抄録
【はじめに】 近年の在宅医療推進の施策やDPC(診断群分類別包括制度)の導入による入院期間の短縮化などにより、次の移行先(回復期リハビリテーション病院、介護老人保健・福祉施設、在宅など)を早期に対応しなければならない状況にある。その中で早期退院の患者が増えている一方で在宅のリハビリテーション(以下:リハビリ)資源が少ないことが今日指摘されており、訪問リハビリの供給体制の見直しや普及が求められている。当院の位置する東京都北区でも病院退院後のリハビリを受けられる事業所は、通所リハビリ6か所、訪問リハビリ4か所と少ない状況である。これに対して当地区の高齢化率(65歳以上)は東京23区内で27%と最も高く、中でも当院の隣接地区は50%を超えている。また65歳以上の独居率は34%、二人暮らしは16%となっており、介護力不足の原因となっている。このような地域特性と病院全体の平均在院日数10.5日、リハビリ介入患者の在宅復帰率71.4%の急性期病院である当院の現状から、当院では退院後3ヶ月間を目途にした短期集中回復期型の訪問リハビリを提供している。今回、退院直後から積極的に訪問リハビリが介入することでどのような効果が得られたか検討した。【方法】 介入方法として、退院後の3カ月程度、週2~3回介入し身体機能の向上や日常生活動作の改善を図った。またPT、OTの両療法士が関わるようにし、異なる職種の視点からのアプローチにより住居環境調整やご家族への介助指導等を行った。2010年11月~2011年10月の一年間で、新規に訪問リハビリを介入した21名の開始時と終了時のBarthel Index(以下:BI)を点数化し、その経過と介入期間を訪問リハビリカルテより後方視的に調査を行った。【倫理的配慮】 本調査にあたり、東京北社会保険病院の生命倫理委員会の承認を得た。また、個人が特定されないよう個人情報の保護に配慮し実施した。【結果】 BIの経過(訪問リハビリ開始時→終了時)、介入期間、人数全体(その他を除外) 58.7点→70.1点 2.8か月 18名整形外科疾患 53.7点→65.6点 2.6か月 8名脳血管疾患 63.7点→78.7点 3.2か月 4名廃用症候群 49.1点→58.3点 2.9か月 6名その他(入院・死亡) 3名【考察】 訪問リハビリが介入することで全てにおいてBIは改善した。訪問リハビリを実際に必要とされている方は、回復期リハビリ病院の対象から除外される傾向にある、不穏状態や認知症の方、既往歴などでクリティカルパスから逸脱した方。また転院・転所待ちで一時的に在宅に戻る方など特徴的な対象者が多い。その多くは身体機能の向上途中で在宅退院した方であり、退院早期に集中的に訪問リハビリが介入することで効果的にBIは改善したものと思われた。リハビリの介入量としては回復期リハビリ病院には劣るが、利用者・ご家族を含め、ケアマネージャー・介護ヘルパー・他のサービス関係者等で、身体機能の向上を意識した関わりや住居環境調整を行うことにより、チームアプローチとして補えたこともBIの改善につながったものと思われた。退院後の在宅生活支援にリハビリスタッフが直後より介入することは、短い期間で身体機能が改善するとともに、少ない介護力を補うことにつながる。当院で取り組んでいる回復期型訪問リハビリテーションは、利用者やご家族が安全で安心な在宅生活を送ることに有効であると思われる。【理学療法学研究としての意義】 急性期病院の早期退院患者に、退院直後から集中的に回復期型の訪問リハビリを介入することにより、身体機能の改善が得られ、廃用症候群などによる入院の予防にもつながる。より早期から元の生活に近づける在宅復帰推進に向けた有効な選択肢の一つになると思われる。