理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
「生活体力・改変型身辺作業能力」の妥当性の検討
中井 真吾溝辺 英子原田 長
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p. Eb1271

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抄録
【はじめに、目的】 地域自立高齢者の身体動作能力指標として(財)明治安田生命厚生事業団体力医学研究所が開発した「生活体力」がある.生活体力は、日常生活の主要な動作を4つに分類し、それぞれの動作能力を測定するものである(種田ら,1995).われわれは、その1つの「身辺作業能力」に着目し、難易度を下げた改変型身辺作業能力テストを開発(以下「改変型身辺」)、他の運動要素との関係を横断的に比較し、「改変型身辺」がバランス能力を反映していることを本学会にて報告した(理学療法学36,suppl.1:64,2009).本研究の目的は、「改変型身辺」とそれ以外の運動要素を縦断的に計測し、各々の改善量の関連性を検討することである.【方法】 対象は、平成22年9月から平成23年9月までの間に当施設の介護予防通所リハビリテーションを利用し、ベースラインと6ヶ月後の測定が実施できた41 名(男性13名、女性28名、年齢82.1±4.6 歳、身長149.4±9.9cm、体重53.5±11.7kg、要支援1、23名、2、18名)とした.測定項目は、握力、大腿四頭筋の等尺性筋力(以下脚筋力)、5m通常および最大歩行速度、開眼および閉眼片足立ち時間、Timed Up & Go test(TUG)、「改変型身辺」とした.「改変型身辺」の測定方法は、ロープの持ち手を水平横にあげた指先から対側の肩峰点までの長さとし、起立姿勢から中腰になりロープを床に接触させ、前方へ片足ずつ跨いだ後、もう一度起立姿勢になった後、中腰になりロープを床に接触させ、後方へ片脚ずつロープを跨ぎ、起立姿勢に戻る1回の所要時間とした.筋力はアニマ社製ハンドヘルドダイナモメーターμTasF-1を用い、体重で除した各々の測定は、2回計測し、良い方の値を採用した.統計解析は、ベースラインと6ヶ月後の測定データの差を対応のあるt検定で解析し、有意差のあるものについて、各々の変化量の相関をpearsonの相関係数を用いて検討した.なお、「改変型身辺」ができない者のデータは、今回の最大動作時間である27.4秒を基準にし、27.4秒として処理した.有意水準は5%未満とした.統計解析ソフトウェアはSPSS(ver.16)を使用した.【倫理的配慮、説明と同意】 本測定の趣旨と方法に対して十分な説明を行い、書面による同意をもらった.【結果】 6ヶ月後、有意な改善が認められたのは、脚筋力(変化量0.03±0.07kg/w)、5m最大速歩(-0.5±0.7sec)、開眼片足立ち(3.34±11.7sec)、TUG(-0.9±4.1sec)、改変型身辺(-2.1±3.3sec)であった.「改変型身辺」の平均値は、ベースライン12.9±8.2sec、6ヶ月後10.7±7.9secであった.初回評価時の不可能者は6名、6ヶ月時の不可能者は5名で、いずれも要支援2であった.初回評価と6ヶ月評価で双方とも不可能だった者が4名、不可能から可能になった者が2名、可能から不可能になった者が1名であった.相関分析の結果、6ヶ月の変化量で「改変型身辺」と有意な相関を示した項目はなかった.【考察】 前回の横断的調査の結果では、「改変型身辺」は、片足立ち、ファンクショナルリーチとの関連性が示され、バランス能力を反映していると考えられた.今回、6ヶ月の介入で有意な改善を認めた脚筋力、5m最大歩行速度、開眼片足立ち、TUGと「改変型身辺」の変化量間の相関を分析したが、いずれの項目とも有意な相関は認められなかった.特に歩行、TUGなどの運動能力を評価する検査とも相関がなかったことから、「改変型身辺」は独立した新たな運動能力を評価する測定項目であることが示唆された.バランス能力の項目である開眼片足立ちと相関はなかった.改変型身辺の測定動作は片足立ちの姿勢が含まれており、特に片足立ちのような静的なバランスを表す項目との関連が予測されたが、反映をしていなかった.片足立ちは重心を支持基底面内にとどめておくテストであるが、改変型身辺は、跨ぎ動作があるため、左右もしくは前後の多方向における重心移動能力が必要であり、関係がなかったと考えられた.今後の検討課題として、「改変型身辺」と日常生活活動能力との関連性を検討していく必要がある.【理学療法学研究としての意義】 要支援、要介護者の日常生活動作能力を簡便に測定する方法はない。われわれの開発した「改変型身辺作業能力テスト」は、生活場面に即した運動能力テストであり、能力の要因を検討し、測定の妥当性を確立することは、理学療法研究方法として意義は大きいと考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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