理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
我々が開発した座位有酸素運動プログラムの換気指標における特徴
弓田 真梨子山原 純久川 舞伊藤 健一
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p. Ea0953

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抄録
【はじめに,目的】 我が国では生活習慣病の割合が増加しており,その共通背景にメタボリックシンドロームがある.今日,食事療法・運動療法を中心としたメタボリックシンドロームの治療・予防が広く行われている.我々は肥満により発症率が増加する変形性膝関節症 (膝OA)に着目した.膝OAの罹患者の多くは疼痛のために運動習慣が得られにくいため,膝関節疼痛に特に配慮した座位有酸素運動プログラムを開発した.プログラムはセクションA (下肢主体),セクションB (体幹主体),セクションC (肩甲帯主体),セクションD (A~Cの複合運動)で構成し,膝関節の負担を抑えるため膝関節屈伸を最小限に留めている.これまでに80 beat/min.(bpm),160 bpmの異なる運動テンポで運動強度の検証を行い,%最高酸素摂取量 (%VO2peak)の平均値は80 bpm: 19.4 %,160 bpm: 27.8 %であった.また,心拍数の平均値は80 bpm: 90.7 回/分,160 bpm: 112.1 回/分であった. これまではプログラム全体の平均値に着目してきたが,今回,各セクションの換気指標に着目し,各セクションの換気指標の変化や動作に応じた特徴を明らかにすることを目的に検証を行った.【方法】 対象は運動器,呼吸器,循環器系に障害のない健常女子大学生20 名である.これらを運動テンポ80 bpm群と160 bpm群の2 群に無作為に割り付け,それぞれに心肺運動負荷試験 (CPX)と割り付けられた運動テンポで運動プログラムを実施した.運動プロトコルはrest,warm-up,運動プログラム (3 セット),cool-downとした. 測定項目は最高酸素摂取量 (VO2peak),酸素摂取量 (VO2),一回換気量 (TV),呼吸商 (R)とした.使用データは各セクション運動プログラム中2,3 セット目の値とした.統計処理は被験者の身体的特徴には対応のないt検定を,セクション間の比較には反復測定による分散分析を行った.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は大阪府立大学倫理審査委員会に申請し承認を得た.(承認番号2011P11)また,対象者には研究の主旨と方法,危険性の有無について十分に説明したうえで,書面による参加同意を得た. 【結果】 被験者の身体的特徴について,年齢にのみ有意差を認めた.VO2について,80 bpm群ではセクションAがセクションB,Cに対し有意に高値を示した(A: 478.5 ml/min., B: 425.9 ml/min., C: 407.9 ml/min., p<0.001).160 bpm群はセクションCがセクションA,Bに対し有意に低値を示した(A: 644.4 ml/min., B: 633.5 ml/min., C: 530.2 ml/min., p<0.001). TVは80 bpm群 (A: 684.1 ml, B: 632.1 ml, C: 573.0 ml),160 bpm群 (A: 716.7 ml, B: 676.8 ml, C: 655.61 ml)ともセクションAがセクションB,Cに対して有意に高値を示した (p=0.003, p=0.014).Rは80 bpm群ではセクションAがセクションB,Cに対し有意に低値を示した (A: 0.89, B: 0.94, C: 0.93, p=0.001) .160 bpm群ではセクションAはセクションCにのみ有意に低値を示した (A: 0.97, B: 0.99, C: 1.01, p=0.023) .【考察】 換気指標は80 bpm群,160 bpm群ともVO2,TVでセクションAが他のセクションより高値を示した. セクションAは下肢が主体であり,他のセクションより体幹の運動が少ない.運動中は酸素需要の増加に応じて呼吸が促進されるが,体幹の運動を多く含むセクションB,セクションCでは胸郭運動が制限されるため換気量が少なく,VO2,TVはセクションAが高値を示したと考えられる.  また,下肢には筋断面積の大きい筋が多く存在するため酸素需要が増加しやすい.下肢主体の運動であるエルゴメータと全身運動であるトレッドミルでVO2を比較すると,エルゴメータで高値を示すとする先行研究がある.以上より,セクションAは下肢を主体とした運動であることから酸素需要が増加しやすく,他のセクションより体幹の運動が少なく換気量が制限されにくいため,VO2,TVで高値を示したと考えられる.また,RがセクションAで他のセクションより低値を示したことも,同様にセクションAで得られるVO2が高いことが影響していると考えられる.【理学療法研究としての意義】 本研究により,座位の運動において運動部位や体幹の使用量の違いがVO2や換気量に及ぼす影響が明らかになった.換気能力が低下している高齢者や筋による脂質代謝を多く得ることを目的とする肥満者では,下肢運動を多く取り入れるべきと考える.また,動作と呼吸を同期させることで換気量への影響は最小限に留めることができると考えられる. 以上の知見は,本運動プログラムのみならず座位の運動を処方する際の1つの指標となる可能性が示唆された.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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