理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
2平面DYJOCにおける筋活
久保 雅昭鈴木 謙介鈴木 文子小泉 周也武田 直人加藤 知生
著者情報
キーワード: DYJOC, 筋電図, ペダリング
会議録・要旨集 フリー

p. Cb0475

詳細
抄録
【はじめに、目的】 我々は第43、44回の当学術大会において、膝前十字靱帯(以下ACL)再建術後1カ月間に2平面DYJOCを使用した場合、術後3カ月時点での患側膝屈曲筋力の筋力低下が抑えられると報告した。当院ではACL再建術を自家半腱様筋、薄筋腱による二重束再建術を施行している。術後リハビリプログラムは再建ACLに対して愛護的で効果的な下肢荷重連鎖の概念によるスクワットや早期歩行練習などを施行している。2平面DYJOCは下肢先端での2平面同時運動様式であり、動的関節制御と同等の効果が期待されるが、実際の筋活動について研究は行われていない。今回、筋電図を使用し仰臥位姿勢における2平面DYJOCとサイクル型エルゴメーターのペダリング動作の比較検討を行い若干の知見を得たので報告する。【方法】 対象は下肢及び体幹に傷害の既往のない健常成人7名(男子7名、平均年齢19-21歳)とした。2平面DYJOCは、独自に製作した専用の台とゴムボール2個を使用し、踵と足部内側で同時にゴムボールのコントロールをしながらペダリング様動作を行う運動様式である。エルゴメーターはチャタヌガ社製のマグネサイザーを使用し、ペダリング運動を施行した。測定肢位は背臥位とした。両運動様式とも動作時の開始位置については、ペダルの高さを下死点として膝屈曲角度20°に設定した。両運動様式とも動作速度は被験者における快適な運動速度とし、マグネサイザーのペダル負荷量は最低レベルに設定した。試行順序はランダムとし、各施行間には1分間程度の休息を入れた。筋電図の測定筋は右側の大腿直筋、内側広筋斜頭、外側広筋、半膜様筋、大腿二頭筋長頭の5筋で、岩下らの導出部位を参考とした。筋電図測定は酒井医療のノラクソン社製のテレマイオを使用した。両運動様式は、開始時から動作中の筋電図のモニタリングを行い、定常状態に安定した動作5回以上の筋活動量の導出が確認された後、動作終了とし、各施行20秒程度行った。さらに同期されたビデオ画像より運動中の最大膝伸展位と最大膝屈曲位を確認しペダリング1周期を算出した。連続し定常状態にある動作3周期分をデータとして採用し、膝屈曲相と膝伸展相に分けて、各筋の最大等尺性収縮時を100%として正規化し、相対値の平均(%平均MVC)として表した。なお、各筋の最大等尺性収縮は、座位による膝90°屈曲位にて計測した。各筋での2平面DYJOCとエルゴメーターによる影響を%平均MVCにて、膝屈曲相と膝伸展相に分けて分析した。統計学的分析には、各要因について対応のあるt検定を用いた。なお、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 各被験者に対して本研究の目的および内容を十分に説明し、研究参加への同意を得た。【結果】 2平面DYJOCとエルゴメーターの比較は、それぞれ伸展相では大腿直筋3.0と1.43、大腿二頭筋8.21と3.51、屈曲相では大腿二頭筋5.93と1.71であり、2平面DYJOCについて有意な高値を示した。その他の筋について有意差は認められなかった。【考察】 本研究の目的は、2平面DYJOCにおける下肢筋の%平均MVCを分析することである。本研究の結果より、2平面DYJOCはエルゴメーターよりも膝伸展相で大腿直筋、大腿二頭筋に膝屈曲相で大腿二頭筋が有意に高値を示したことから、大腿二頭筋の活動を促通するのに有効な方法であることが示唆された。浦辺らは、ペダリング動作において二関節筋は上下の関節コントロールに関与し、関節の位置変化における筋活動を合理化すると報告している。さらに熊本らは下肢先端部の全方向性運動により下肢二関節筋群と単関節筋群との円滑な筋収縮が得られると述べている。2平面DYJOCが二関節筋に影響したことは、運動課題が多関節運動コントロールのために単関節筋よりも影響を受けやすいことが考えられる。岩下らはトークリップ非装着でのペダリング動作において半膜様筋と大腿二頭筋の筋活動が増加することについて、下肢不安定に対するCKCにおける関節の安定性や運動調整が要求された影響と報告している。このことから、2平面DYJOCの踵や足部でゴムボールのコントロールをしながらペダリング様動作を行うことはエルゴメーターよりも下肢を不安定な状態にしている運動様式であると考えられる。そのため、CKCにおける関節の安定性や運動調整が要求されたことで高い筋活動が得られたと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究は2平面DYJOCの筋活動を明らかにすることである。2平面DYJOCの運動様式はサイクル型のペダリング運動よりも%平均MVCが二関節筋で優位に高値であり、急性期の安静度の制限など状況別に対応できる有効な理学療法の手段と考えられる。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top