理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
高齢者における転倒評価
─TEN STEP TESTと最大歩行速度を用いて─
長友 渉郡 一覚新納 千穂上谷 友子坂下 絵美畦地 一郎迫田 勇一郎日吉 眞理子岡原 一徳
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p. Eb0614

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抄録
【はじめに、目的】 高齢者の転倒予測には筋力や平衡性、歩行能力等が着目されることがあり、それらは過去の先行研究でも数多く報告されている。しかし、転倒が発生する原因としては個人の歩様や歩行速度だけではなく、歩行中突然出現する障害物や、不安定な足場や段差を移動する際に発生することがあり、筋力や平衡性のみならず、反応の速度や素早い筋収縮などの敏捷性要素が転倒の有無を左右するのではないかと考えられる。また、身体組織(体脂肪率)、筋力、柔軟性、全身持久力、平衡性以外にも、活動的な生活として敏捷性評価の必要性を稲垣らは報告している。敏捷性評価としては宮本らが開発したTEN STEP TEST(以下、TST)がある。しかしTSTは簡便性と高い再現性が報告されているものの、転倒評価としてこれまで先行研究で用いられた報告は少ない。今回はTSTと最大歩行速度をそれぞれ実施し、転倒評価として有用であるかを検討したので報告する。【方法】 当院に入院または外来通院している患者29名(男性7名、女性22名、平均年齢75±13.8歳)を対象とした。なお、認知機能の低下によりテスト内容の理解が困難と思われる患者、テストを行うことで疼痛が誘発される患者、著しい関節可動域の低下によりテスト動作が困難と思われる患者は除外とした。今回の転倒の定義については、Gibsonの「本人の意思からではなく、地面またはより低い面に身体が倒れること」とし、転倒により受傷したか否かは含まないこととした。対象から過去1年以内の転倒の有無を調査し、転倒経験のある者(以下、転倒群)と転倒経験のない者(以下、非転倒群)に分類した。TSTについては、開始合図と共に10cm高の台上に一側足部を交互に上げ下ろし、連続10回(左右5回)の所用時間を測定したものである。開始位置統一の為にスタート時は両足先を台に接地し、安定性統一の為に平行棒内手すり把持にて実施、連続3回行い最小値を採用した。最大歩行速度は16m屋内平地直線路(前後3mずつ助走路)を最大限の速度で歩行していただき、中間の10mに要した時間をストップウォッチで測定した。統計処理として、転倒群と非転倒群のTSTと最大歩行速度を、Mann-Whitney’sU検定を用いて群間比較した。また、Spearmanの順位相関関係を用いてTSTと最大歩行速度の測定値間の相関について検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 研究開始に先立ち、当院の倫理審査会にて研究計画の承認を得た。また、全被験者に対して本研究の目的や方法などに関する説明を十分に行い、同意を得た後に臨床研究を実施した。【結果】 29名の高齢患者のうち転倒群は12名、非転倒群は17名であった。TSTでは転倒群(12.5±2.6秒)、非転倒群(9.3±2.2秒)となり有意差が認められた(p<0.01)。最大歩行速度では転倒群(16.2±9)、非転倒群(10.3±3.9)となり有意差が認められた(p<0.05)。また、TSTと最大歩行速度では有意な相関関係(p<0.01)が認められた。【考察】 上記結果よりTSTと最大歩行速度はそれぞれが転倒評価として有用となることが示唆されたものの、両テストの統計結果を比較するとTSTの方が特に有意差が認められた。TSTは1.判断時間の短さ2.反応の素早さ3.素早い筋収縮速度4.動作方向の正確性5.屈曲筋と伸展筋の運動変換6.左右下肢交互の運動変換が結果に作用されことにより、転倒回避に反映する因子が多数含まれているのではないかと考える。また、TSTは骨盤上での大腿骨の屈曲挙上運動を起こす動作を含む為、腸腰筋が特に強い屈曲筋として機能していると考える。その為、腸腰筋は歩行速度に重要な役割を担っていることから、TSTと最大歩行速度において有意な相関関係が得られたのではないかと考える。本研究ではTSTと最大歩行速度は単独でも転倒評価として有用となりえることが示唆されたが、それぞれの測定値を併用して考察することで、より有用な転倒評価となりえるのではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究で用いたTSTと最大歩行速度は、特別な機器を必要としないことが特徴であり、臨床でも幅広く活用できる。また、TSTと最大歩行速度には相関関係が認められた。本研究の結果から、TSTは新たな転倒評価として活用できる可能性があることに意義がある。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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