理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
TKA患者の入院中の身体機能および、QOLについて
鈴木 一士亘理 克治谷邑 公目黒 智紀堀井 里紗坂本 翔也北田 祐也佐藤 悠太武藤 愛子嶋崎 直哉立木 繁
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キーワード: TKA, 準WOMAC, SF-36
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p. Cb0723

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抄録
【はじめに、目的】 変形性膝関節症患者に対する観血的治療として,人工膝関節全置換術(TKA)が多く行われている.その目的は除痛,身体機能の向上,生活の質(Quality of life;QOL)の向上である.在院日数の減少に伴い,入院中の理学療法施行期間が短くなってきているが,当院では,患者自身が安心して自宅生活できることを退院の目安の一つとしている.そこで,入院中の理学療法において患者視点における身体機能とQOLの変化について調査した.【方法】 対象は,当院で平成23年6月から10月に変形性膝関節症と診断され,TKAを施行した17名17膝(男性4膝,女性13膝)とした.対象者の年齢は72.9±7.7歳,BMIは25.5±2.7,入院日数は31.5±8.0日であり,入院中に合併症はみられなかった. 方法は,術前と退院時に身体機能とQOLを評価した.身体機能評価には,日本語版膝機能評価表(準WOMAC)を使用し,QOL評価にはSF-36(version 2 スタンダード版)を使用した. 得られた評価値は術前と退院時について比較検討した.検討にはSPSSを用いて対応のあるT検定を行い,有意水準95%未満を有意差ありとした. 当院における入院中の理学療法は,術後4週で退院を目標とするクリティカルパスに沿って実施した.退院時には T字杖歩行,階段昇降などの応用歩行は自立となっていた.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,対象者に対して十分に研究の目的を説明し同意を得た.【結果】 準WOMACでは,疼痛スコアは術前48.8±14.7が退院時63.2±24.6となり,身体機能スコアでは術前57.1±24.3が退院時71.0±20.6となった.疼痛スコア,身体機能スコアともに有意差(P<0.05)が認められた.退院時に最も難しいと感じる動作は,「重いものを片付ける」3.1±1.2,「階段を降りる」2.8±1.1,「炊事洗濯などの家事をする」2.8±1.4であった. SF-36の術前,退院時における身体機能PFは43.9±29.6,51.8±19.9,日常役割機能−身体RPは48.5±23.3,52.6±19.5,体の痛みBPは31.5±18.5,37.5±16.4,全体的健康感GHは57.8±20.8,65.6±22.1,活力VTは56.6±19.3,66.5±22.9,社会生活機能SFは70.6±22.1,70.6±24.6,日常役割機能−精神REは58.8±28.9,56.9±26.2,心の健康MHは56.8±26.3,65.3±26.9となった.PF,RP,BP,GH,VT,MHの6尺度は上昇していたが有意差は認められなかった.【考察】 準WOMACの疼痛スコア,身体機能スコアはともに有意に改善がみられ,SF-36では得点の上昇はみられたが有意差は認められなかった.入院中は,疼痛や身体機能面での改善は感じるものの健康感の上昇までは感じ得ないと考える.また,術前,退院時ともに困難と感じる動作の上位が「階段を降りる」,「重いものを片付ける」等であり,これらは入院期間のみでは恐怖心等を払拭できなかったと推測する.実際には行えると判断できる動作においても困難さを感じているため,実際のADLを想定した対応がさらに必要であったと示唆される. SF-36の術前と退院時の一部の項目で上昇傾向がみられたが,全ての項目において有意差は認められなかった.飛永らはTKA術後1ヶ月においてPF,BP,GH,SFが術前と比べ優位に上昇していると述べている.入院中は実社会や他者との関わりが少ないことや行動範囲が院内に制限されることが誘因だと考えられる.これらより,退院までには身体機能の改善が特に重要であり,健康感等は退院後に上昇してくると思われる.手術への満足感も含めた術後のQOLの向上には,入院中には動作への恐怖心を考慮した理学療法が必要であり,退院後には社会生活を実施した上での外来での理学療法が在院日数減少に伴い重要になると考えられる.【理学療法学研究としての意義】 入院中のTKA患者の患者アウトカムを評価する事は,患者視点での問題点を知り,効率的で満足度の高い理学療法の提供に重要である.今後は在院日数が減少するなかで,入院,外来それぞれの理学療法の役割について検討する必要がある.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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