理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
座位と背臥位の姿勢から見た運動療法の経時的効果
─PNFにおける基本技術を用いての検討─
加藤 勝行北川 優本堂 雄大
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p. Cb0481

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抄録

【はじめに、目的】 固有受容性神経筋促通技手技(PNF:Proprioceptive Neuromuscular Facilitation以下PNF)は、Kabatが理論化し、Knott、Vossらによって具体的手技が加えられ、今日に至った運動療法の一つである。PNF法の特徴は、対角線的、螺旋的運動方向への特異的パターンを利用した技術として、基本技術と特殊技術がある。基本技術には聴覚、視覚、表在感覚等からの入力と固有受容器系の促通としての筋の伸張、抵抗、関節牽引、関節圧縮、他動、自動介助運動がある。特殊技術では、初期導入の促通や可動域改善などを高める応用的技術がある。本研究では、先行研究において時系列からみたPNF法の実施後の研究が成されていないことから、パフォーマンスへの反応効果に例えられる敏捷性に着目した。関節運動から敏捷性を体力の要素の一因子としてとらえ、反応時間の短縮が持続するならば、すなわち動作反応の準備態勢を整えていることを示し、素早い動作能力としての敏捷性という機能的向上がもたらされると考えた。PNFの運動療法は、機能に特化した効果を目標としていることから、敏捷性の向上、ROMといった筋の柔軟性の拡大が目的であると考える。本研究では、健常者に対し、座位と背臥位での敏捷性から見たPNF法の経時的効果を比較検討するため、他動、自動介助運動を除いた基本技術を用いて、上肢PNFパターンを実施し、その後の随意運動への影響をみるため時間を追った肘の屈曲運動に対する反応時間(RT:Reaction Time以下RT)を用いて検討した。【方法】 1) 対象:健常成人男性40名とした。対象者の属性は平均年齢21.8±4.2歳,平均身長169.3±2.8cm,平均体重68.8±2.3kgであった。2) 方法:背臥位PNF実施群、座位PNF実施群、背臥位での運動群、背臥位での安静群の4群に分け比較検討した。座位PNF実施群、背臥位PNF実施群においては、基本技術を用いた上肢PNFの肘を曲げながらの屈曲-内転-外旋パターンを5回、肘の屈伸運動群は、背臥位にて肘の屈伸運動を5回、安静群は背臥位で5分間安静をとらせた後、それぞれに測定した。解析装置はNORAXON USA社製MYOSYSTEM1200、ならびにMYOCLINICAL短音はSANYO DITAL TOLK BOOK ICR-B80RMを使用した。手順は、各測定群に対し予告信号後、音刺激により接地した銅版から離れたoff信号時までの波形より反応時間を測定した。対象者には各10名に群分けし、椅子座位での肩関節屈曲40度、外転30度、肘関節屈曲60度、前腕回外位の共通肢位にて上腕二頭筋を主とする肘の屈曲運動を行ってもらい、事前、直後、5分後、10分後、15分後、20分後、30分後に設定しRTを測定した。統計処理は、SPSSを用いて各群における7回の測定で得られたRTの平均値から、多重比較Dunnett検定を用いて有意確率を5%未満とし比較検討をした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者にはヘルシンキ宣言に基づき、事前に本研究を説明し十分に理解と同意を得た上で行った。【結果】 肘の屈伸の運動群及び安静群では、運動前の値と実施直後から30分後まで実施前との各値間において有意差は認めなかった。基本技術の背臥位では、実施直後から20分後までPNF実施前との間に有意差を認めた。基本技術の座位では、実施直後から20分後までPNF実施前との間に有意差を認めた。【考察】 肘の屈伸運動群および安静群では、運動前の値と実施直後から30分後まで実施前との各値間において有意差は認めなかった。この運動では、関節運動への前腕の加重程度の抵抗力や遅い関節圧縮は得られるもののRTの短縮への促通に至るまでの影響は見られなかったと考えられる。安静群では、精神的緊張の緩和と不動の影響は筋の短縮や腱紡錘を活性化して動筋の働きを休める状況にあることから運動のスムーズ性が損われた結果、抵抗刺激も得られないことから感覚受容器へ促通刺激として十分に得られなかったためRTの短縮に影響をもたらさなかったと考える。先行研究同様に基本技術両実施群では、実施直後から20分後までPNF実施前との間に有意差を認めた。姿勢の比較からは座位でわずかに数値的優位を認めた。これは自重での伸張刺激による筋紡錘、関節受容器への影響が考えられる。また基本技術では、PNFの特異的パターンによる空間的加重からの促通としての影響と筋紡錘への興奮性の刺激が入り、抵抗刺激の漸増漸減による関節受容器、並びに固有感覚受容器からの相反性神経支配を刺激することで、筋の収縮効果を高めたことによるものと考える。【理学療法学研究としての意義】 座位、背臥位においても最長20分前でのPNFの選択的導入が可能と分かり、実践応用として競技関連域および痛みのない骨関節系等で、リハビリテーション医療における理学療法での応用が示唆された。

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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