理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
足関節テーピングの施行段階による制動力および主観的テーピング効果
石西 まゆみ瓜谷 大輔
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キーワード: テーピング, 足関節, 制動力
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p. Ca0945

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抄録
【はじめに、目的】 足関節テーピングは足関節内反捻挫の応急処置や再発予防を目的に行われる。足関節テーピングの効果として関節の固定によって安定性を得られる一方で、足関節運動の制限によってパフォーマンスに影響を及ぼす可能性が考えられる。先行研究では運動時間によるテーピングの制動力の変化を検討した報告はあるものの、テーピングの各段階での制動力について検討されたものは少ない。そこで本研究では、足関節テーピングの各段階の制動力と主観的テーピング効果を明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は下肢疾患を有さない健常男子大学生20名(年齢21.7±1.3歳)とした。対象者には事前にアンケート調査を行い、年齢、身長、体重、サッカーまたはフットサル歴、下肢の既往歴、ケガの頻度および回数について調査した。対象者は足関節テーピングの施行内容によってランダムに3群に分類した。A群にはアンカー、スターアップ、サーキュラー、ホースシュー、ヒールロック、フィギュアエイトを実施した。B群にはアンカー、スターアップ、サーキュラー、ホースシュー、ヒールロックを実施した。C群にはアンカー、スターアップ、サーキュラー、ホースシューを実施した。テーピングはニトリートのCBテープ(38mm)を使用し、非利き足に実施した。各群に足関節テーピングを行った後、介入内容として対象者にフットサルを20分ハーフで公式試合のルールに従ってプレーしてもらった。制動力の評価は介入前後での足関節内反角度とした。ハンドヘルドダイナモメーター(ミュータスF1、アニマ社製)で足関節内反方向に10kgfの負荷を与え、基本軸を下腿軸への垂直線、移動軸を足底面として足関節内反角度を測定した。主観的テーピング効果については固定性、安心感、違和感、パフォーマンスへの影響をVisual analog scale(VAS)で聴取した。測定は介入前後に実施した。統計解析は介入前の足関節内反角度、介入前後での足関節内反角度の変化量およびVASの変化量をKruskal-Wallis検定にて有意水準5%未満として実施した。Kruskal-Wallis検定で有意差を認めたものについてはMann-WhitneyのU検定にBonferroniの不等式を適用した多重比較検定を有意水準1.67%未満として実施した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には事前に本研究に関する説明を十分に行い、同意を得た。【結果】 介入前の足関節内反角度に3群間での有意差は認められなかった。運動前後の足関節の内反角度の変化量はA群とC群のみに有意差が認められ、C群(中央値27.5度)がA群(中央値10度)より有意に高値を示した。またVASによる主観的テーピング効果において運動前後の変化量で有意差は認められなかった。【考察】 本研究では、介入前後の制動力の変化量においてC群がA群より有意に高値であった。ヒールロック、フィギュアエイトは足関節内反を制動するテープであるため、それらを取り除くことで、より足関節内反の制動力が失われたためであると考えられる。一方でA群とB群、B群とC群の間で有意差が認められなかったことより、ヒールロック、フィギュアエイトの個々の制動力としては維持されていることが示唆された。しかし本研究では順番にテーピングを除去した場合、VASの結果から主観的な制動効果に変化が見られなかったことから、フィギュアエイトを除去しても主観的および客観的制動力はともに保たれるのではないかと考えられた。よってスポーツ現場等で経済的事情や時間的制約など状況に応じてやむを得ない場合は、フィギュアエイトを省くことが可能ではないかと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 本研究ではテーピングの主観的制動効果と客観的制動力が実施段階によってどこまで維持されるかに着目した点が特徴である。本研究はスポーツ理学療法の臨床において活かせる知見を提供するとともに、本研究結果からテーピングの経済的側面や時間的側面に対する効果あるいはテーピングの効果的な組み合わせを検討する研究へと発展させることが期待できる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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