理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
施設入所高齢者における転倒と安定した支持面および不安定な支持面での姿勢制御能力との関連
島 浩人池添 冬芽高畑 亜季子
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キーワード: 高齢者, 転倒, 姿勢制御能
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p. Eb0628

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抄録
【はじめに、目的】 加齢に伴う姿勢制御能力の低下は高齢者の転倒を引き起こす重要な要因であることが知られている。我々は高齢者の転倒に関連する姿勢制御能力について、静止立位での重心動揺面積は転倒と関連がみられないが、Functional Reach Testや立位でのステッピング能力のような動的な姿勢制御能力は関連がみられることを報告してきた。このように転倒と姿勢制御能力との関連については、安定した支持面上での姿勢制御能力を分析した報告は多いが、不安定な支持面上での姿勢制御能力を分析した報告は少ない。不安定な支持面上での姿勢制御能力も、屋外での不整地歩行といった場面において求められる重要な要因であると考えられる。そこで本研究は高齢者の不安定な支持面での姿勢制御能力に着目し、安定した支持面と不安定な支持面での姿勢制御能力と転倒との関連について明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は養護老人ホームに入所している高齢者19名(男性3名、女性16名、平均年齢83.7±7.0歳)とした。姿勢制御能力の測定に大きな影響を及ぼすほどの重度の神経学的障害や筋骨格系障害および認知障害を有する者は対象から除外した。姿勢制御能力の評価として床上での安定した支持面(安定面)と厚さ10cmのバランスマット上での不安定な支持面(不安定面)上の条件でそれぞれ片脚立位保持時間、Functional Reach(FR)、Latelal Reach(LR)、ステッピングテストを実施した。片脚立位保持時間は開眼にて120秒を上限として2回測定し、その最大値をデータとして用いた。FRは開脚立位で利き手側上肢を肩関節90°屈曲し、そこから上肢をそのまま水平に最大限前方に突出させることのできる距離を測定した。LRは開脚立位で肩関節90°外転し、そこから上肢をそのまま水平に最大限側方に突出させることのできる距離を測定した。ステッピングテストは立位にて5秒間でできるだけ速く左右交互の足踏みをさせたときのステッピング回数を測定した。対象者の過去1年間の転倒経験の有無について調査し、転倒歴のないものを非転倒群、転倒歴のあるものを転倒群に分類した。統計学的検定として、Mann-Whitney検定を用いて2群間の各測定項目を比較検討した。さらに転倒の有無を従属変数、各測定項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 すべての対象者に本研究の十分な説明を行い、同意を得た。【結果】 非転倒群は10名、転倒群は9名であり、2群間に年齢、身長、体重、BMIの有意な差はみられなかった。片脚立位保持時間は非転倒群が安定面16.0±19.9秒、不安定面3.3±4.3秒であり、転倒群が安定面1.5±2.2秒、不安定面では全員が0秒(不可能)であり、安定面、不安定面ともに非転倒群は転倒群よりも有意に高い値を示した。FRは非転倒群が安定面25.7±6.1cm、不安定面26.8±6.6cmであり、転倒群が安定面19.7±7.5cm、不安定面15.0±10.5cmであり、安定面、不安定面ともに非転倒群は転倒群よりも有意に高い値を示した。LRは非転倒群が安定面23.3±7.2cm、不安定面21.4±7.1cmであり、転倒群が安定面16.7±8.3cm、不安定面9.9±8.7cmであり、安定面では2群間に有意差が認められなかったが、不安定面では非転倒群は転倒群よりも有意に高い値を示した。ステッピングテストについては非転倒群が安定面24.3±11.0回、不安定面14.1±8.6回であり、転倒群が安定面14.7±7.8回、不安定面5.2±5.1回であり、安定面、不安定面ともに非転倒群は転倒群よりも有意に高い値を示した。また、ロジスティック回帰分析の結果、安定した支持面および不安定な支持面での姿勢制御能力項目のなかで不安定面でのFRおよび不安定面でのLRのみが転倒と関連する因子として抽出した。【考察】 施設入所高齢者における転倒と安定した支持面と不安定な支持面での姿勢制御能力との関連についてロジスティック回帰分析を用いて分析した結果、不安定面でのFRおよびLRのみ転倒に関連する要因として抽出された。このことから、安定した支持面での姿勢制御能力よりも不安定な支持面での姿勢制御能力、特に前後左右の重心移動能力が施設入所高齢者の転倒との関連が強いことが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 日常生活活動においては、不安定な支持面での姿勢制御能力も求められる。本研究の結果、施設入所高齢者の転倒予防のためには不安定な支持面での重心移動能力にも着目して、評価・介入していくことが重要であると考えられた。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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