理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

テーマ演題 口述
人工膝関節置換術施行患者におけるウォーキングイベントの意義
飛山 義憲山田 実和田 治田所 麻衣子北河 朗堤井 則宏岡田 修一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Cc0374

詳細
抄録
【はじめに、目的】 人工膝関節置換術は変形性膝関節症などによる膝関節の疼痛改善などを目的に行われ,わが国では年間7万人に対し施行されている.術後には疼痛や運動機能の低下,歩行能力の低下が生じることが知られているが,その結果,生活空間の狭小化など術後の活動性が低下することが考えられる.活動性の低下は更なる運動機能の低下やQOLの低下を招くため,人工膝関節置換術後において活動性を維持・向上させることは重要である.そこで本研究では活動性を維持・向上させる手段として運動実施の動機付けになることが報告されているウォーキングイベントに着目し,人工膝関節置換術後の活動性に影響を与える因子の検討およびこれらの因子に対するウォーキングイベントの効果を検討することを目的とした.【方法】 対象は当院にて人工膝関節置換術を施行し,ウォーキングイベントへの参加を希望した40名(年齢75.7±5.2歳)である.本研究では独自に作成した自記式アンケートを使用し,「連続で歩行できる時間の予測」とVisual Analogue Scaleを用いた「外出を行う自信」「安静時痛」「歩行時痛」を調査した.アンケートはウォーキングイベント1ヶ月前,直前,直後に実施した.さらに活動性の評価としてLife Space Assessment (LSA)を用いた評価をウォーキングイベント直前,1ヶ月後に行った.まずウォーキングイベント参加時のLSAに影響を与える因子を検討するため,参加時のLSAとウォーキングイベント1ヶ月前の各項目を変数としたピアソンの相関係数検定を行った.さらに,ウォーキングイベント前後での各項目の変化を検討するため,対応のあるt検定を用いた検討を行った.統計学的有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 参加者には紙面および口頭にて十分なインフォームドコンセントを行い,署名にて同意を得た.【結果】 ウォーキングコースは坂道や砂利道,手すりのない階段を含む全長3.5kmであり,実際の歩行時間は70分であった.なお,ウォーキングイベント後に疼痛増悪は認めなかった.ウォーキングイベント参加時のLSAは1ヶ月前の「外出を行う自信」(ρ=0.41,p<0.01)「安静時痛」(ρ=-0.36,p=0.02)「歩行時痛」(ρ=-0.44,p<0.01)「連続で歩行できる時間の予測」(ρ=0.41,p<0.01)と有意な相関を認めた. ウォーキングイベント直後の「外出を行う自信」は72.4±29.4から86.9±23.7へ有意に向上し(p<0.01),「連続で歩行可能と思う時間」も36.8±22.0分から63.4±30.2分へ有意に増大した(p<0.01).しかし,1ヶ月後のLSAは参加時に比べ有意な変化は認めなかった.【考察】 本研究の結果から,人工膝関節置換術後の活動性には疼痛だけでなく,外出に対する自信や連続で歩行できる時間の予測も影響を及ぼすことが示唆された.このような外出に対する自信を向上させる手段として,本研究ではウォーキングイベントを用いた.ウォーキングイベントは参加が容易で運動実施の動機付けになることが報告されているが,本研究においてもウォーキングイベント後に疼痛が増悪することなく外出を行う自信が向上し,連続で歩行できる時間の予測も増大した.ウォーキングイベント前における対象者の多くは,連続で歩行できる時間をウォーキングイベントでの実際の歩行時間よりも少なく予測しており,実際に歩行できることを体験することで自信が向上したと考えられる.1ヶ月後のLSAは参加時に比べ有意な変化は認められなかったが,このLSAの変化は個人差が大きく,ウォーキングイベントにより活動性が変化したとは言えない結果となった.しかしながらウォーキングイベント直後に外出に対する自信は向上しており,今後はこの自信の向上を実際の活動性の向上につなげることが課題である.【理学療法学研究としての意義】 これまでの人工膝関節置換術に関する報告は運動機能や歩行能力などに焦点を当てたものが多く,退院後の活動性が検討されることは少なかった.本研究は退院後の活動性に外出を行う自信が影響を与えている可能性を示し,ウォーキングイベントによってその自信を向上できることを示したことは非常に意義深い.今後はさらに活動性の向上につなげることが課題である.
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top