施し,搭載されているFRT値予測式をもとにした%FRT値を結果として用いた. 検討内容は,今回術後早期荷重の時期を平行棒内歩行開始日と定義し,この時点での荷重率に影響を与える因子として,1.骨折型(頸部,転子部),2.骨折の分類(安定型,不安定型),3.疼痛の程度,につき検討した.骨折型及び骨折の分類に関しては,2群間での荷重率の比較を行うとともに, 疼痛に関する比較もあわせて検討した.疼痛の程度に関しては,荷重率との相関を求めた.術後経過への影響に関しては,1.術後早期荷重率と杖歩行獲得到達日数,2.術後早期荷重率とバランス(歩行器及び杖歩行トレーニング開始時,退院・転院時),につき各々相関を求めた.【説明と同意】 今回の調査にあたり,主治医及び理学療法士から説明を行い,全ての患者に同意を得た.【結果】 荷重率に影響を与える因子として,骨折型に関しては,頸部骨折68%,転子部骨折58%とわずかに有意差を認めたが両者とも荷重率は良好であった.骨折の分類に関しては,安定型65%,不安定型61.3%と有意差を認めなかった。また、疼痛に関しても検討したが同様の結果であった.疼痛の程度に関しては,荷重率との間に有意な負の相関関係を認めた(r=-0.81). 術後経過への影響としては,荷重率と杖歩行獲得到達日数には有意な負の相関関係を認めた(r=-0.746).さらに荷重率を50%以上群と50%以下群に分けて比較検討したが,50%以下群11.8±2.2日,50%以上群7.6±1.5日と到達日数に有意な差を認めた.荷重率とバランスに関しては,歩行器(r=0.77),杖(r=0.75),退院・転院時(r=0.82)とすべての時期において有意な相関関係を認めた.【考察】 手術手技の進歩による非常に小さな侵襲と,インプラントの改良による固定力の向上は,骨折形態による術後早期荷重率の差をなくしていた.一方,荷重率は疼痛に対して非常に強い影響を受けていることが明らかとなり,薬物療法や物理療法などによる疼痛コントロールが,術後リハビリテーションの経過を決定づけることが示唆された. 荷重率と術後経過に関しては,杖歩行到達日数及びバランス能力と強い関係を認めたことから,術後早期の荷重状態を評価することは、歩行能力再獲得の早期予測に役立つのではないかと考えられた. 今後も症例数を増やしさらに検討していきたいと考えている.【理学療法学研究としての意義】 術後早期の荷重率と術後経過の関係がさらに明らかになれば,急性期病院において自宅退院か転院かを決定する際に,非常に有効な判断基準になる可能性がある.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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