理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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2型糖尿病患者および健常者における心拍変動係数と局所運動時の循環応答の関連
小西 華奈河江 敏広堂面 彩加松木 良介大浦 啓輔高橋 真関川 清一石橋 不可止稲水 惇濱田 泰伸
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p. Db0571

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抄録
【はじめに、目的】 自律神経機能の指標の一つとして安静時における心拍変動係数(Coefficient of Variation of R-R intervals: CVR-R)があり,糖尿病(Diabetes Mellitus: DM)患者における運動療法開始時の基準の一つとして臨床的に用いられている.近年,DM患者の運動療法として全身運動だけでなく局所運動も重要視されてきている.DM患者のCVR-Rと全身運動時の循環応答との関連性については,先行研究にてすでに明らかとなっているが,局所運動時については検討されていない.CVR-Rと局所運動時の循環応答に関連を認めた場合,CVR-Rが局所運動を行う上でもリスク管理の指標となる可能性がある.そこで,本研究では2型DM患者および健常者において安静時CVR-Rが局所運動時の循環応答の変化と関連するかを検討した.【方法】 対象は外来通院中の2型DM患者11名(平均年齢61.6±9.2歳,罹病期間13.1±9.5年,HbA1c[JDS値]7.0±1.1%,男性6名・女性5名)をDM群とし,健常者11名(平均年齢60.2±7.4歳,男性3名・女性8名)をControl群とした.除外対象は,心疾患や不整脈を有する者,βブロッカーなど自律神経機能に影響を及ぼす薬剤を服用している者,運動療法が禁忌となる合併症を有するDM患者とした. 背臥位で10分以上安静にした後,無線心電計(Dynascope-3140: フクダ電子)を用いて安静時心電図を記録し,100拍のR-R間隔からCVR-Rを算出した.局所運動は静的ハンドグリップ(HG)運動とし,座位にてHG運動における最大随意筋力(MVC)を測定した.3分間の安静後,30%MVC強度にて2分間のHG運動を行った.測定開始から終了時まで,連続指血圧測定装置(Portapres Model2: TNO-TPD Biomedical Instrumentation)を用いて平均血圧(MAP),一回拍出量(SV),心拍出量(CO),総末梢血管抵抗(TPR)を算出し,HRは無線心電計を用いて測定した.得られたデータより,安静時からHG開始1分後までの変化量(⊿1)およびHG開始1分後から2分後までの変化量(⊿2)を算出した. CVR-Rと循環諸量の関連はSpearmanの順位相関係数による検定を行った.統計処理には統計用ソフトウェア(SPSS ver.12.0J for Windows: SPSS Japan Inc.)を使用し,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座研究倫理委員会(承認番号: 0904)の承諾を得て実施した.測定の趣旨・方法について事前に口頭および書面にて説明を行い,同意を得た.【結果】 DM群のCVR-Rは3.6±1.0%,Control群のCVR-Rは3.3±1.4%であり,2群間に有意差を認めなかった.DM群においてCVR-Rと循環諸量の関連を検討した結果,CVR-RとHR⊿1において有意な相関関係を認めた(r=0.818,P<0.05)が,HR⊿2では有意な相関関係を認めなかった(r=0.400,P=0.223).また,MAP,SV,CO,TPRは⊿1,⊿2のいずれもCVR-Rと相関関係を認めなかった. Control群においてCVR-Rと循環諸量の関連を検討した結果,いずれの項目もCVR-Rと有意な相関を認めなかった.【考察】 本研究より,2型DM患者はCVR-Rと局所運動初期のHR応答に関連を認めることが明らかとなった.局所運動初期のHR応答には心臓副交感神経活動の影響が大きいため,心臓副交感神経機能の指標であるCVR-Rと有意な相関を認めたと考えられる.一方,健常者の場合はCVR-Rと局所運動時の循環応答には関連を認めず,2型DM患者においては,全身運動だけでなく局所運動においてもCVR-Rが運動時の循環応答と関連を認めることが明らかとなった.また,2群ともMAP,SV,CO,TPRとCVR-Rには有意な相関を認めなかった.この理由として,これらは副交感神経活動よりも交感神経活動が関与するため,CVR-Rとは相関を認めなかったと考えられた.【理学療法学研究としての意義】 2型DM患者にとって運動療法を行う上で自律神経機能の評価は不可欠である.全身運動だけでなく,局所運動に関しても,運動療法開始前にCVR-Rを測定し,運動を行う上でのリスクの有無を把握することは,安全に運動を行うために重要であると考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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