抄録
【はじめに、目的】 当院は、1151床を有する急性期基幹病院である。2009年には4770名に対して理学療法(以下PT)などのリハビリテーション(以下リハ)が処方されている。これら紹介患者の増加により、各科の紹介からリハ科処方までの期間が長くなり、リハ開始が遅延することが問題となっていた。そこで、各科医師による直接リハ処方が順次開始されることとなり、2010年10月より呼吸器内科においても直接処方が開始された。今回、市中肺炎患者を対象として、処方形態変更後のPT効果および問題点を検討することとした。肺炎患者の日常生活動作(以下ADL)に関しては、他疾患との合併、抗生剤との関係、摂食・嚥下、口腔ケアなどさまざまな観点からの報告が多数なされている。また、ADL低下や廃用を予防する上で早期からリハを開始し、離床することが重要だとする報告が多くみられる。そこで、リハ科処方と呼吸器内科直接処方移行後のPTの経過を比較することとした。【方法】 対象は2006年11月~2011年9月までに当院入院中に理学療法開始となった298例中、歩行獲得可能となった市中肺炎患者64例で男性53例、女性11例。平均年齢は、72.4±13.2歳である。それらを2006年11月~2010年9月までのリハ科処方群(以下リハ処方群)32名(男性28名、女性4名)と2010年10月~2011年9月までの呼吸器内科直接リハ処方群(以下直接処方群)32名(男性25名、女性7名)の2群に分け、以下の項目について検討した。年齢、肺炎の重症度分類(以下A-DROP)、在院日数、退院時下肢筋力値、入院からPT開始、PT開始から端座位開始、PT開始から起立開始、PT開始から歩行開始、PT開始から歩行獲得、入院から端座位開始、入院から起立開始、入院から歩行開始、入院から歩行獲得とした。統計学的解析にはMann-whitney検定を用い、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 当院個人情報保護方針に沿って実施し、臨床研究センターの承認を得ている。【結果】 患者背景として、年齢、A-DROP、在院日数、退院時下肢筋力値において有意差を認めなかった。PT経過において入院からPT開始までの日数(中央値)は、リハ処方群8.0日、直接処方群5.5日となり直接処方群がリハ処方群に比べ有意にPT開始までの日数が短縮していた。PT開始から端座位開始、起立開始、歩行開始、歩行獲得までの日数には有意差を認めなかった。入院から端座位開始は、リハ処方群9.5日、直接処方群6.0日、入院から起立開始はリハ処方群10.0日、直接処方群8.0日、入院から歩行開始はリハ処方群12.5日、直接処方群8.0日、入院から歩行獲得はリハ処方群18.5日、直接処方群11.5日となり、直接処方群にて有意に短縮していた。【考察】 処方形態の違いによるPTの経過について比較を行った。入院からPT開始までの期間は直接処方群にて短縮し約6日となった。これは、呼吸器内科医からの直接処方により、リハ科医診察までの待期時間がなくなったからと考えた。今回、PT開始から端座位~歩行開始、歩行獲得までには両群に有意差は認められなく、治療期間は同等のスピードにて進めることが出来ていた。入院から端座位~歩行開始、歩行獲得は直接処方群にて有意に短縮していた。廃用症候群は、過度の安静状態を取り続けることにより起こる身体機能の低下といわれている。筋量では、臥床により0.5~1%/日低下するとされ、臥床後1週間がより強いといわれている。また、循環調節系へは起立耐性への低下を及ぼすといわれている。つまり早期からのPT開始により、筋力低下や起立耐性能の低下といった廃用症候群を予防することが可能となり入院から歩行獲得までの期間が短縮したと考えた。また、現在のPT開始時期を検討すると、杤谷によると一般的な肺炎患者の治癒過程は48~72時間以内に呼吸数などの臨床症状が改善してくるといわれている。よって、現在のリハ開始が入院から約6日という期間は、病態がある程度安定してからの開始となっていると思われる。つまり、入院直後の肺炎治療初期からのリハを検討することで更に歩行獲得までの短縮が可能と考える。課題として今後肺炎治療初期からのPT開始を検討するにあたり、呼吸管理の状況および病態の把握、離床に伴い変化する全身状態を把握する高い能力が要求されるようになり、各療法士のリスク管理に対する知識の充足があげられる。【まとめ】 処方形態の変更に伴う早期リハ開始は、歩行獲得までの短縮を認めている。また今後、早期からの介入や離床手順を検討することで、市中肺炎患者における歩行獲得までの更なる短縮に貢献できると思われた。【理学療法学研究としての意義】 当院での、処方形態変更に伴い早期理学療法開始可能となった市中肺炎患者の背景と転帰を調査し、その効果を明確化し傾向を知り今後の治療プログラム再考・立案の一助となる。