理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
看護師が抱える問題点と理学療法士に期待される関わり
─転倒・転落予防についての検討─
石田 麗子田中 康之
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p. Eb0627

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抄録
【はじめに、目的】 転倒・転落予防に関して、看護師が日常業務で直面している問題点と理学療法士等のリハビリ専門職(以下、PT等と略す)へ期待する関りについて調査を行い、看護師とPT等の転倒・転落予防に関する協働について検討することを目的とした。【方法】 2011年8月に千葉県看護協会が主催する転倒・転落予防講習会に参加した千葉県内の病院・施設(86施設)に勤務する看護師124名を対象に行った。調査票を配布し「転倒・転落予防について日常業務で困っている点、上位3つ」と「転倒・転落予防についてPT等の関りを期待する点、上位3つ」を選択方式で行った。選択項目は、2010年度に行われた同研修会の参加者を対象に行った質的調査の結果から抽出されたカテゴリーを基に16項目を作成した。尚、この質的調査の内容については第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会で報告した。【倫理的配慮、説明と同意】 調査票の利用目的及び分析等について説明し、了承を得た場合のみ実施した。また個人が特定されないようデータを分析することで倫理的配慮を行った。【結果】 調査票は121名から回収され(回収率97.6%)その内訳は男性5名(4.1%)、女性116名(95.9%)。平均勤務年数11.2±8.05年、平均年齢34.9±9.09歳であった。設問毎の回答総数を基に割合を算出し、クロス集計を行った。「転倒・転落予防について日常業務で困っている点」に関して121名から回答を得た。内訳はリハビリテーション病棟・病院勤務経験無し(以下、リハ勤務経験無群と略す)81名(66.9%) とリハビリテーション病棟・病院の勤務経験有り(以下、リハ勤務経験有群と略す)40名(33.1%)であった。最も多かった項目は「認知症など精神疾患の患者」64名(52.9%)であり、次いで「患者自身の転倒に対する認識について(自分は大丈夫と誤解している)」46名(38.0%)であった。3番目に多かった項目は「患者と看護師の転倒に対する認識の差」と「具体的な対応策」37名(30.6%)であり、これらは両群共同じ多数順であった。「転倒・転落予防についてPT等に期待する点」に関して115名から回答を得た。内訳はリハ勤務経験無群79名(68.7%)、リハ勤務経験有群36名(31.3%)であった。最も多かった項目は、両群共「介助方法」となり、リハ勤務経験無群48名(41.7%)、リハ勤務経験有群21名(18.3%)であった。リハ勤務経験無群において次に多かった項目は「具体的な対応策」31名(27.0%)であり、次いで「自立の基準」27名(23.5%)であった。リハ勤務経験有群において2番目に多かった項目は「自立の基準」15名(13.0%)であり、次に「患者のアセスメント方法」「スタッフ間での転倒予防対策の共有(認識の差)」13名(11.3%)であった。【考察】 看護師が最も転倒・転落予防に関して日常業務で困っている点は、認知症などの精神疾患患者への対応や患が転倒・転落予防についての認識や協力を得ることであった。一方、看護師がPT等に期待する転倒・転落予防の関わりは、介助方法や自立の基準、個々の患者への具体的な対応策であり、看護師の抱える問題点とPT等に期待する点に相違があった。その要因として、PT等は患者の身体機能や動作パターンを評価・分析し、介助方法や自立の検討をする能力は看護師に周知されているが、認知症などの精神疾患患者の対応や、患者に対して転倒予防指導ができるという認識は、看護師に周知されていない現状があると思われる。その為、PT等は看護師に対して、認知症などの精神疾患患者の対応や患者に向けた転倒予防指導などの職能の認識向上を図ると共に、介助指導や身体機能評価について、より積極的に看護師や患者と関わっていくことが看護師とPT等の重要な協働であると思われる。また、リハ勤務経験無群とリハ勤務経験有群では、PT等に期待する点が異なる傾向が見られた。その為、看護師の経験によって異なる対応も把握する必要もあると思われる。都築ら(2010)は、過去の諸家らの報告を踏まえ、急性期・回復期・老人保健施設などの施設により転倒要因は大きく異なるため、各施設に応じた転倒予防対策が必要であると報告している。しかし今回の調査の結果では、リハ勤務経験有無の両群の看護師共、認知症や精神疾患患者の対応や患者から転倒予防の協力を得られない点に困っている事が示された。これらから、PT等の職能の認識の向上を図ることで、看護師の抱える問題点を共有かつ解決し、PT等に期待されている対応を把握することが、転倒要因を軽減させる1つになると思われる。【理学療法学研究としての意義】 看護師の抱える問題点とPT等に期待されている関わりを把握することで、看護師とPT等の協働が具体化され、効率的な対応策の検討が可能になると思われる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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