抄録
【はじめに、目的】 小児の発達障害の臨床において,子どもの障害による行動特徴や気質を理解することは適切な対応や両親への生活でのアドバイスをしていくうえで非常に重要となる.Child Behavior Checklist(CBCL)は子どもの行動特徴や問題を把握するための評価であり,欧米では広く用いられている.本邦でもCBCL日本語版が作成され,健常児や被虐待児,広汎性発達障害児などに適用されている.しかしこれまで欧米を含めて知的障害児や脳性麻痺児については調べられてはいない.今回,臨床的に独特な行動特徴をもつと思われる脳室周囲白質軟化症と診断された児と知的障害をもつ児の行動特徴を調べるため,CBCLを用いて行動を評価し健常児との比較を行ったので報告する.【方法】 対象はMRI画像にて脳室周囲白質軟化症と診断された児11名(以下PVL群:平均年齢63.6±26.5ヶ月),知的障害児11名(以下MR群:平均年齢54.4±21.9ヶ月),2~3歳の健常児12名(以下Normal群:平均年齢31.6±5.3ヶ月)であった.そのうち自力歩行が可能な児の割合はPVL群,MR群ともに11名中7名であった.CBCLは対象年齢に応じてCBCL/2-3とCBCL/4-18が作成されているが,質問項目が対象児の発達レベルに合っているCBCL/2-3を用いた.CBCL/2-3は8つの行動尺度からなり,上位尺度として内向尺度(依存分離尺度,引きこもり尺度,不安神経質尺度の合計)と外向尺度(攻撃尺度,注意集中尺度,反抗尺度の合計)が設けられている.評価は母親に回答してもらい,自由記述の項目100を除いた99項目を分析の対象とした.そして3群間の各下位尺度と上位尺度の平均得点の比較を行った.また行動特徴を把握するため内向尺度と外向尺度の平均得点の差を算出し比較した.統計は3群間の比較に一元配置分散分析を,多重比較にはTukey法を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究にあたり対象児の母親に口頭にて説明を行い,同意を得てから評価を実施した.【結果】 多重比較の結果,Normal群との比較では,PVL群が依存分離(p<0.05),発達(p<0.001)の各尺度において有意に得点が高かった.またMR群はNormal群に比べて引きこもり(p<0.05),発達(p<0.001),攻撃(p<0.01)注意集中(p<0.001)の各尺度,そして上位尺度である内向(p<0.05),外向(p<0.05)尺度において有意に得点が高かった.次にPVL群とMR群の比較では,発達(p<0.001),攻撃尺度(p<0.01)において有意にMR群の得点が高かった.さらにPVL児の特徴として,内向尺度が外向尺度よりも有意に高い傾向が認められた(p<0.001).さらに内向尺度の得点が歩行能力と関係しているかどうかを調べるため,PVL群とMR群を合わせた計22名を歩行可能群と歩行不能群の2群に分けて比較したところ,すべての尺度において歩行の可否による有意差は認められなかった.【考察】 PVL群はNormal群と比較して依存分離,不安神経質など内向尺度を構成する尺度において得点が高い一方,外向尺度を構成する尺度においてはNormal群と同程度であることがわかった.またMR群は内向,外向いずれの尺度においてもNormal群よりも高く,そのため全体的に得点が高くなる傾向があった.そのなかでも特に攻撃,注意集中尺度でNormal群,PVL群と比較して問題が多いことが示唆された.CBCLは母親の主観により評価されるため,母親自身が自分の子どもに対して問題視しているほどCBCLの得点は高くなるという特徴がある.そのため各群の得点を単純に比較することはできないが,PVL児は他者に依存する傾向があり,MR児は自分から外部に働きかけていく能力の欠如から引きこもりや攻撃的,注意散漫な状態となっている可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】 本研究はこれまで問題視されることが少なかった発達障害児の行動特徴を調査したものであり,子どもの性格や特徴を理解し,それに合わせた対応をしていくために有用な情報を与えるものと考える.