理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
急性期病院からの在宅復帰率向上を目指して
─在宅介護スコアの結果から得た一考察─
飛梅 正義田中 久美子北島 清彰北島 彰子
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p. Ea0371

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抄録
【はじめに、目的】 当院は高知県の中山間部に位置し,地域の中核的医療を担う急性期病院である.当院では急性期病院としての役割を担う一方,入院患者の在宅復帰にも積極的に取り組んでいるが,本人の動作能力や認知能力低下をはじめ,地域特性上,老々介護の割合が高いことや住宅環境の問題等の様々な要因により在宅復帰が困難となる例も少なくない.その事から,入院患者の円滑な在宅復帰に向けて阻害因子の早期発見・対応を実現し,在宅復帰率を向上させていくために在宅介護スコアを導入に至った.今回,得られた結果より,当院における今後の取り組みについて以下に考察する.【方法】 平成23年4月1日~平成23年9月30日のリハ対象患者189名(男性102名・女性87名),平均年齢81.2歳,平均HDS-R14.2点,平均Barthel index48.4点に対して自宅復帰状況と帰結先内訳を調査した.次に,厚生労働省長寿科学研究事業所が開発した在宅介護スコアを用いて評価し,カットオフ値である11点未満の患者を在宅介護群と施設入所群に分類し,項目内容ごとの比較を行い,自宅復帰への阻害因子を調査した.【倫理的配慮、説明と同意】 患者および患者家族に対して在宅介護スコアと調査意図の説明を行い,同意・了承を得た上で評価を実施した.得られた個人情報は電子カルテにて保管し,データー化の際は個人名が特定できない様に配慮すると共に匿名性を尊守し,漏洩・盗難・紛失等が起こらないように厳重に管理した.【結果】 対象患者189名の帰結先内訳は,自宅123名,グループホーム9名,介護老人保健施設33名,介護老人福祉施設14名,転院10名で当院の在宅復帰率は69.8%であった.在宅介護スコアの得点分布をみると,最低点2点,最高点20点で,カットオフ値以上であった113名の在宅復帰率は100%であったが,カットオフ値未満の76名では,在宅復帰率25%,施設介護率75%であった.次にカットオフ値未満の患者76名における在宅介護群と施設介護群の項目別平均点の得点差を比較すると,本人の動作能力0.3点,本人の認知能力1.6点,家族の介護力1.2点,経済及び居住0.4点,医療的処置0.2点といずれの項目も在宅復帰群の得点が施設入所群を上回ったが,特に認知面や介護力に対する項目の点数差が大きいことから,当院ではこれらが自宅復帰への阻害因子として挙げられた.【考察】 在宅介護スコア結果は,カットオフ値11点以上での在宅復帰率100%,10点以下での在宅復帰率25%,施設介護率75%であったが,開発者である宮森らは,値が11点以上であれば在宅復帰の確率が92%,10点以下であれば施設介護の確率が85%の可能性があると述べており,これらのデータ値との比較では良好な成績であった.一方,現在の当院における在宅復帰率は69.8%で,今後も更なる在宅復帰率向上の努力が必要であると考える.今回の結果より9~10点の比較的カットオフ値に近い施設介護群に対して,早期からの阻害因子へのアプローチや介入方法の見直し・ 再検討を行っていれば,在宅復帰の可能性があったことが分かり在宅復帰率の向上に繋がるものと示唆された.当院における入院患者の自宅復帰阻害因子の傾向としては,在宅介護スコアの項目別比較から,認知能力や介護力の低下が挙げられ,特に両者が低い場合には自宅復帰が危惧された.PTとしては機能訓練だけでなく,在宅生活での認知面や介護力に対する問題に対して在宅復帰を調整する能力の強化が必要だと考える.今後の展望として,在宅介護スコアは得点だけでなく,早期から項目別に結果を細分化し,個々の患者が抱える問題点に対して家族への動作介助指導や退院前自宅訪問・カンファレンスに介入すると共に院内における情報の共有と統一した目標設定を行い,地域の医療・福祉サービスと連携を図ることで円滑な在宅復帰に向けた体制作りを強化していきたいと考える. 【理学療法学研究としての意義】 当院は,急性期病院からの在宅復帰実現に対して積極的に努めている.今回の研究で,在宅復帰に対する問題点を抽出する評価として在宅介護スコアが導入されたことにより,当院における在宅復帰の現状と阻害因子の傾向を把握することが出来た.今後,在宅復帰の可否に対する指標として活用するだけでなく,在宅介護スコアを項目別に細分化し,阻害因子の早期発見・対応を行うことで,短い在院日数の中でも円滑な在宅復帰支援を実現し,在宅復帰率の向上に繋げていきたいと考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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