理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
腹部大動脈瘤ステントグラフト挿入術後リハビリテーションの必要性
島添 裕史山内 康太小柳 靖裕藤島 慎一郎三井 信介
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p. Da1002

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抄録
【はじめに、目的】 腹部大動脈瘤(以下、AAA)切除再建術後のリハビリテーション(以下、リハ)は多くの施設で行われており、その有効性、安全性は過去に報告されている。近年、AAAに対する低侵襲治療として、ステントグラフト挿入術(以下、EVAR)が注目されており、症例数が増加してきている。EVARは低侵襲であるため、術後の廃用症候群などの二次的合併症に陥ることは少ない。しかし、開腹手術が困難であった高齢者や重症な臓器障害合併患者などのハイリスク症例が対象となることが少なくないため、EVAR後のリハ介入の必要性は高いと考えられる。今回、当院における開腹術症例とEVAR症例の患者背景、術後経過の違いを比較し、リハ介入の必要性を検討したので報告する。【方法】 2006年10月から2011年10月までに当院でAAA手術を施行され、術後リハを行った40例を対象とした。術後リハは術後1日目から離床・歩行を進めていき、全身状態が安定した時点で、リハ室での歩行や自転車エルゴメーターなどの有酸素運動、下肢筋力増強運動を行った。対象者を術式により、開腹手術24例(開腹群)とEVAR16例(EVAR群)の2群に分け、年齢、性別、BMI、術前Barthel Index(以下、BI)、併存疾患、術時間、出血量、尿道カテーテル抜去日、歩行開始日、術後合併症、術後在院日数を調査し、2群間で比較した。統計学的検討はt検定、χ2乗検定を用いて行った。【倫理的配慮、説明と同意】 リハ実施にあたり、リハ介入の目的・必要性を説明し、既存のリハビリテーション実施計画書を用いて同意を得た。また、前述の調査項目は診療記録より後方視的に調査し、データの集計は患者名をコード化し、個人を特定できないように配慮した。【結果】 年齢は開腹群72.2±7.5歳、EVAR群77.0±6.7歳(p=0.045)、術前BIは開腹群100.0±0.0点、EVAR群85.7±20.0点(p=0.001)、術時間は開腹群277.3±110.0分、EVAR群167.3±44.8分(p<0.001)、出血量は開腹群1431.3±1026.1mL、EVAR群303.3±227.3mL(p<0.001)、尿道カテーテル抜去日は開腹群3.0±1.5日、EVAR群1.4±0.7日(p<0.001)、術後在院日数は開腹群15.2±6.0日、EVAR群7.4±2.3日(p<0.001)で有意差を認めた。歩行開始日数は開腹群1.5±1.0日、EVAR群1.3±0.5日で有意差を認めなかった(p=0.482)。術後合併症は開腹群せん妄4/24例(16.7%)、リンパ漏1/24例(4.2%)、EVAR群せん妄1/16例(6.3%)、殿筋跛行5/16例(31.3%)であった。【考察】 EVAR群の方が、尿道カテーテル抜去日が早く、術後在院日数が短かった。これは、EVARが低侵襲治療であり、開腹手術と比較して早期に機能が回復するという利点を示している。しかし、EVAR群の方が有意に高齢かつ術前BIが低値であり、内腸骨動脈のコイル塞栓を施行した場合に起こりうる合併症である殿筋跛行が31.3%の症例に出現した。これらのことから、術後の活動性低下、ADLやQOLの低下を予防するために、EVAR後のリハ介入は必要であるといえる。【理学療法学研究としての意義】 EVARは低侵襲治療であるが、ハイリスク症例が対象となることもあるため、術後の活動性低下、ADLやQOLの低下を予防するために、術後リハ介入が必要であることが示された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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