理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
食道がん患者における術前リハビリテーションの実施が術後の機能障害に与える効果
牧浦 大祐井上 順一朗小野 玲柏 美由紀山口 良太黒田 大介三浦 靖史
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p. Da0993

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抄録
【はじめに、目的】 がん患者リハビリテーション(リハ)料が算定可能になり、治療前からの予防的介入が可能となった。我々はこれまで、食道がん患者に対する術前リハの実施が、術後呼吸器合併症予防に有効であることを報告した(井上ら. 2011)。しかし、術後呼吸器合併症を予防できた食道がん患者であっても、その治療侵襲の大きさから、術後十分な栄養摂取が困難となり、機能障害が進行する症例を多く経験する。栄養状態の低下は、機能障害を引き起こすだけでなく、倦怠感から身体活動へのアドヒアランスを低下させ、術後の訓練実施の妨げとなる。その対処法として、術前リハの実施が、機能障害の予防に有効ではないかと考えるが、術前リハが術後の機能障害に与える効果は不明である。そこで今回、術後機能障害予防における術前リハの有効性を後方視的に検討した。【方法】 2008年4月から2011年1月に当院で食道切除再建術を施行された食道がん患者のうち、術後呼吸器合併症と縫合不全発生例を除外した62名を対象とし、術前(術前1~3日)と術後(退院時)に測定した身体機能(等尺性膝伸展筋力、6分間歩行距離)の変化率(術後値/術前値×100[%])、健康関連QOL(Functional Assessment of Cancer Therapy General (FACT-G)総合得点)の変化(術後値-術前値)、術後初回歩行までの日数、術後在院日数について、術前リハ施行群と非施行群間で比較検討した。等尺性膝伸展筋力は、左右の平均値を使用した。統計解析にはStudent’s t-test、またはWilcoxon検定を用い、5%未満を統計学的有意とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には口頭による説明を行い、書面にて同意を得て実施した。【結果】 術前リハ施行群42名(男性33名, 女性9名, 年齢65.2±9.1歳)は、非施行群20名(男性17名, 女性3名,年齢63.1±6.2歳)に比べ、臨床病期III以上の進行患者の割合が有意に高かったが(術前リハ施行群 vs 非施行群; 54.8% vs 25.0%, p=0.03)、術前の身体機能や健康関連QOL、手術関連変数には両群間に有意な差を認めなかった。6分間歩行距離の変化率(92.3±15.9% vs 82.3±13.3%, p=0.02)とFACT-Gの変化(-2.0±10.7 vs -13.8±9.8, p=0.001)、術後在院日数(中央値30日 vs 41日, p=0.01)は両群間に有意な差を認めたが、等尺性膝伸展筋力の変化率(87.9±16.2% vs 83.5±14.1%, p=0.31)と術後初回歩行までの日数(中央値3日 vs 3日, p=0.60)には有意な差を認めなかった。【考察】 術前リハ施行群では、非施行群と比べて、全身持久力と健康関連QOLの低下が小さく、術後在院日数が短かった。この結果から、術前リハの実施は、食道がん患者における術後の機能障害の予防に有効である可能性が示唆された。CABG患者では、術前リハの実施は術前の機能改善だけでなく術後の機能回復にも有効であると報告されているが(Arthur HM, et al. 2000)、がん患者を対象にした報告は本研究が初めてである。術前の身体機能や健康関連QOL、術後初回歩行までの日数と手術関連変数には両群間に有意な差を認めなかったことから、術前リハは術後急性期以降の機能回復に影響を与えているのではないかと考えられるが、その点に関しては今後の詳細な評価及び検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】 本研究は、胸腹部外科手術を受けるがん患者に対する予防的介入としての理学療法の有効性を示すものであり、がん患者リハのエビデンスの構築・発展に寄与するものである。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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