抄録
【はじめに】 血液透析(以下HD)患者に対する運動療法を介入する上で、身体活動レベルと食事状況を把握することは非常に重要なことと考える。特に蛋白エネルギー障害、高カリウム血症、高リン血症等による透析合併症の予防は運動療法をする上で留意しなくてはいけない因子である。そこで、今回我々は、血液データからHD患者における身体活動レベルと食事状況との関連性を検討した。【対象】 当院維持HD患者46名。対象の内訳は、男性24名・女性22名、平均HD期間5.2±5.6年、平均年齢71.5±14.2歳、原疾患[糖尿病性腎症24名・慢性糸球体腎炎9名・腎硬化症5名・ネフローゼ症候群4名・不明4名]であった。 本研究は、対象に対し研究の趣旨を十分に説明し同意を得て実施をした。【方法】 身体活動レベルの指標として身体活動係数(以下AF)を用いた。 AFとの比較検討項目は、HD間体重増加率・クレアチニン産生速度(以下CGR)・至適蛋白摂取量(以下nPCR)・HD前血清アルブミン値(以下Alb)・HD前血清カリウム値(以下K)・HD前血清リン値(以下IP)とし、統計学的処理には、ピアソンの積率相関係数・対応のないt検定を用い、有意水準は5%未満とした。【結果】 各項目の結果は、AF:1.3±0.18、HD間体重増加率:4.2±1.55%、CGR:12.6±4.89mg/kg/day、nPCR:0.9±0.15g/kg/day、Alb:3.4±0.35g/dl、K:4.7±0.69mEq/l、IP:5.0±1.09 mEq/lであった。 AFとの相関係数は、HD間体重増加率:0.34、CGR:0.71、nPCR:0.38、Alb:0.65、K:0.12、IP:0.53であった。【考察】 身体活動レベルの高いHD患者は、HD間体重増加率・nPCR・IPから、食欲および水分摂取量が多く、HD食の基本であるリン/蛋白比の低い食事を守れていない可能性が示唆された。しかし、Kから、食事量は多い中、果物の摂取は控えている傾向があることも推察された。 HD患者に対する運動療法や身体活動量の向上を図る理学療法士において、身体活動レベルの向上によるIPや水分摂取量の増加は、透析合併症を予防する上で留意する必要があり、運動療法開始にあたって食事および水分の再指導も重要な事と考える。【理学療法学研究としての意義】 内部障害系リハビリテーションを展開する上で、疾患特異的合併症の予防は重要である。特に透析合併症予防については、運動療法を実施する理学療法士のプロフェッションとして活躍出来ていない現状があり、注目していく必要がある。