理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
膝蓋骨骨折術後の膝屈曲角度における予後予測
─屈曲可動域の不良因子の検討─
伊藤 浩司小野 健太青山 多佳子小林 勇介金澤 憲治小野 雅典
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Cb1128

詳細
抄録
【はじめに、目的】 膝蓋骨骨折は一般に予後良好とされているが,膝関節可動域(以下 ROM)の獲得に難渋する例も少なくない.膝蓋骨骨折における標準的手術療法はtension band wiring(以下TBW)であり,TBWにより早期からROM練習が可能である.今回,当院の膝蓋骨骨折に対してTBWを施行した症例の術後膝関節屈曲角度の具体的な指標を得るために,屈曲角度の推移を調査し,角度に関与する要因を検討したので報告する.【方法】 2006年7月から2011年6月までに当院で手術を行なった膝蓋骨骨折患者のうち,TBWを施行した症例32名を対象とした.内訳は,男性13名,女性19名,平均年齢65±12.9歳であった.今回の調査で最終膝屈曲角度において,130°以上獲得できた患者を優良群,130°未満であった患者を不良群の2群に分け,2群間における角度の推移を検討した.最終屈曲角度(以下 最終ROM)は抜釘をしていない最終観察時のものとした.経時的変化を追うために,手術日から14日目,30日目,90日目における屈曲ROM(14日ROM,30日ROM,90日ROM)を調査した.また2群間での角度の違いに関与する要因として,年齢,骨折型,変形性膝関節症(以下 膝OA),糖尿病(以下 DM)の有無,ROM練習開始日を調査した.骨折型はOTA(Orthopaedic Trauma Association)分類を使用した.統計処理にはt検定,Mann-Whitney のU検定,χ二乗検定を用い,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 当院の倫理審査委員会にて承認を得て実施した.【結果】 2群間において,14日ROM(優良群76.3±22.1°不良群58.2±24.5°)では有意差は見られなかったが,30日ROM(優良群101.8±27.6°,不良群81.9±23.2°), 90日ROM(優良群128.6±12.8°,不良群110±16.3°),最終ROM(優良群136.8±6.7°,不良群109.7±17.4°)で有意差が見られた(p<0.05). 2群間において,年齢,ROM練習開始日,膝OA,DMの有無,骨折型による違いにおいて有意差は見られなかった.【考察】 屈曲角度における推移は,14日ROMでは有意差は見られなかったが,30日ROM,90日ROMにおいて有意差が見られた.このことから,TBW施行後の膝屈曲ROMにおける予後予測としては,30日を目安に100°以上の屈曲ROMが獲得されていればその後,良好な屈曲ROM獲得に繋がることが予測される.諸家らは骨折後の理学療法を展開していく上で解剖学的知識の他に,生理学的な炎症・修復過程を理解することは重要と述べている.理学療法開始初期においては損傷部の病態を考慮して理学療法を施行することでその後良好なROM獲得につながると考えられる.膝蓋骨骨折におけるROM制限となる要因については,年齢,既往歴,骨折型による違いが報告されている.しかし本研究からは何れも有意差は見られなかった.諸家らは,屈曲ROM制限の因子として膝蓋上嚢や膝蓋下脂肪体の繊維化や癒着の関与について述べている.また関節拘縮発生機序は固定後15~30日で膝蓋上嚢などに癒着,及び線維性結合組織の増殖が起こるとしている.以上より早期からのROM練習は癒着形成防止に重要であると考えられる.しかし,本研究においてはROM練習開始日による屈曲角度に有意差が見られなかったことから,早期からのROM練習以外にも屈曲角度に関与する要因があると思われる.大腿四頭筋練習が膝蓋上嚢の癒着防止に有効であり,術後の疼痛コントロールも重要であると考えられているため,筋力や疼痛などその他の要因についても検討する必要がある.【理学療法学研究としての意義】 予後良好である膝蓋骨骨折術後において,ROM制限をきたす例も散見される.本研究により,当院の膝蓋骨骨折患者における1つの角度指標になると考えられる.それに伴い,屈曲角度の制限因子を明らかにしていくことは今後の課題となる.
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top