理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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内側型変形性膝関節症における歩行速度、ステップ長と床反力成分、外部膝関節内反モーメントとの関係
山田 英司森田 伸田仲 勝一内田 茂博伊藤 康弘藤岡 修司板東 正記刈谷 友洋近藤 慶承平島 賢一真柴 賛千頭 憲一郎有馬 信男山本 哲司
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p. Cb1133

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抄録
【目的】 内側型変形性膝関節症(以下膝OA)は関節軟骨に対する力学的負荷の繰り返しと蓄積により、軟骨の変性・破壊、それに続く関節辺縁や軟骨下骨における骨の増殖性変化を呈する疾患であり、その発症には異常な力学的負荷が関与していることが明らかになっている。特に外部膝関節内反モーメント(以下KAM)は膝関節内側コンパートメントに生じる圧縮負荷を反映する指標とされており、膝OA患者の歩行の特徴である歩行速度の低下、ステップ長の減少はKAMの増大に対応するための歩行戦略であることが報告されている。そこで、本研究では床反力計と三次元動作解析装置を用いて運動力学的な歩行解析を施行し、膝OA患者における歩行速度、ステップ長と床反力、KAMとの関係を検討し、健常者との違いを明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は片側性または両側性膝OAと診断された男性4名、女性12名(平均年齢69.8歳)の16肢とした。両側性膝OAではより疼痛が強く、Kellgren-Lawrence分類で重症度の高い肢を計測肢とした。測定下肢の内訳はgrade3が11名、grade4が5名であった。また、健常群として男性8名の15肢(平均年齢23.2歳)を対象とした。歩行時の床反力と外部膝関節内反モーメントは床反力計(AMTI社、Watertown)と三次元動作解析装置Vicon MX(Vicon Motion System社、Oxford)を用いて計測した。歩行条件は、裸足で自由歩行速度とした。マーカーは33カ所に貼付し、解析ソフトBodyBuilder(Vicon Motion System社、Oxford)を用いて、歩行速度及び、ステップ長、KAMを算出した。床反力は左右成分では最初の外向きの力をFx1、その後の内向きの力をFx2とし、それぞれ最大値を求めた。また、Fx1からFx2の変化量(以下delta Fx)を求めた。前後成分では最初の後向きへの力をFy1、立脚期後半の前向きへの力をFy2とし、最大値を求めた。また、Fy1からFy2の変化量(以下delta Fy)を求めた。鉛直成分では初期と終期の上向きの力の最大値をそれぞれFz1,Fz3とし、その間の谷の最小値をFz2とした。また、Fz1からFz2の変化量(以下delta Fz)を求めた。KAMは最大値を求め、全ての値は2歩行周期の平均を算出し、体重で正規化した。統計学的検定は、対応のないt検定を用いて歩行速度、ステップ長及びKAMを両群で比較した。また、Pearsonの相関係数を用いて膝OA群と健常群の両群において歩行速度、ステップ長と床反力の各成分、KAMとの相関関係を検討した。なお、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全ての被検者には研究の目的、内容を説明し、文書による同意を得た。【結果】 歩行速度は膝OA群で0.82±0.15m/s(平均±標準偏差)、健常群で1.23±0.16m/sと膝OA群の方が有意に遅く,ステップ長は膝OA群で41.75±8.11cm、健常群で65.60±6.56cmと膝OA群の方が有意に短かった。KAMは膝OA群で0.87±0.14 Nm/kg、健常群で0.72±0.23 Nm/kgと有意に膝OA群の方が高い値を示した。膝OA群では歩行速度とステップ長、Fy1、Fy2及びDelta Fyとの間に正の相関関係を認め、ステップ長とFy1、Fy2 、Delta Fy及び歩行速度との間に正の相関関係を、また、KAMとの間に負の相関関係を認めた。健常群では歩行速度とステップ長、KAM、Fx1、Delta Fx、Fy1、Fy2 、Delta Fy、Fz1、Fz2、Delta Fzとの間に正の相関関係を認め、ステップ長とFx1、Delta Fx、Fy1、Fy2 、Delta Fy、Fz1、Fz2、Delta Fzおよび歩行速度との間に正の相関関係を認めた。【考察】 両群とも歩行速度およびステップ長は有意な相関関係を認めたが、歩行速度およびステップ長と床反力成分との関係は異なっていた。歩行速度との関係では健常群は前後、左右および鉛直成分との間に有意差を認めたが、膝OA群では前後方向の成分のみ有意であった。ステップ長との関係も同様であった。これは、膝OA群の歩行の運動力学的な特徴として左右および鉛直成分が重要であることを示唆していると考えられた。興味あることに、健常群ではステップ長はKAMと相関関係を認めず、歩行速度とKAMとの間には正の相関関係を認めるのに対して、膝OA群ではステップ長とKAMとの間に負の相関関係を認め、歩行速度とKAMとの間には相関関係を認めなかった。これらのことからKAMを減少させることを目的とした理学療法を施行する際に、ステップ長を増加させることが治療戦略の一つになる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 歩行速度、ステップ長と床反力との関係が健常群と膝OA群では異なっていることを明らかにし、膝OA群におけるステップ長とKAMとの負の相関関係から、治療戦略の根拠を示したことである。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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