理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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新人理学療法士セッション ポスター
当院で施工した両側同時UKA患者4症例における術前後での変化について
高橋 龍介萩原 礼紀龍嶋 裕二角田 亘
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キーワード: UKA, 動作分析, 術前後
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p. Cf1502

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抄録

【目的】 初期の人工膝関節単顆置換術(UKA)は術後の成績が不安定であったが,近年は術後の成績が安定し手術件数が増加している.今回我々は,当院において今後増加が予想される両側同時UKA患者の歩容を把握する目的で,術前後での変化について比較し検討したので報告する.【対象】 当院整形外科にて両側同時UKAを施行し,術前より独歩可能な患者4例(全例女性,年齢70.3±9.7歳,横浜市大分類全例Grade4,身長150.9±5.1cm,体重59.0±8.9kg,BMI25.8±3.0)とした.【経過・理学療法】 術後の経過は,3日目から離床・CPMを開始,5.5±1.3日目に歩行器歩行を獲得,9.5±1.7日目にT字杖歩行を獲得,13.0±1.8日目に階段昇降を獲得,16.8±1.3日目に退院となった.術前理学療法は術後合併症予防,車椅子の移乗操作などの患者教育に主眼を置いた.術後は疼痛の改善を第一に置き,愛護的に実施した.また筋力強化では筋線維の肥大を主目的とせず,習慣化された筋出力の不均衡と協調性の是正に主眼を置いて行った.歩行練習は,特に膝関節伸展0度を得ることに注意し,術前の不良な歩行様式を持続させないように実施した.【方法】 左右の重複歩距離,歩隔,歩行速度は三次元動作分析装置(ライブラリー社製GE-60)によって計測した.課題は,裸足にて杖などの歩行補助具は使用せずに,路上における10mの直線自由歩行とし,動作を習熟させる為に複数回施行した後に5回測定した.体表面上に直径15mmの反射標点を両側踵骨の2点に貼り付け空間座標データを計測した.歩行が定常化する4歩行周期目以降の位置に,測定域として2m3の補正空間を設定し,空間内を移動する反射標点をサンプリング周波数120Hzで撮影した.解析は,三次元動作解析ソフト(MoveTr32)により,平均的な波形を抽出する為に最小二乗法により最適化を行った.1歩行周期を100%として正規化し5歩行周期を平均し小数点2桁目を四捨五入して一人の歩行データとした.重複歩距離,歩隔,歩行速度は身長から補正した値を用いた.測定は,術前は手術日の前日に行い,術後は退院日の前日に行った.【説明と同意】 本研究の目的および方法について,十分に説明し書面にて同意を得た.なお本研究は,本学医学部の倫理委員会の承認を得て行った.【結果】 FTAは術前右180.5±4.0度,左181.3±4.6度,術後右175.8±0.5度,左176.0±1.4度,膝関節屈曲角度術前右132.5±5.0度,左128.8±7.5度,術後右115.0±9.1度,左111.3±6.3度,伸展角度術前右-6.3±4.8度,左-6.3±6.3度,術後右-2.5±2.9度,左-1.3±2.5度,股・膝関節の屈曲伸展粗大筋力はMMTにて術前右3.8±0.5,左3.5±0.6,術後には著明な変化はみられなかった.JOAは術前右60.0±4.1点,左55.0±10.8点,術後右67.5±2.9点,左67.5±2.9点,Pain On Motion(POM)はNumerical Rating Scale(NRS)にて術前右5.3±0.9,左5.8±1.3,術後右1.8±0.6,左2.1±0.3,重複歩距離は術前右105.0±11.3cm,左104.3±10.3cm,術後右91.0±14.5cm,左90.2±13.7cm,歩隔は術前8.6±3.3cm,術後9.6±4.6cm,歩行速度は術前55.4±10.2m/分,術後40.4±13.3m/分であった.【考察】 諸家の報告では,変形性膝関節症患者に対するUKA施行では術前よりも歩行能力は改善するとされるが,今回著明な改善が認められなかった要因としてPOMが考えられた.術前POMの原因は関節由来のものであったが,術後は手術侵襲の残存による軟部組織痛が発生した結果と考えられた.また人工膝関節置換術(TKA)との比較においては,UKAの方が良好な結果が得られる報告が多いが,我々の先行研究である両側同時TKA施行患者と退院までの経過に著明な相違はなかった.これは術後約2週間という測定時期にも影響を受けていると考えられた.今回は4症例であった為に個体差が大きく,特徴を把握するまで至らなかった.今後は,症例数を増やし経時的に変化を追い,動作様式の特徴を把握できるように検討を継続する必要がある.【理学療法学研究としての意義】 入院期間が短縮している時流において,より効率的な後療法を行う為には,動作様式の特徴を把握することが必要と考える.

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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