理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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腱板断裂手術前後での筋力改善の幅が大きいと患者満足度は高くなるのか?
高橋 友明畑 幸彦川崎 桂子唐澤 達典三澤 佳代子雫田 研輔井出 典恵田島 泰裕
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キーワード: 腱板断裂, 筋力, 満足度
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p. Cb0513

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抄録
【目的】 われわれは,腱板断裂例に対してトルクマシンを用いた筋力評価を行い,術後の筋力回復は症例ごとにばらつきが大きく,肉体労働者では筋力回復が不十分な場合に満足度が低くなる傾向があることを以前報告した.今回,肩腱板断裂手術例において,筋力改善の幅と患者満足度の関係を調べる目的で“術前後で筋力改善の幅が大きい患者は高い満足度を示す”という仮説をたて,それを検証したので報告する.【方法】 対象は,腱板断裂術後12ヵ月以上を経過した100例100肩であった.性別は男性59肩・女性41肩,術側は右53肩・左47肩であった.手術時年齢は平均60.1歳であった.なお,非術側には臨床所見でも超音波検査でも腱板断裂を疑わせる所見は全く認めなかった.肩関節の筋力測定は,同一検者が術前と術後12ヵ月でBIODEX社製トルクマシン(Multi joint system 2AP)を用いて,坐位で体幹と骨盤を固定した体勢で両肩同時に測定した.屈曲-伸展方向(屈曲180゜から伸展20゜)と肩90°外転位での内旋-外旋方向(内旋40゜から外旋90゜)に,角速度60°/sec で3回ずつ測定してピークトルク健側比の平均値を求め,術前と術後12ヵ月の間のその変化率を算出し,変化率が高い群 (以下,高変化群)30肩と変化率が低い群(以下,低変化群)30肩の2群を抽出した.病歴(手術時年齢,性別および左右別),断裂サイズ,術前と術後12カ月のピークトルク健側比,術前と術後12ヵ月の肩関節可動域(7方向),術前と術後12ヵ月のUCLAスコアの各項目および術後12ヵ月のMRIを用いた棘上筋腱付着部の評価について2群間で有意差検定を行った.MRIを用いた棘上筋腱付着部の評価は,術後12ヵ月のMRI斜位冠状断像を用いて棘上筋腱付着部の腱内輝度を村上の分類に従って評価した.なお,2群間での有意差検定は,病歴(性別と左右別)の比較についてはχ2検定を用いて行い,手術時年齢,術前と術後12カ月のピークトルク健側比,肩関節可動域およびUCLAスコアの比較についてはWilcoxon signed-ranks testを用いて行い,断裂サイズと術後1年のMRIを用いた棘上筋腱付着部の評価の比較についてはMann-Whitney’s U testを用いて行い,危険率5%未満を有意差ありとした.【説明と同意】 今回の症例に本研究の趣旨を十分に説明し,全例から同意が得られた.【結果】 断裂サイズは高変化群が低変化群より有意に大きかった(P<0.05).術前のピークトルク健側比は高変化群が低変化群より有意に低下していたが(P<0.05),術後のピークトルク健側比は2群間に有意差を認めなかった.術後1年のUCLAスコアのpain,satisfaction of the patientおよびtotal scoreの項目は高変化群が低変化群より有意に低下していた(P<0.05).その他の項目については2群間に有意差を認めなかった.【考察】 今回の結果より,高変化群は低変化群より術前筋力が有意に低下していたが,術後に同等レベルの筋力に回復したために,術前後の筋力改善の幅が大きくなったことが分かった.われわれは以前,腱板断裂例の断裂サイズが大きくなるほど術前筋力は有意に低下していたことを報告したが,今回の結果より高変化群は低変化群より断裂サイズが有意に大きかったので,これが高変化群の術前筋力が有意に低下していた原因であると考えた.次に,術後に同等レベルの筋力に改善したにもかかわらず,高変化群は低変化群より術後12ヵ月のUCLAスコアのpain,satisfaction of the patientおよびtotal scoreの得点が有意に低かった.これに関して,石垣らは腱板断裂術後の疼痛には断裂サイズや筋力低下が関与し,わずかに残存した腱板機能不全が疼痛を誘発したのではないかと報告しており,高変化群は低変化群より断裂サイズが大きいので術後に疼痛が残存し,UCLAスコアの得点が有意に低下したのではないかと推察した.さらに,術後12ヵ月のMRI画像評価で2群間に有意差を認めなかったことから,筋力改善の幅の大きさは腱板付着部自体の修復とはあまり関係がないということも分かった.以上のことより,仮説は否定され,術前後での筋力の回復幅は術後満足度に影響しないことが示された.【理学療法学研究としての意義】 今回の研究結果から,術後の患者満足度に影響する要因として,術前後での筋力回復の幅は影響しないことがわかり,他の要因が関係している可能性があることが示唆された.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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