理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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新人理学療法士セッション ポスター
反復性膝蓋骨脱臼に対し内側膝蓋大腿靱帯再建術を施行した2症例
貞清 秀成石坂 正大渡邊 裕子田波 未希圷 真毅木村 和樹石井 貴弥久保 晃前野 晋一斉藤 聖二
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p. Cf1503

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抄録

【はじめに,目的】 反復性膝蓋骨脱臼に対し動的安定性を得るために,近年,内側膝蓋大腿靱帯(以下,MPFL)再建術が試みられている.しかし,術後理学療法についての詳細な報告は少ない(岡ら,2009).当院のMPFL再建術(筆者ら,2010)は,術後から全荷重可能で早期の自宅退院が可能である.本術式の術後リハビリテーションの特徴を報告する.【症例紹介】 本症例は,反復性膝蓋骨脱臼でMPFL再建術を行った17歳女性と20歳男性である.2症例とも合併症はなかった. 17歳女性は中学校1年生の時に右膝蓋骨不安定症の診断を受け,過去に10回以上脱臼歴があった.平成23年5月20日の体育の授業でバドミントンの着地時に右膝の違和感を生じ,膝蓋骨の外側偏位を自覚した.自然整復されたが痛みで右足をつけない状態となり当院を受診した.術前理学療法を行い,急性炎症が落ち着いた後,7月27日にMPFL再建術および外側解離術が施行された.20歳男性は平成20年にもスノーボードで膝蓋骨脱臼の既往があった.平成23年5月19日の野球の試合中に右膝の痛みが出現し,右膝蓋骨が外側に脱臼した.すぐに自然整復されたが,翌日右膝の疼痛と違和感があるために当院を受診した. 術前理学療法を行い,8月30日にMPFL再建術および外側解離術が施行された.【説明と同意】 症例は未成年を含んでおり,2例とも両親と本人の同意を得た.【経過】 2症例ともに手術は夏休み期間に行い,翌日から歩行可能となり,17歳女性は術後8日で,20歳男性は術翌日独歩退院した.また膝蓋骨に対するapprehensionは,術直後から消失した.理学療法では術前から内側広筋を中心とした筋力強化を指導した.17歳女性の右膝ROMは,術前5-130°,術後1週間で0-120°,術後4週間で0-140°であった.術後4週間でextension lagなく自動SLR(Straight Leg Raising)が可能となり,疼痛の消失時期は8週間であった.20歳男性の右膝ROMは,術前0-145°,術後2週間で0-120°,術後4週間で0-135°であった.術後4週間で自動SLRが可能となった.やはり疼痛消失までは約8週間であった.また2症例とも8週後には最終可動域まで獲得できた.筋力強化の指標として超音波画像診断装置を用い内側広筋の筋厚とメジャーにより大腿周径を計測した.17歳女性では,術側の内側広筋の筋厚は,術直後1.3cmから4週で1.6cmに,健側は1.7cmから2.4cmに増加し,健側でより増加率が高かった.20歳男性では,術側の内側広筋の筋厚は,術直後2.0mから4週で2.1cmに,健側は2.4cmから2.8cmに増加し,やはり健側で増加率が高かった.2症例ともに膝蓋骨上縁5cmでの両側の大腿周径は4週で変化がなかった.【考察】 ROMや歩行能力や疼痛に関しては8週後にはほとんど問題がみられていない.筋力に関しては,2症例とも4週後にはextension lagなく,自動SLRが可能となる.筋厚と周径では4週後に筋厚では左右ともに増加がみられているが,周径ではほとんど変化がみられていない.本術式では内側広筋に関しては全く侵襲が加わっていないが,術側の内側広筋の筋厚の回復は緩やかで周径を増加させるまでに至らないことが示唆される.要因としては膝蓋大腿関節の接触面の変化や,膝蓋骨や大腿骨に骨孔をあけるなどの侵襲が無視できないことが考えられる.また健側の内側広筋でより大きな筋厚の増加がみられたことより,健側下肢を中心とした活動をしているのではないかと考えられる.筆者らのMPFL再建術では日常生活の早期復帰が可能となるが,今回の研究から,術後8週では疼痛が改善しても筋厚の回復としては不十分であることが考えられる.【理学療法学研究としての意義】 MPFL術後症例はその経過を追った報告が少ない.当院では,前十字靭帯再建術と同じプログラムで行っているが,その回復経過は非常に良好で独歩獲得,在宅復帰が早期に可能である.先行研究より,反復性膝蓋骨脱臼に対する内側広筋の筋力強化が推奨されており本症例においても実践したが,術側の内側広筋の筋厚の増加は緩やかであることが示された.今後のスポーツの復帰時期に関して一考を要すると思われた.MPFL再建術は近年確立された治療法であり,中期成績は良好とされている.本研究では術後短期の筋厚を評価したが,長期成績を検討していく必要がある.

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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