理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
体幹の回旋運動に対する腹横筋の寄与
─健常者と慢性腰痛症例の比較─
三浦 拓也山中 正紀金栄 香子武田 直樹
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キーワード: 体幹, 回旋, 腹横筋
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p. Cb0740

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抄録
【はじめに、目的】 腰椎の脊椎分節間のコントロールに重要な役割を持つと言われている腹横筋は腹部周囲を取り巻くように走行している筋であり,機能的な観点から体幹ローカル筋群に属している.この腹横筋は概ね水平方向に走行するため体幹運動を生みだす能力は限られており,先行研究では体幹回旋時に腹横筋はほとんど活動しないとする報告と,体幹回旋中に活動が見られるとのする報告があり,一致した見解は得られていない.さらに,これらの先行研究は筋活動による解析がほとんどであり,近年広く行われるようになった超音波画像診断装置による腹横筋を含めた腹部筋群の動態を報告した研究は少ない.また,健常者と慢性腰痛症例における体幹回旋運動に対する腹横筋の活動性の違いを示した研究は見当たらない.本研究の目的は超音波画像診断装置を使用して,体幹回旋運動時における腹横筋の活動を究明し,さらに健常者と慢性腰痛症例における活動性の違いを検討することである.【方法】 対象は,体幹や下肢に整形外科学的または神経学的既往歴の無い健常者10名(20.1±1.6歳),および3か月以上続く慢性腰痛症例6名(20.8±1.4歳,ODI:14.0±5.4,VAS:4.7±2.0)とした.超音波画像診断装置はEsaote社製MyLab25(リニアプローブ,12MHz,B- mode)を用いた.座位体幹回旋運動装置を試作し,座位での体幹回旋運動を行った.本装置はモーターによる座面の他動的な回旋が可能であるため,課題として下部体幹の他動回旋,およびモーターを切り離し被験者自身に運動を行わせる自動回旋を実施した.骨盤を中間位とし,座面の回転軸にL4-5の長軸が一致するように背もたれのマット厚を調節し,座位を取らせた.また被験者の上部体幹はベルトを胸骨レベルで交差させて背もたれに固定し,確実に下部体幹のみが動くようにした.回旋運動は20°の右回旋とし,正面を向いた状態の座面の位置を開始位置(0°),その位置から右へ20°下部体幹を回旋させた終了位置で保持する.超音波画像診断装置による筋厚計測の対象は腹横筋とし,開始位置と終了位置において筋厚を左右3回ずつ,計6回取得し,腹横筋の筋厚についてそれぞれ3回計測の平均値を算出した.統計解析は,paired t-testを使用して群内における筋厚の比較を行った.解析にはSPSS Advanced Statistics 17(IBM 社製)を使用し,有意水準は0.05未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の被験者には事前に書面と口頭により研究の目的,実験内容,考えられる危険性,データの取り扱い方法等を説明し,理解と同意を得られた者のみ同意書に署名し,実験に参加した.本研究は本学保健科学研究院の倫理委員会の承認を得て行った.【結果】 健常者の右腹横筋,他動回旋において,20°(3.2±0.6 mm)の筋厚に比較して0°(3.7±0.7 mm)の筋厚が有意に大きかった(p=0.010).また左腹横筋に関しては自動回旋において,0°(3.5±0.9 mm)に比して20°(4.0±1.1 mm)で有意な筋厚の増加が認められた(p=0.026).また,20°回旋時,左腹横筋で他動回旋(3.6±0.9 mm)に比して自動回旋(4.0±1.1 mm)で有意に筋厚が大きかった(p=0.044).慢性腰痛症例においては,全ての比較において有意差は認められなかった.【考察】 健常者においては体幹の自動回旋時,0°と20°の比較において左で腹横筋の筋厚に有意差が認められた.本研究では下部体幹を右に回旋させており,つまり動作としては上部体幹の左回旋と同様の運動をしていることになるため,回旋側と同側である左の腹横筋の筋厚が増加したものと考えられ,これは腹横筋の活動を反映したといえる.先行研究の回旋側と同側の腹横筋の中部線維が活動するという報告を支持する結果である.また左腹横筋に関しては他動回旋と自動回旋の間で有意差が認められた.この結果は,自動回旋による筋厚の増加は回旋作用による受動的な筋厚の形態的変化によるものではなく,腹横筋の活動による形態的変化であることを示している.慢性腰痛症例では全ての比較において有意差は認められなかった.先行研究からは慢性腰痛症例において腹横筋の活動性が低下していることが筋電計側,および超音波画像による計測から明らかとなっている.健常者に見られるような体幹の回旋に対する腹横筋の筋厚変化が慢性腰痛症例では認められなかったことは,このことを反映しているかもしれない.【理学療法学研究としての意義】 本研究から,体幹の回旋運動の際に健常者と慢性腰痛症例で腹横筋の活動に違いが認められた.このことは,体幹回旋に対する腹横筋の関与,また健常者と慢性腰痛症例における腹横筋の機能性の違いの一端を示唆するものであると考えられる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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