理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
地域在宅高齢者の転倒予防教室で用いる評価項目の有用性
松田 憲亮中原 雅美永井 良治金子 秀雄伊藤 憲一木原 太史
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p. Eb0615

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抄録
【目的】 県士会の地区啓発事業の一環として転倒予防教室を実施している.従来,運動機能評価としてFunctional Reach Test(FRT),10m歩行速度,Timed up and go test(TUG),片脚立位時間等があり,転倒に対するスクリーニングとして使用されているが十分機能しているとは考えにくい.本研究では高齢者の転倒スクリーニングとして,従来の運動機能評価に加え,歩行周期変動率,転倒恐怖感,環境的因子に対する評価を実施し,転倒との関連性について検討する事を目的とした.【方法】 対象は転倒予防教室に参加した地域在住特定高齢者のうち,本研究に参加を同意した女性28名(平均年齢73.9±8.9歳)とした.運動機能評価は握力,FRT,長座位体前屈,片脚立位時間(開眼,閉眼),10m歩行速度(快適,最大),TUG,歩行周期変動率,歩行中の重心動揺,生活空間の評価としてLife space assesment(LSA)スコア,精神面の評価として転倒恐怖感を調査した.歩行周期変動率および歩行中の重心動揺の測定は,第3腰椎棘突起に加速度計(MA3-04AC;マイクロストーン社製)を装着し行った.対象者は約16mの直進路で快適歩行を2回実施し,その後歩行中の加速度データから1歩行周期時間を抽出した.連続する1歩行周期時間から変動係数を算出し,歩行周期変動率とした.歩行中の重心動揺については10m歩行中の加速度データから5歩行周期分のデータを抽出し,Root Mean Square(RMS)算出,歩行中の重心動揺の指標とした.RMSは歩行速度の2乗で除すことで正規化した.統計処理についてはSPSS15.0Jを用い,各項目での転倒群と非転倒群の比較には対応のないt検定を用いた(p<0.05).また転倒と評価項目との関連性については,ステップワイズ重回帰分析を用いて検討した.【倫理的配慮、説明と同意】 対象には本研究の内容を十分に説明し紙面にて同意を得た.尚,本研究は当大学の倫理委員会の承認(10-42)を得て実施した.【結果】 過去一年間の転倒歴調査から,転倒歴のある対象者は11名であり,転倒群とした.年齢については転倒群75.5±7.9歳,非転倒群75.4±9.9歳であり,有意な差は認めなかった.両群間のt検定の結果,10m最大歩行速度,歩行周期変動率,歩行中の前後RMS,LSAスコアの項目で有意な差が認められた(p<0.05).ステップワイズ重回帰分析の結果,転倒との関連性が高い評価項目は,歩行周期変動率,LSAスコア,開眼片脚立位時間であった.この際,重相関係数Rは0.64,決定係数R2は0.41と小さく予測精度としては低かった.【考察】 転倒群と非転倒群の比較では,10m最大歩行スピード,歩行周期変動率,歩行中の前後RMS,LSAスコアの項目で有意な差が認められた.本研究では対象者が少なく,従来の転倒指標であるFRTやTUGなどの評価項目で有意な差が認められかった可能性があり,対象者を増やして再度検討したいと考えている。ステップワイズ重回帰分析の結果から,転倒に対する予測精度は低いものの,地域在住高齢者の転倒に関する評価項目として歩行周期変動率,LSAスコアを用いる事は有用であることが示唆される.先行研究において歩行周期変動率と転倒経験との関連性は報告されており,測定方法が簡便である事も重要であると考える.また転倒群ではLSAスコアとTUGの結果から活動狭小型と判断され,運動機能は比較的高いが,生活に対する介入の必要性があることが示唆される.地域在住高齢者の転倒スクリーニングとして,評価項目の選択と環境因子を含めた多面的な評価の必要性が考えられる.【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果,地域在住高齢者の転倒スクリーニングとして,歩行変動率,LSAスコアの有用性が確認され,転倒に対する評価項目の考慮や多面的な予防介入の指標として期待される.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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