抄録
【はじめに】 当施設では通所リハビリ利用者様に対して、平成22年8月より訪問指導等加算(以下,訪問指導)を導入し、スタッフが自宅に訪問し在宅生活に密着したリハビリを早期から提供するように努めている。今回、訪問指導を通所リハビリで導入した効果を導入前と比較検討した。また、訪問指導を導入した利用者様の経過を事例を通して報告する。【方法】 平成21年9月~23年6月までの当施設の通所状況を調査し、訪問指導導入前(平成21年9月~22年7月)の新規利用者様37名、(平均年齢79.34±2.34歳、男:女=10:27、要介護1~5=10:9:8:9:1、主疾患=中枢17:整形21:内科12:神経難病1:精神12)、訪問指導導入後(平成22年8月~23年6月)の新規利用者様37名(平均年齢78.37±3.62歳、男:女=21:16、要介護1~5=13:6:9:5:4、主疾患=中枢17:整形20:内科12:神経難病1:精神24)を対象とした。検討方法は、1)訪問指導導入前の新規利用者様37名、訪問指導導入後の新規利用者様37名に対して、Functional Independence Measure(以下,FIM)の評価を行い、通所リハビリ初期時(初回利用から2週間以内)と6ヶ月後とを比較した。統計処理は、Wilcoxon t-testを用いて解析した。有意水準を1%未満とした。2) 通所リハビリ初期時と6ヶ月後におけるFIMの変化を訪問指導導入前と訪問指導導入後で比較検討した。統計処理は、Mann Whitney U-testを用いて解析した。有意水準を1%未満とした。3)事例紹介:73歳男性、脳梗塞、腰痛、要介護3、性格:依存傾向。家族:本人・妻・長男の三人暮らし。主訴:(本人)歩けない。(家族)転倒しないでほしい。利用:週3回。問題点:ほぼ寝たきり状態で活動性低下。訪問指導により得られた個人・家族の在宅生活を評価し、家族のニーズを十分把握した上での関わりを実施した成果を報告する。【倫理的配慮】 利用者様、家族には実施内容の説明、プライバシーおよび個人情報の保護を説明し同意を得た。【結果】 1)通所リハビリ利用における初期時と6ヶ月後の比較:訪問指導導入前のFIMの平均値は、初期時72.91±1.21、6カ月後73.40±1.63、同様に訪問指導導入後では初期時73.16±1.33、6カ月後75.32±1.91であった。訪問指導の有無に関わらず、FIMの上昇が有意に(P<0.01)見られた。2)訪問指導の有無による比較:初期時から6カ月後のFIMの上昇幅の平均は訪問指導導入前0.48±0.50、訪問指導導入後2.16±0.87であった。訪問指導導入後が訪問指導導入前に比し、有意に(P<0.01)6ヶ月後のFIMの上昇が見られた。3)初期評価(平成22年8月)→最終評価(平成23年6月)の比較:疼痛VAS9/10→VAS2/10、HDS-R19点→22点、認知症自立度2b→1、体重70kg→66kg、BMI25→24、TUGT30秒→24秒、FIM65点→114点、特に効果の認められた項目は移乗(トイレ、浴槽)、移動(歩行、階段)場面であった。【考察】 通所リハビリの利用により訪問指導導入の有無に関係なく、FIMの上昇が認められた。しかし訪問指導をした方がより有意にADLの向上が見られた。これは、自宅に訪問する事で得られる情報(利用者様、家族からの様々な場面での表情の観察、生活動線、環境)を活用することにより、通所リハビリにおける具体的かつ実践的な介入が可能になったためと考えられる。訪問指導を通して在宅生活を見極めた関わりが可能になる事により、より細かな問題に対して動作評価や介助指導を利用者様及びその家族に直接働きかける事が出来るようになった。その結果として、在宅生活すべてを考慮した自立支援に直結した理学療法を導入する事が可能となったと考えられる。訪問指導導入により利用者様家族との連携が図られた事で、状態変化に応じた介助方法・必要に応じた福祉用具の提案、社会交流の拡大・日常化に繋がったと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 本研究結果より、通所リハビリにおいて、訪問指導の導入が利用者様のADL向上に有用であると言えた。訪問指導は、初回利用時のみならず、その後、必要に応じて、月1回の頻度で介入することが出来る。よって、利用者様の身体状況や家族のニーズに変化があっても、十分に対応可能で、通所リハビリに反映する事が出来る。訪問指導の範囲を自宅内から地域へ拡大することで、利用者様の生活向上をより図れることが示唆され、今後も当研究を続ける意義があると考えた。