抄録
【はじめに,目的】 高齢者の膝痛,腰痛などの関節痛は下肢の運動機能低下に影響し生活動作を阻害すると考えられている.特に女性の変形性関節症の罹患率は男性よりも高く,女性の関節痛予防対策が急がれる.第46回本学会では,生活動作における和式動作や昇降動作に関節痛が多いことを報告した.今回は事例数を増やし,動作毎における関節痛有無との関連を調べた. 研究目的は,運動指導サポーター養成教室(養成教室)に参加した成人・高年女性の関節痛と運動機能,生活動作の関連について検証することである.【方法】 対象はN市の養成教室に参加した女性95名である.年齢は43歳~79歳,平均67.3±6.5歳である.対象者は養成教室への自発的申込者であり,全員が支障なく日常生活を送っている.養成教室プログラムは事前・事後の体力測定および6回の講座で構成される.今回は平成22年度,23年度における事前の体力測定データを使用した.データは,個人の属性,体格,片足立ち,握力,膝関節伸展筋力,Timed Up & Go(TUG),ジャンプ時の下肢筋パワー,30秒椅子立ち上がり(CS-30),膝関節伸展筋力,背筋力,踵骨骨量である.アンケート項目は関節痛の部位,生活動作遂行時の関節痛有無,転倒経験,転倒の自己効力感(転ばない自信)などである.統計的解析は対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定,カイ二乗検定を用いた.p<0.05を有意差ありとした.【倫理的配慮、説明と同意】 本調査は新潟医療福祉大学倫理委員会の承認を受けた.参加者全員に直接研究内容を説明し書面による同意を得た.【結果】 1. 対象者の社会的活動では,この1年間に入院4%,この1年間にボランティア活動68%,この1年間にサークルなどの活動91%,日頃,決まった運動実施78%,農作業している52%であった. 2.慢性(6ヵ月以上)の関節痛は34名(36%)であった.関節別では,膝30名(32%),腰30名(32%),肩19名(20%),首17名(18%),股7名(7%)であった.この内,2つ以上の項目の重複した者は27名であった. 3.動作遂行時に関節痛がある者は,正座45%,起き上がる30%,階段昇降30%,床から起立28%,重い物を持つ23%,歩き始め22%,寝返る20%,小走り18%,30分以上の歩行18%,椅子から起立17%,洗面でかがむ16%,就寝中12%,平坦歩行11%,衣服の着替え10%であった.4.動作毎に動作遂行時の関節痛群と関節痛無し群に分けて,年齢,体格,運動機能,転倒経験,転倒自己効力感を比較した.その結果,正座における関節痛群は片足立ち,CS-30,膝伸展筋力,下肢の筋パワー,転倒経験,転倒の自己効力感で有意に劣っていた(以下同様の比較).起き上がりにおいては2群に差がなかった.階段昇降における関節痛群は年齢が高い,身長が高い,片足立ちが劣っていた.床から起立における関節痛群は片足立ち,CS-30,骨量で劣っていた,重い物を持つにおいては2群に差がなかった.歩き始めにおける関節痛群は片足立ちが劣っていた.小走りにおける関節痛群は,年齢が高く,片足立ち,CS-30,TUGが劣っていた.30分以上歩行において2群に差がなかった.椅子からの起立における関節痛群は,片足立ち,CS-30が劣っていた.【考察】 運動指導サポーターの役割は,地域サロンで高齢者を対象に運動指導することである.そのような集団であるため社会的活動は非常に活発であるが,慢性の関節痛を36%で訴え,サポーター自身も関節痛の問題を抱えている.動作遂行時の関節痛は,前回報告と同様に正座,起き上がる,階段昇降,床から起立など和式生活や昇降動作であり,これらの動作が膝関節・腰部に負担をかける動作であることを追認した.動作遂行時の関節痛有無と運動機能の関係では,正座の関節痛群において運動機能の低下,転倒経験あり,自己効力感低下していたことは,膝関節痛が運動機能,転倒に関連しやすいことが推察される.一方,腰痛に関連した動作の遂行では,運動機能との関連が明らかでなかった.【理学療法学研究としての意義】 女性の関節痛予防対策は,対象者が多く,生活動作に影響し介護予防の視点から喫緊の課題である.関節痛予防対策の基礎データとして関節痛と運動機能,生活動作との関連について検証することは重要であり,本研究はその予備的研究として意義あると考える.