理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 口述
座位で行うバルーン排出訓練における直腸内圧測定の意義
─理学療法士による排便障害患者への新しい取り組みについて─
村田 奈理加国武 ひかり井上 みちる槌野 正裕神山 剛一野明 俊裕荒木 靖三
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Ea0354

詳細
抄録
【はじめに】 リハビリテーション医療の中で排泄に関する問題は患者だけでなく、家族や介護者にとっても重要である。普段当たり前に行う排泄方法も個人差が大きく、排泄による問題は著しくQOLの低下を引き起こしてしまう。大腸肛門の専門病院で働く理学療法士として、医師の指示のもとに直腸肛門機能が低下した患者に対し、簡易式便座を用いた機能訓練に介入している。今回、排泄時の姿勢や骨盤底筋の協調運動に対する指導により、安静時と息み時(排出圧)の直腸内圧がどのように変化するか検討したので報告する。【対象・方法】 対象は、医師の指示のもとに直腸肛門機能が低下した便排出困難な患者100名(男性37名、女性63名、年齢58、53±16、58歳))に対し、直腸内に50ccの空気を注入したバルーンを偽便に見立てて挿入し、簡易式便座を使用して排出する訓練(以下バルーン排出訓練)を行った。またバルーンの先端は空圧測定装置に接続し、側臥位から座位における安静時の直腸内圧と、理学療法士が介入する前後での排出圧の直腸内圧を測定した。またその時のバルーン排出可否も調査した。バルーンを直腸に挿入する行為については医師または検査技師が行い、訓練を理学療法士が担当した。【倫理的配慮、説明と同意】 当院医療倫理委員会の許可を得て臨床研究を行った。また対象患者には本研究の同意を得て訓練に介入している。【結果】 全症例において安静時および排出時の直腸内圧は側臥位より座位のほうが高値であり、有意な相関が見られた(安静時26.7 vs 43.7:相関係数0.640、排出時59.6 vs 87.7:相関係数0.712)。バルーン排出訓練前後で排出圧に有意な差は認められなかったが、指導前は22人であったバルーン排出可能例が訓練後では84人となり理学療法士介入前後で大きな差が見られた。排出可能となった症例のうち指導前の直腸内圧が120cmH2O以上だった全例で指導後の直腸内圧は低下し、一方60cmH2O以下の全症例で指導後に圧が上昇した。【考察】 排出困難な患者に対し、理学療法士による座位で行うバルーン排出訓練を行った結果、バルーン排出可能となった症例を増加させる事ができた。また、全症例において安静時および排出時の直腸内圧は側臥位より座位のほうが高値であったが、これは重力の影響により内臓が下垂した事が要因であると思われる。この結果からも、排泄は臥位より、座位で行う方が容易に行える事が考えられる。指導前後の排出圧に有意な相関は見られなかったが、数値を分析した結果から、指導前の直腸内圧が120cmH2O以上であれば、いきみや骨盤底の弛緩と言った肛門を緩める方法を習得する事が重要であり、60cmH2O以下の場合では、排出圧自体が弱く姿勢の改善やいきみのくわえ方、腹圧向上等をポイントにおいて指導することが必要であると思われる。このことからもバルーン排出訓練の排出圧は60cmH2Oから120cmH2O以内の数値を指標として患者にアプローチする必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 わが国における近年の社会構造変化、疾病構造の変化は著しく、リハビリテーションにおける医療・福祉の分野においての変化も急速に変化し続け、それに伴いリハビリテーション医療も幅広いニーズを必要とされている。排便は本来正常な生命現象であるが、羞恥心を伴いやすく、患者やその家族など複雑な感情をもたらしてしまっている。しかし排便障害は、従来いわれてきた大腸肛門疾患・手術後の障害・先天性異常などに加え加齢による排便障害も急増し、その需要は今後も増え続けると推察する。その為それぞれの分野が、専門性を持ち合い患者と関わっていく事が重要であると考える。まだ医療の分野においても排泄リハビリテーションの認知度は低いのが現状であるが、今後も排便障害患者と継続的に関わることにより、理学療法士としての排便障害への取り組みが、どのように影響を及ぼすか研究を深めていき、排泄の分野でのリハビリテーションを確立させていきたい。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top