理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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介護保険要支援者と非認定者における運動機能の違い
池田 恵森島 健
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p. Ed0815

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抄録

【目的】 介護保険要支援1の状態像は「社会的支援を要する状態→日常生活を送るうえでの基本的動作(歩行・排泄・食事摂取など)は、ほとんど自分で行うことができるが、手段的日常動作(道具的日常生活動作⇒買い物に行く、電話をかける、食事の仕度をする、掃除をする等)を行う能力が低下している状態」と言われているが、介護保険非認定者とほとんど変わらず単独で公共交通機関を利用して外出しているなど、非認定者と変わらない生活範囲・行動をしている要支援1の方々も多い。今回この点に着目し、介護保険要支援1認定者と介護保険非該当者の間に運動能力的な差が存在するのか、そして同じ要支援1でも公共交通機関の利用の可否の差があることより、この点でも運動能力的な差があるのかを、「公共交通機関の単独利用能力」に着眼して比較・検討した。【対象者】 東京都S区内のN在宅サービスセンターにおいて、2011年4月より9月の半年を1クールとしたS区の市町村特別給付事業において軽度介護保険認定者に実施している「リハビリ特別給付事業」参加者及び介護予防事業において介護保険非認定者に実施している「介護予防事業・筋力向上トレーニング」参加者を対象とした。対象者において期間内通して参加できた「リハビリ特別給付事業参加者(N=22)のうち、調査対象とした体力測定項目を行え、調査への協力同意を得られた要支援1認定者12名(男性3名・女性9名、平均年齢79.0才→以下要支援1群)」と「介護予防事業・筋力向上トレーニング参加者10名(男性2名・女性8名、平均年齢81.4才→以下非認定群)」を対象とした。【方法】 要支援1群・非認定群共に、クール開始時と終了時に実施する体力測定のうち、2011年9月に実施した終了時体力測定で「リハビリ特別給付事業」「介護予防事業・筋力向上トレーニング」共通して実施した「握力」「開眼片足立ち(以下片足立ち)」「5m最速歩行(以下5m歩行)」の測定値を用い、要支援1群を「公共交通機関の単独利用可能者7名(以下可能群)」と「公共交通機関単独利用困難者5名(以下困難群)」に2グループに分け、非認定群との3グループ間で比較し、検討をした。統計処理はStatVeiwを用い、FisherのPLSDにて有意水準5%未満で統計処理し検討した。【説明と同意】 対象者に本研究の主旨と目的を説明し、発表に対する同意を得た。【結果】 握力平均値について、可能群は22.43±5.89、困難群は22.5±3.16、非認定群は20.5±6.42であった。片足立ち平均値について、可能群は10.34±15.56、困難群は16.01±24.73、非認定群は39.85±22.67であった。5m歩行平均値について、可能群は4.97±2.52、困難群は4.46±1.26、非認定群は2.93±0.80であった。FisherのPLSDにて、握力では3群間での有意差は認められなかった。片足立ちでは、可能群と困難群間では有意差は認められず、可能群・と非認定群間・困難群と非認定群間では有意差が認められた。5m歩行では可能群と困難群間・困難群と非認定群間では有意差が認められなかったが、困難群と非認定群間では有意差が認められた。【考察】 今回の結果より、可能群・困難群合わせた要支援1と非認定群には運動能力的に、特に片足立ち能力について差があることが認められた。この事は、バランス能力・歩行能力が転倒リスクに影響すると言われている事等より、要支援1の方々が生活に支援を必要とする運動能力的要因になっているのかと考えられた。さらに、不安定な乗り物に乗りこむ際に必要と考えられる高い立位バランス能力や、実用的な歩行スピード等の歩行能力が必要とされると考えた「公共交通機関の単独利用」について、可能群と困難群に差が見られないことが認められた。この結果より、転倒公共交通機関利用に際して必要な能力は、他の因子(耐久性等の運動能力や独居等で単独での外出の必要性が高い等の社会的背景や、外出に対する恐怖心等の精神的理由等)が影響していることが示唆された。【理学療法学としての意義】 今回の結果よりバランス能力・歩行能力が要介護認定に影響する傾向が考えられた。この事より、介護認定の軽度化及び介護予防に当たり、バランス能力・歩行能力の改善が有効であろうことが示唆された。今後この2つの運動能力の向上に留意し運動プログラムを進めていき、高齢者の方々の生活範囲・能力に変化があるかを観察していきたい。そして公共交通機関の利用能力に影響する因子も継続して調べていきたい。今回は対象者数が少なかったため、今後対象者数を増やし継続検討していきたい。

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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