理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
地域高齢者における修正歩行異常性尺度日本語版の遠隔評価の精度
小林 まり子林 由美子日伝 宗平森 佐苗原田 和宏
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キーワード: 歩行, 評価, 信頼性
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p. Ea0367

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抄録
【目的】 加齢や疾病に伴う転倒リスクの増大を,歩行動態の観察を通して評価する試みがなされている。我々は前回までの学術大会において,修正歩行異常性尺度日本語版(Modified Gait Abnormality Rating Scale: GARS-M)の信頼性と妥当性について報告し,GARS-Mが転倒リスクを反映する評価として使える可能性を示してきた。今回,地域在住高齢者を対象に本尺度の遠隔環境下での精度について検討したので報告する。【方法】 対象の包含基準はA病院外来診療の利用者のうち65歳以上で10mの歩行が可能な者とした。除外基準は,1)重度な四肢の麻痺を有する者,2)認知力が低下し意思の疎通に支障があると考えられる者,3)研究の同意が得られない者とした。最終的に26名(平均年齢73.9±5.8歳)を研究にエントリーした。疾患の内訳は骨関節疾患13名、脳血管疾患7名、骨折3名、その他3名であった。データ収集期間は2009年6~7月であった。歩行映像の記録は直線7.2mごとの直行した歩行路を作り,歩行の側面像と前後像が撮影できる位置にデジタルビデオ(69万画素)を置いて行った(DV映像)。また同時に,skype® ver.3.8のテレビ電話機能を利用してWEBカメラからの画像を光通信回線(100Mbps)で接続された遠隔地のパソコン(CPU: Intel® Core™2 Quad 2.83GHz, OS: WindowsXP)で歩行を視聴しながら,画面キャプチャーソフト(カハマルカの瞳)を使ってそれを動画として記録した(IT映像)。最終的に,DV映像は720×514ピクセルで30fpsのMPEG映像,IT映像は648×514ピクセルで10fpsのAVI映像となった。歩行は通常のスピードで2つの歩行路それぞれで1往復させ,危険防止のため理学療法士が必ず横についた。なお,対象者には検診衣を着せ,記録動画には顔にモザイク処理を施し評価者への情報バイアスのマスク化を図った。データ収集期間は2009年6月~7月であった。動画映像についてGARS-Mによる評価を,対象者と面識のない理学療法士3名(A,B,C)によって実施した。データ解析では,総合点の評価者間信頼性を,級内相関係数(ICC)により検討した。また,項目ごとのIT映像とDV映像の一致度を重みづけカッパ係数により検討した。解析ソフトにはSPSS ver. 14.0Jを用い,有意水準は0.05とした。【説明と同意】 本研究計画は所属の倫理審査委員会の承認(#08-19)を得た。対象者に,本研究の意義・方法・不利益等を文書で説明し,文書による同意を得た。【結果】 本対象者に対するDV評価におけるGARS-Mの平均点(標準偏差)は,A,B,C評価者の順に,11.1(4.6),11.0(5.5),12.5(4.4)であり,同様にIT評価では,10.3(3.8),10.1(5.4),11.3(4.3)であった。両評価に統計的な有意差はなかったものの,IT評価の方に異常性が低く評定される傾向にあった。DV評価とIT評価のICC(95%信頼区間)は,A,B,C評価者の順に,0.83(0.67-0.92),0.74(0.51-0.88),0.84(0.68-0.93)であった。項目ごとのカッパ係数は,項目3と4を除けばおおむね0.6以上で高い一致度を示していた。【考察】 ICCは,0.5以下では相関が低く,0.51~0.75が普通,0.76以上が良好と考えられている。今回のデータでは,ゴールドスタンダードであるDV評価に対して,ほぼ良好なIT評価の精度が認められたと評価できる。IT画像のほうに点数が甘くなる傾向の原因は,画像の粗さにあると思われた。この評価に関しては,簡易な遠隔環境下で,日本の高齢者に対して精度の高いものとして使用可能と思われる。下位項目ごとの検討では,特に項目3の「よろめき」は一致度が低かった.これは,米国の先行研究でも信頼性が低いと報告さている項目であるが,転倒予防の観点からははずせない項目で,この評価法の特性として把握しておくべき特徴であろう。【理学療法学研究としての意義】 本邦の情報通信技術の進展は著しく,世界的にみて,もっとも高品質でもっとも安価な通信ネットワークが広く一般に利用可能となっている。我々はその技術を,過疎離島地域などの理学療法サービス提供の不利を打開する手段として利用できないかと考えている。今回の結果より,IT映像の評価でも原法のDV映像の評価と同等な信頼性をもって本尺度を実施できることが示され,本尺度を遠隔理学療法サービスの効果検証に活用可能にしたと考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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