理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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プラスチック製短下肢装具使用者における使用満足度とその影響要因
高橋 悠山路 雄彦七五三木 好晴中島 明子
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p. Eb0637

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抄録
【はじめに、目的】 現在、義肢に対する満足度調査は多く報告されているものの、装具に対する報告は少ない。そのため、今回医療者としての立場からだけでなく、使用者側からの視点も活用したアンケート用紙を作成し、使用満足度の向上の手がかりを得ることを目的に、プラスチック製短下肢装具の使用満足度を調査し、その影響要因を検討した。 【方法】 対象者は、リハビリテーションを受けているプラスチック製短下肢装具使用者22名(脳血管障害18名、脊椎疾患2名、末梢神経障害2名)。男性8名(69.9±10.3歳)、女性14名(63.8±14.0歳)で、平均装具使用年数は5.09±5.75年(2ヶ月~28年)であった。方法は群馬県内の2病院の協力を得て、病院を訪問し、自作のアンケート用紙を用いて、対象者との対面調査を行った。アンケート項目は装具の色や形、重量、強度、歩きやすさ、歩容、段差の昇降のしやすさ、つまずきやすさ、着脱のしやすさ、服装の選択制限、足部の通気性など21項目に設定した。転倒歴、外出の制限、靴との擦れる音の有無の3項目を2択の質問(Yes、No)、「日常生活における装具の重要度」と「装具全体の満足度」の2項目をVisual analogue scaleで評価した。その他の16項目については、満足度を5段階評価で点数に換算し、評価した。その他、「不満な点」については本人からの自由回答とした。得られた回答から、対象者の情報と各項目との満足度の違いを比較した。統計学的分析には、Mann-WhitneyのU検定、Spearmanの相関係数を用い、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の研究にあたり、患者様にはその旨を十分に説明し、同意を得ている。【結果】 プラスチック製短下肢装具使用者22名のうち、ロングタイプの固定型後面支柱が8名(36%)、ロングタイプのjoint付きが3名(14%)、ショートタイプの可撓型後面支柱が11名(50%)であった。年齢や装具使用年数、装具の使用目的の違いで各質問項目における満足度に有意な差が認められなかったものの、男女別の「服装の選択」では満足度に有意な差が認められ、男性の中央値は4(最小値:1、最大値:5)、女性の中央値は2(最小値:1、最大値:5)となり、女性の方の満足度が有意に低かった。「装具全体の満足度」と有意な相関が認められたのは、「装具の形」の満足度(r=0.504)、「装具の履きやすさ」の満足度(r=0.431)の2項目のみであった。「段差の昇降のしやすさ」と各質問の満足度(歩きやすさ、歩容、つまずきやすさ、履き心地、装具の重量感など)との間で、中等度から高い有意な相関がみられることが多かった。22名中8名(36%)の装具使用者から、装具購入段階での装具の比較や装具の制度・靴の購入に対する情報提供不足への不満の訴えがあった。また、22名中6名(27%)の使用者から、足部の通しづらさやマジックテープ・ベルトに関する不満の訴えがあった。【考察】 男女別の「服装の選択」の満足度では有意に差が認められ、女性の方が低かった。医療者は装具装着時における装具使用者のファッション性へも考慮し、装具の提供をする必要があることが示唆された。「装具の履きやすさ」は、「装具全体の満足度」との有意な相関が見られたことから、装具使用者にとって、装具の着脱時、特に履きやすさを重視している可能性が示唆された。また、「装具の形」では、装具が小さく、長さも短い方が、「装具全体の満足度」が高かった傾向が見られた。「段差の昇降のしやすさ」は下肢の残存機能、特に下肢の挙上のしやすさと関連しており、歩きやすさ、歩容、つまずきやすさ、装具の重量感など質問項目の中で挙上のしやすさに関連する項目が多かったこと、質問項目の中で最も応用的な動作であったことから、多くの項目との有意な相関があったと考える。また、段差の昇降が装具使用時に必要性の高い動作であることが示唆される。【理学療法学研究としての意義】 本研究では、装具全体の満足度や各質問項目の満足度がどのように関係しているのかを明らかにし、理学療法士が関わることで装具使用満足度の向上につなげられると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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