理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
橈骨遠位端骨折術後の手関節背屈運動における前腕前面皮膚の伸張性
道祖 悟史福島 卓矢川端 悠士林 輝真有田 実
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Cb1129

詳細
抄録
【目的】 理学療法士が関節可動域制限に対しアプローチする機会は非常に多い。その方法は多岐にわたり,選択もセラピストにより様々である。関節可動域制限は,原因により大きく拘縮と強直に分類される。拘縮は,関節運動制限の原因所在により,皮膚性,筋性,神経性,筋膜性などに分類される。強直には,骨膜,関節包,靱帯などの関節周囲組織に起因する関節包性のものと,全関節面が結合織性あるいは骨性に癒着して生ずる結合織強直,骨性強直とがある。我々は,第46回日本理学療法学術大会において,健常者を対象とし,手関節背屈運動時の前腕前面の皮膚の伸張性について,第1区画 (前腕の遠位1/7) において,手関節最大背屈位が,中間位に比べ有意に皮膚が伸張されていることを報告した。臨床上,橈骨遠位端骨折後,掌側プレート固定をおこなった症例における手関節背屈可動域制限の原因として,皮膚の柔軟性低下をきたしていることがあることを経験している。そこで,橈骨遠位端骨折術後患者を対象とし,手関節背屈運動時の皮膚の伸張性について検証した。【方法】 対象は橈骨遠位端骨折後,掌側ロッキングプレート固定を行った7名 (男性2名,女性5名;年齢 70.4±13.0歳;術肢右3手・左4手;健肢右4手・左3手) とした。測定は術肢,健肢とも行った。前腕長を測定し,以下の式にて印間の距離を算出した。印間の距離=前腕長/7 橈骨及び尺骨茎状突起を結んだ線の中点より内側上顆,外側上顆を結んだ中点に向かい算出した印間の距離ごとに印をつけた。これらの印間を遠位より第1区画から第7区画とした。測定肢位を肩下垂位,肘関節90度屈曲位,前腕回外位,手指中間位とし,テーブルにおいた。手関節中間位と手関節最大背屈位において,各区画の距離を測定した。測定は同一検者が行なった。測定は1mm単位で行い,各測定は3回実施し,その平均値を代表値とした。次式を用いて各区画の伸張距離を算出した。伸張距離=手関節最大背屈位の区画の距離-手関節中間位の区画の距離 本研究で用いた測定法の信頼性を検討するため,各区画の級内相関係数 (ICC) を求めた。術肢,健肢ともに各区画の伸張距離について、Shapiro-Wilk検定を行い、データの正規性について分析した。データが正規分布に従っている場合、2群(術肢・健肢)間の等分散性を確認し、対応のあるt検定を用い術肢・健肢間の比較を行った。データの正規性が確認できない区画の伸長距離についてはWilcoxonの符号付順位和検定を使用し、術肢・健肢間の比較を行った。なお有意水準は5%未満とし,統計分析にはR2.8.1 を用いた。【説明と同意】 ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い,全ての対象者に本研究の目的と内容について口頭および書面にて説明し,書面にて研究参加の同意を得た。【結果】 第1区画から第7区画までのICC (1,1) は0.89~0.99であり,高い信頼性を認めた。印間の距離は,第1区画は,術肢1.2±1.3 (平均値±標準偏差) ,健肢6.3±2.0、第2区画は術肢3.4±1.5,健肢2.1±1.6,第3区画は術肢2.6±2.3,健肢0.4±0.6,第4区画は術肢3.2±3.0,健肢0.2±0.5,第5区画は術肢0.5±0.8,健肢-0.1±0.2,第6区画は術肢0.2±0.5,健肢-0.1±0.2、第7区画は術肢0.2±0.5、健肢-0.1±0.2であった。Shapiro-wilk検定の結果,第1区画および第2区画の伸張距離データには術肢・健肢とも正規性が確認されたが,第3~7区画の術肢・健肢のデータの一部に非正規分布のデータが含まれていた.対応のあるt検定およびWilcoxonの符号付順位和検定の結果、第1区画において術肢・健肢間の伸長距離に有意差を認めた。【考察】 第1区画は健肢に比べ,術肢の皮膚の伸長距離が有意に小さかった。これは,術創部周囲の瘢痕・癒着形成により,皮膚の伸張性が失われたためと思われた。このことは、第1区画における皮膚の伸張性低下が手関節背屈可動域制限の一つの要因となる可能性を示唆しているのではないかと考えられたが、本研究から明らかにすることはできなかった。皮膚の伸張性と関節可動域との関係,皮膚の伸張性低下が他の関節や筋力へ及ぼす影響について、今後検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】 本研究は,橈骨遠位端骨折術後の手関節背屈可動域制限に対する理学療法について,皮膚の影響を考慮する必要性を示唆していると思われる。今後さらに研究を進めることにより皮膚の柔軟性低下の原因や関節可動域制限にたいするより効果的なアプローチ方法の開発につながるのではないかと思われる。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top