理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
血友病性関節症に対する人工関節全置換術後の理学療法
外間 明海新城 宏隆
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p. Cb0712

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抄録
【目的】 血友病は血液凝固異常症疾患の一つで、その患者数は全国で約5000人といわれている。患者数が少ない上に、治療は小児科や内科を中心に補充療法といった止血管理のみのことが多いため、臨床において理学療法に携わる機会が少ない。血友病は幼少期より全身のあらゆるところに出血をおこす危険性をもち、なかでも関節内出血を繰り返すことが多い。それに伴い関節症性変化(血友病性関節症)を引き起こしADL障害やQOL低下、廃用症候群が引き起こされる。当院では血友病性関節症に対して人工膝関節全置換術(以下TKA)を行っているが、今回TKA術後の血友病患者の理学療法を経験したのでその短期経過について報告する。【方法】 2006年5月~2008年11月までに当院でTKAを施行された5例7膝のうち、定期外来受診をしている3例3膝を対象とした。対象者は、血友病Aが2例、血友病Bが1例の全例男性。HIV,HCV重複感染は2例、HIV感染のみ1例。インヒビター保有者はいなかった。手術時年齢平均は41.3歳(39~43歳)。X線学的重症度分類(Arnold分類)は全例stage Vであった。罹患期間は平均27.3年。術後は当院の通常のTKAプロトコールに沿って理学療法を実施した。術後の経過観察期間は平均4年3ヵ月(3年~5年2ヵ月)。身体機能評価項目は、術前後のVisual Analog Scale(以下VAS)、膝関節可動域(以下ROM)屈曲・伸展、日本版膝関節症機能評価尺度(以下JKOM)、移動能力・就職状況、疼痛部位、術後の合併症の有無、術前後での年間の関節内出血頻度およびTegner Active Scoreについて行った。【説明と同意】 対象者には発表の趣旨を説明し同意を得ている。【結果】 VASは術前平均44mm、退院時12.6mm、最終調査時平均7.3mmであった。ROM屈曲は術前平均115度、退院時平均111.6度、最終調査時平均118.3度。ROM伸展では、術前平均-25度、退院時平均-1.6度、最終調査時平均-1.6度であった。JKOMは術前63点、退院時38.3点、最終調査時29.3点であった。移動能力では術前2例は杖歩行であったが、最終調査時には全例杖なし歩行をしていた。就職状況では術前2例は休職していたが、最終調査時には2例復職している。術後の合併症としてlooseningや感染等は現時点では認めていない。術後は誘引なくTKAした関節以外も含め関節内出血をおこしているが、手術以前よりも年間の関節内出血頻度は減少している。Tegner Activity Scoreは術前では全例レベル0、最終調査時は全例レベル3であった。【考察】 血友病性関節症に対するTKAは疼痛軽減、滑膜切除による関節内出血の止血効果、変形や可動域の改善を目的としておこなわれる。Cohenらは、術後初期に改善された可動域は時間経過とともに軟部組織が悪影響を及ぼし維持できないと述べ、他の報告でもTKAによるROM改善効果はあまり認められていない。しかし本症例では、改善したROMは退院時が20度、最終調査時が26.6度であり、術後3年以上経ってもROMは維持されていた。特に伸展の改善が大きく、退院時、最終調査時とも23.4度であった。屈曲角度は術前、最終調査時において変わらなかった。VASは最終調査時に36.7mmと軽減し、それに伴い歩行能力が改善し、復職可能となった。またTegner Acitvity Scoreでは術前は全例レベル0、最終調査時にはレベル3となり、20分以上のウォーキングも可能となっている。当院では術後5ヵ月経過以降も整形外科外来受診日に合わせて、理学療法外来受診を指示している。その際TKAを行った関節だけではなく、他の関節に対しても退院時に指導した運動内容の確認や変更を行っている。このように理学療法を継続できた事や更に本人の自己管理が出来るようになった事が身体機能改善・維持できた一因ではないかと考えられた。【理学療法研究としての意義】 血友病治療は凝固因子製剤補充による止血治療が中心であるが、止血コントロールが十分に行われるようになった昨今では、それらに加えて運動器の機能改善や関節拘縮予防目的に対する理学療法への要望が高まりつつある。関わる機会の少ない血友病患者の理学療法に携わり評価および結果を蓄積していく事が今後の血友病理学療法においては重要と考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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