理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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アプローチ方法の違いによって人工股関節置換術後6ヶ月の運動機能の回復に差があるか?
西村 純南角 学藤田 容子西川 徹柿木 良介秋山 治彦
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p. Cb1373

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抄録
【目的】 人工股関節置換術(以下、THA)術後早期のリハビリテーションでは、筋力の回復過程に応じたトレーニングメニューを作成するとともにより迅速に日常生活動作を獲得する必要がある。さらに、円滑に家庭生活や職場へ復帰するためには、退院後の筋力や動作能力など運動機能の長期的な回復過程を考慮し、日常生活動作の指導を行う必要がある。近年、THAにおけるアプローチ方法として、最小侵襲手技が積極的に導入されている。最小侵襲手技は皮膚・筋組織への侵襲が小さく、THA術後早期に股関節および膝関節周囲筋の良好な筋力の回復が得られることで、術後に早期退院が可能になる。しかし、アプローチ方法の違いによって退院後の長期的な運動機能の回復過程を評価した報告は少なく、不明な点が多い。本研究の目的は、THAのアプローチ方法の違いが術後6ヶ月の運動機能の回復過程に影響を及ぼすかどうかを検討することとした。【方法】 対象は、THAのアプローチ方法としてDall法を用いた21名(Dall群、男性4名、女性17名、年齢:58.8±7.0歳、BMI:22.5±2.5kg/m2)とModified mini-one antero-lateral incision法(以下、MMIS法)を用いた21名(MMIS群、男性4名、女性17名、年齢:57.8±12.0歳、BMI:22.4±3.5kg/m2)とした。術式は、Dall法は中殿筋および外側広筋の前方1/3を大転子の小骨片ごと切離縫合し、MMIS法は中殿筋の前方1/4を大転子の小骨片ごと切離縫合、外側広筋は温存した。両群間の性別、年齢、BMIに有意差は認められなかった。全例、術後のリハビリテーションは当院のプロトコールにて行い、術後4週で退院となった。運動機能の評価項目は、術側の下肢筋力および歩行能力とし、測定時期は術前、退院時、術後6ヶ月とした。術側の下肢筋力は股関節外転筋力、膝関節伸展筋力を測定した。また、歩行能力としてTimed up and go test(以下、TUG)を測定した。股関節外転筋力の測定にはHand-Held Dynamometer(日本MEDIX社製)、膝関節伸展筋力の測定にはIsoforce GT-330(OG技研社製)を用い、等尺性最大筋力を測定した。股関節外転筋力と膝関節伸展筋力はトルク体重比(Nm/kg)を算出した。統計には対応のないt検定、一元配置分散分析法およびTukey法による多重比較を用い、統計学的有意基準を5%未満とした。【説明と同意】 本研究は京都大学医学部の倫理委員会の承認を受け、各対象者には本研究の主旨ならびに目的を詳細に説明し、研究への参加の同意を得て実施した。【結果】 股関節外転筋力は両群ともに、術前と退院時に有意差はなく、術前および退院時に比べて術後6ヶ月には有意に高い値を示した。膝関節伸展筋力は、Dall群では術前1.77±0.39Nm/kg、退院時1.17±0.30 Nm/kg、術後6ヶ月2.02±0.53 Nm/kgであり、退院時では術前と比較して有意に低い値を示し、術後6ヶ月では退院時よりも有意に高い値を示した。一方、MMIS群では術前1.72±0.64 Nm/kg、退院時1.41±0.43 Nm/kg、術後6ヶ月1.88±0.51 Nm/kgであり、術後6ヶ月では退院時と比較して有意に高い値を示した。各測定時期における各測定項目の両群間の比較については、退院時での膝関節伸展筋力のみに有意差を認め、Dall群がMMIS群と比較して有意に低い値を示した。また、TUGに関しては、Dall群では術前(7.7±1.4秒)に比べて退院時(8.8±1.8秒)は有意に高い値を示し、術後6ヶ月(6.6±1.1秒)では術前および退院時に比べて有意に低い値を示した。一方、MMIS群のTUGは術前(8.3±1.3秒)と退院時(8.5±1.4秒)に有意差はなく、術後6ヶ月(7.0±1.4秒)では退院時に比べて有意に低い値を示した。【考察】 MMIS群では外側広筋に手術侵襲がないために、退院時の膝関節伸展筋力が術前よりも低下しなかったと考えられる。さらに、MMIS群の退院時における膝関節伸展筋力が術前と同等であったことから、退院時における歩行能力も術前を維持することができたと考えられた。一方、THA術後6ヶ月では膝関節伸展筋力には両群で差はなく、アプローチ方法の違いによって術後早期では回復過程に差はあるものの、術後6ヶ月の運動機能回復では両群間に差はないことが示唆された。【理学療法研究としての意義】 本研究の結果は、THA術後患者の筋力の回復過程に応じたトレーニングメニューの作成や日常生活動作指導を適切に行うための有益な情報となり、理学療法研究として意義あるものであると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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