理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
生活維持期における訪問リハビリテーションについて
浦野 幸子荻野 光代鈴木 博文森尻 菜見小池 真平内海 友佳高橋 直哉井上 麻由金井 美幸倉上 訓大齋藤 由希今村 雄二香山 真高橋 澄江今井 圭子
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p. Ea0358

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抄録
【はじめに】 訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)に関する終了時期やゴール設定は、事業所単位でその方針にばらつきがあるのが現状である。今回、訪問リハ継続期間とその臨床像や他サービスとの関連性を把握する目的でアンケート調査を行い、ある程度の見解を得たので報告する。【方法】 当社の訪問看護ステーション(以下、ST)のリハ対象者193名の臨床像を当STに従事する療法士17名(Aアンケート)と、同時に訪問リハの利用者や家族(Bアンケート)も実施した。Aは、利用者の障害や環境情報、サービス内容、介護保険環境など18項目を書面記述式、Bは訪問リハの意義や目的などについての10項目を書面選択方式で調査した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には口頭にて本研究の主旨を説明し、参加の同意を得られた対象者のみに実施した。本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき、株式会社孫の手・ぐんまの役員会承認のもと実施した。【結果】 アンケート回収率はA:92.7%、B:85.8%であった。利用者の平均年齢は、73.5歳、男女比は54:46、最も70歳代が多い。平均訪問リハ利用期間は40.7ヶ月、平均訪問頻度は週1.29回であった。家族構成は、10%が独居、34%が夫婦のみ、それ以上が56%。疾患内訳は、脳血管障害79%、骨関節疾患13%、脊椎疾患10%、廃用8.5%であった。利用者の59%に主疾患以外の合併疾患が確認された。この中でも33%の利用者に直に身体機能に影響のある合併症があった。介護度の変化は、改善・維持群が全体の77%、低下群23%。低下群のうち脳血管障害が70%、脊椎疾患12.5%、難病者10%、骨関節疾患8%であった。通所サービスを併用している群と訪問リハ単独サービス群での介護度変化には、優位差はなかった。低下群には80歳代が50%を締めていた。訪問リハ開始後、転倒した群は全体の41%にのぼり、転倒群の54%は脳血管障害、23%は難病者、ついで骨関節・脊椎疾患とそれぞれ10%であった。Aアンケートで訪問中止した場合、利用者の機能維持期間はどの程度かとの質問には、約7割の利用者は半年以内に機能悪化すると予測していた。Bアンケートでは、訪問リハが終了すると予測されるべき事項には、歩けなくなる・不安・疼痛悪化・疾患の悪化・認知症状の悪化など様々に利用者や家族は訴えていた。家族にはできない内容の内訳では、他の職種では代替できない手技が多く含まれていた。さらに、自主トレーニングの実行率は60%であり、実情は困難なケースも多い傾向にあるとの結果であった。【考察】 今回の結果から、訪問リハは維持期において生活機能の改善を求められている中、実情は身体機能を維持する上で継続的なリハビリの一つの資源として重要であると再認識できた。主に、訪問リハを提供している利用者の多くには、主疾患以外に身体に影響を及ぼす合併症を多く伴っており、終了すると容易に機能低下が予測される症例が多い。継続期間にも影響が出ている要因と考える。訪問リハは、単に急性期・回復期・維持期と称される時期に関わらず、その利用者の持つ障害特性に合わせた利用資源として考えるべきである。維持期であるから生活機能の向上へと一概にゴールを定められないケースが非常に多いという現実がある。生活機能を支える根幹は、心身・構造機能である。そこが何らかの要因で低下すれば、生活機能の向上はありえない。訪問リハが発症からの時期などに期間を制限されるのではなく、個々のケースの概況に合わせた利用手段として考えるという基本姿勢を現場からの意見として吸い上げて欲しいと切に願う。【理学療法学研究としての意義】 訪問リハの対象者の特性と継続期間は非常に重要な関係であり、発症からの期間や他サービスへの移行役割的な存在として近来、議論が重ねられている印象があるが、訪問リハ対象者には進行性疾患、合併症あり脳血管障害、精神的要因など、さまざまなタイプで継続せざるを得ないケースが非常に多い。特に脳血管障害においては維持期というのは半永久的あり、心身機能の改善維持がまず保たれることが基礎であり、どんな環境でそれが活かせるかをコーディネイトしていくのが在宅の理学療法士の役割であると考える。単に通所移行への橋渡し的存在や、専門職の急性期介入のみではなく、生活維持期における訪問リハサービスの重要性を訴えていきたい。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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