理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
通所リハ要介護者に対するBerg Balance Scaleを用いた転倒リスクの判別の検討
森田 郁美森本 宙中祖 直之原田 和宏松浦 晃宏
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p. Eb0625

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抄録
【はじめに、目的】 通所リハビリテーション(以下,通所リハ)を利用する要介護者は,身体機能の程度が低くても介護者の状況などにより自宅での歩行を自力で行う場合も少なくない。その場合の転倒は,身体機能的な原因に加えて環境要因なども影響し,安全な環境下で生活する入所者よりも,場合によっては転倒リスクが高くなると考えられ、転倒リスクを把握し,転倒予防に対する早期からの対応が必要となる。また自宅や屋外移動における歩行自立の時期を理学療法士が判定することもしばしばあるが,その判断に迷うことは多い。これまでもバランス能力,転倒予測尺度としてTimed up & go test (以下,TUG)や10m歩行時間,Berg Balance Scale(以下,BBS)等を歩行判定の一助とする検討は数多く行われている。しかしそれらの研究は地域高齢者や入院,入所者を対象として行われてきており,通所リハを対象とした研究は少ない。そこで今回,通所リハ要介護者を対象として転倒ハイリスク者の運動機能評価にどのような差があるかを確認し,特にBBSに関しては,そのcut-off値を求めることにより,通所リハにおける転倒リスク判別の指標となりうるかを検討する。【方法】 対象は2箇所の通所リハにおける歩行可能な要介護者59名のうち,MMSE16点以上で自宅での歩行を自力で行っている者35名とした。対象者の過去1年間(H22.7~H23.7)の転倒歴についてアンケート調査を行い,その結果から転倒ハイリスク群,転倒ローリスク群の2群に分類した。なお転倒ハイリスク群の基準は,過去1年間において2回以上の転倒経験がある者とした。またBBS,TUG,10m歩行時間の運動機能評価を行い,それぞれの群における差を対応のないt検定により比較した。有意水準は5%未満とした。また各群におけるBBS得点から,Receiver-Operating-Characteristic曲線(以下,ROC曲線)を用いて,転倒リスク判別値となるcut-off値を算出した。【倫理的配慮、説明と同意】 倫理的配慮として,所属機関の倫理委員会にて承認を受け,また倫理委員会を設置していない施設においては施設長の許可を受けて実施した。研究にあたっては対象者に十分な説明を行った後,書面にて研究協力に対する同意を得て実施した。【結果】 転倒ハイリスク群と転倒ローリスク群におけるBBSは,それぞれ30.7±13.4点,45.3±6.6点と,転倒ローリスク群は転倒ハイリスク群と比較して有意に高い値を示した(p<0.01)。TUG,10m歩行時間においては,有意差は認められなかった(TUG:転倒ハイリスク群60.1±97.2秒,転倒ローリスク群19.5±10.0秒, p=0.09,10m歩行時間:転倒ハイリスク群53.4±80.2秒, 転倒ローリスク群18.4±8.1秒, p=0.06)。ROC曲線では,転倒ハイリスク群を最も効率よく判別するBBSのcut-off値は42.5点であり(感度75.0%,特異度80.0%),曲線下領域は83.7%で中程度の判別能であった。【考察】 転倒の関連要因としてTUGや10m歩行時間をその一つとする報告が多くあるが,今回はその傾向を示すものの転倒ハイリスク群と転倒ローリスク群における有意差は認められなかった。その要因として転倒ハイリスク群における各項目の分散が,通所リハ要介護者の身体状況の多様さを表し,TUGや10m歩行時間では,通所リハ要介護者の転倒リスクについて十分には評価できない可能性を示していると考える。一方でBBSは明らかな差を認め,BBSが総合的なバランス能力評価法であることに加え,日常生活動作の関連項目を含むことから,在宅生活者である通所リハ要介護者における転倒リスクを把握する指標となりうることが示された。また身体状況が多様であるにもかかわらず,ROC曲線の結果でも,中程度の転倒ハイリスク群判別能を示している。ROC曲線におけるcut-off値は42.5点であり,過去の研究における地域高齢者のcut-off値よりも大きく下回る結果であった。要介護である対象の身体機能要因として,転倒リスクが高まるものと考えられた。また療養病棟入院患者を対象とした別の研究とはほぼ同値を示し,身体機能は入院患者よりも軽度と考えられる通所リハ要介護者であっても,在宅における環境的要因により転倒リスクが増すものと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 通所リハを利用する要介護者は,自宅においては歩行を自力で行う場合も少なくない。本研究ではこのような対象者の運動機能評価としてBBSを用いて転倒リスクを判別することの有用性と,その目安を示すことができた。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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