理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
腰椎に対する徒手療法の治療方向と効果の関連性
松永 秀俊山野 薫藤縄 理安田 大典武田 功
著者情報
キーワード: 腰椎, 徒手療法, 治療方向
会議録・要旨集 フリー

p. Cb1163

詳細
抄録
【はじめに、目的】 徒手療法の一つ、Nordic systemの創始者であるFreddy Kaltenbornは著書の中で脊椎の動きには大きな可動性を持つ動きの組み合わせと可動性が制限される組み合わせがあると述べており、この考えを基に治療を行っている。その為、改善すべき動きに対して治療手技(治療方向)も決定している。しかし、制限された動きに対して決まった治療手技のみでは無く、他の治療手技を加えて行う方がより効果的である印象が強い。そこで、今回、腰椎に対しその検証を行い、その結果、他の治療手技を加えた場合の可動域改善が大きい場合は治療方法の再考が必要と考えられる。つまり、この研究は徒手療法のエビデンス確立を目的とした【方法】 測定機器はmotion analysis corporation製3D motion analysis systemsを用い、対象者全員に対し、マーカーをL1~L5の棘突起に体表の上から付け、また、ベースとなる部分を確保する為に原則、両上前腸骨棘とその外方2カ所と仙骨部の計5箇所にマーカーを貼付しそれぞれ棘突起間の変化を測定した。開始肢位は腰掛け座位とした。対象者は腰椎部に器質的疾患の既往歴や疼痛等の無い男子大学生4名とし、計測直前は計測に影響が無い様に腰椎の動きを制限した。対照者全員に練習を兼ねた腰椎の最大屈曲を1回行った後に腰椎の最大屈曲、最大伸展を計測し、その後、対照群2名(平均年齢22.0±0歳:以下A群とし、それぞれを対象者1、2とする)に対し、安全性を考慮し、自動運動にて屈曲・伸展の治療の動きを再現する目的で腰椎最大屈曲・伸展を3回ずつの計6回行い、再度、腰椎の最大屈曲、最大伸展を計測した。残りの対照群2名(平均年齢22.0±1.4歳:以下B群とし、それぞれを対象者3、4とする)はA群同様に腰椎の最大屈曲を行った後に腰椎の最大屈曲、最大伸展を計測し、その後、安全性を考慮し、自動運動にて屈曲・伸展と回旋の治療の動きを再現する目的で腰椎最大屈曲、最大伸展を1回ずつの計2回、更に連結運動と呼ばれる1)伸展・右側屈・左回旋、2)伸展・左側屈・右回旋、3)屈曲・右側屈・右回旋、4)屈曲・左側屈・左回旋の組み合わせを最大可動域まで1回ずつ計4回行い、再度、腰椎の最大屈曲、最大伸展を計測した。また、今回、屈曲・伸展での比較を行ったのは、第45回日本理学療法学術大会にて発表した結果から、前回と同様の方法では屈曲・伸展以外の動き(側屈、回旋)について信憑性は低いことが予想されたためである。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者全員に対して本研究の直前に実験の内容を説明し、更に「研究の概要」「研究の目的」「研究の方法」「予想される利益および不利益」「自由意思による参加について」「研究成果の公表」など20項目を記した研究の説明書を閲覧の上、同意を得、当大学の生命倫理委員会の承認を得ている。【結果】 A群の対象者1のL1-L2間で0.02mm、L2-L3間で-0.16mm、L3-L4間で-0.18mm、L4-L5間で-0.52mm、また、対象者2のL1-L2間で0.53mm、L2-L3間で0.26mm、L3-L4間で1.44mm、L4-L5間で2.15mmの増減が自動運動後に認められた。ただし、対象者2のL1-L2間において一部、データの欠損箇所が見つかった為、欠損部分を除いた最大値にて計算を行った。B群の対象者3のL1-L2間で-0.05mm、L2-L3間で0.19mm、L3-L4間で-0.36mm、L4-L5間で-0.79mm、また、対象者4のL1-L2間で0.09mm、L2-L3間で0.28mm、L3-L4間で-0.02mm、L4-L5間で0.34mmの増減が自動運動後に認められた。以上の結果から、A群の各々の脊椎間において自動運動後の関節可動域増減の平均はL1-L2間で0.27mm、L2-L3間で0.05mm、L3-L4間で0.63mm、L4-L5間で0.81mmとなり、また、B群はL1-L2間で0.02mm、L2-L3間で0.23mm、L3-L4間で-0.19mm、L4-L5間で-0.22mmとなった。【考察】 結果から、A群はB群に比べL2-L3間以外では可動域の改善が大きく、また、A群では全ての脊椎間で改善が認められたが、B群ではL3-L4、L4-L5間で可動域の低下が認められた。以上より、脊椎間の可動域改善を目的とする場合、改善すべき動きに対し決められた治療手技を用いることがより効果的であることが推測された。本研究の限界として、棘突起にマーカーを付けて計測を行った場合、間に皮膚が存在するため、誤差が生じる原因となっている点が挙げられる。また、大会までに対象者を増やし、更に検討を加える予定である。【理学療法学研究としての意義】 現在、徒手療法は理学療法の分野において頻繁に行われているにも関わらず、そのエビデンスは確立したとは言い難い。今回の研究は徒手療法のエビデンス確立のためのものである。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top