理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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テーマ演題 口述
教育領域における障がい児に対するリハビリテーション支援の在り方に関する研究
─全国肢体不自由特別支援学校特別支援教育コーディネーター調査から─
眞鍋 克博吉井 智晴前園 徹中前 和則重村 信彦寺田 敬子永金 麻衣子青木 菜摘小池 功二
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p. Ec1053

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抄録
【はじめに、目的】 本研究は、障がいのある児童・生徒(以下障がい児)が自立ある学校生活を営む上で、リハビリテーション(以下リハと略す)の分野から教育領域に、どのような支援方法およびそれを実現するためのシステムと質量を伴なった適切なサービスが必要とされているのか、その現状を実態調査し、必要かつ適切なリハサービス提供の在り方及びその実践のための課題を明らかにするための基礎資料とすることを研究目的とした。【方法】 対象は、全国肢体不自由児特別支援学校241校の特別支援教育コーディネーター各校1名(回収数112、回収率46.5%、性別:男性67名、女性45名、平均年齢47.1±6.74歳)。特別支援教育領域へのリハ支援によって障がい児の教育的参加は進展することを研究仮説とした。量的調査研究法を用い、学校生活及び身体への取り組み(リハの取り組み)状況についての調査は自記式配票調査法採用。1週間留置し、調査票の配布及び回収は郵送にて実施した。調査時期は2011年2月。分析法は、基本属性、学校生活状況、リハの取り組みの動機、実施状況、情報や連携、住宅改修・福祉用具相談、教育領域へのリハ導入について、統計ソフトSPSS17.0を使用し、単純集計とχ2検定および相関係数を用いて分析した。【倫理的配慮、説明と同意】 調査、及び調査結果の公表は、厚生労働科学研究に関する指針に従った。【結果】 主な原因疾患は、脳性麻痺(86.6%)。リハ以外で最も多い医療的処置は痰等気道分泌物吸引(52.4%)。学校生活における困り事は、医学的処置及びリハ支援(37.4%)、学習支援(33.6%)。リハの主な実施者は教員(89.7%)、主目的はADL維持・改善(47.9%)、主内容は基本的運動(45.8%)、ほぼ全員がその有効性を認め(97.2%)、その実施による社会参加は、学校内の活動(61.8%)に留まっていたが、障害を持ちながらも前向きに生活している(86.9%)と回答した。リハの情報提供(72.5%)、その説明を理解(77.8%)、関係者との情報提供や連携(79.0%)が十分できていると答えた者は7割を超えた。在宅改修や福祉用具に関する相談は、9割弱の者がその有効性を認めている(88.9%)。学校におけるリハの取り組みは、日常生活を充実し(95.2%)、学校生活への参加を促進する(96.3%)と答え、さらに学校へのリハ・セラピスト支援によって学校生活の自立は促進する(91.5%)と回答した者は9割を超えた。また、在宅訪問リハ支援によって、学校生活への参加は促進する(85.7%)と答えた者は、9割弱であった。【考察】 リハの取り組みは、学校生活の自立に有効性があり、障害児は前向きの生活を営み、リハ支援によって障がい児の教育的参加は進展するという高い割合の回答を得たが、その主目的はADL維持・改善であり、内容は基本的運動に留まり、社会参加は学校内の活動に限られている。その要因として、原因疾患の殆どが脳性麻痺であり、医学的ケアを要しながらも学習支援をしなければならないという特殊性にあると考えられるが、その実施者の殆どはリハ系免許を有しない教員で占められている。学校生活の自立を図り、地域社会への参加を促す上でもリハ系免許を有する教員によるリハ支援の必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 特別支援教育への理学療法士による支援は、従前の医学モデルから新たな教育モデルに基づく支援の在り方として、教育的理学療法学の地平を開き、職域拡大に繋がる大きな意義があるものと考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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