理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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テーマ演題 ポスター
千葉県理学療法士会公益事業局スポーツ健康増進支援部の活動
─千葉県各市町村で実施した歩行年齢測定会の測定結果報告─
東 拓弥岡田 亨村永 信吾宮島 恵樹秋葉 洋介亀山 顕太郎小串 健志小西 由里子彦田 直間島 和志松岡 孝次郎丸 洋平森 大関 俊昭
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p. Ed0828

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抄録
【はじめに】 近年の急速な高齢化社会の進行を背景に,要介護状態の高齢者増加防止策として転倒予防などの対策が全国的に普及している.我々は歩行機能低下を自覚する高齢世代に加え、壮年世代に対する運動機能の維持向上への取り組みが早期発見・対応として重要と考えている.そこで,千葉県理学療法士会は県内における専門領域職能団体として,千葉県民の能動的で活発な健康社会づくりに寄与するため,千葉県理学療法士会公益事業局スポーツ健康増進支援部の取り組みとして2010年度より「千葉県から転倒を減らそうプロジェクト」を展開している.本取り組みは県民に対する転倒予防を目的とした公開講座および歩行年齢測定会を実施し,その場で測定結果のフィードバックと自己管理方法としての運動指導を行っている.今回は我々が実施した歩行年齢測定会の測定結果について報告する.【方法】 対象者は2010年10月~2011年10月において千葉県内の6市町村で開催された健康まつり,または某百貨店で開催された健康関連イベントに参加された728名(22~85歳,平均60.6±16.3歳,男性233名・女性495名)であった。測定項目は,体組成(身長,体重,体脂肪率),Functional reachテスト(以下FR),Timed up&goテスト(以下TUG),立ち上がりテスト,2stepsテストの5項目を行った.村永らが考案した台の高さの違いによる立ち上がりテストを用い,40cm,30cm,20cm,10cm高の各ブロックへの腰掛け座位からの両脚立ち上がり(both leg standing,以下BLS)または片脚立ち上がり(single leg standing,以下SLS)の可否にて粗大下肢筋力を判定した.村永らが考案した2stepsテストは最大2歩幅を身長で除した数値にて,転倒危険予測を判定した.測定データをexcelにて処理し,各項目の分布,平均を算出した.【倫理的配慮,説明と同意】 測定に参加する県民には文章ならびに口頭にて十分な説明を行い参加する意志を確認した上で,測定を行った.また,測定会運営スタッフに対しては事故対応としてスポーツ健康増進支援部でイベント保険に加入した.【結果】 各測定項目の全体の平均は体重56.6±24.1kg,体脂肪率27.7±12.9%,FR29.7±6.7cm,TUG7.0±2.7秒,立ち上がりテストBLS10cm可能,2stepsテスト1.4±0.2であった.また,各測定項目の20~80歳の年代別の推移は体重で50歳代68kgのピークとなり,その他の年代48~58kgであった.体脂肪率では20歳代19%から上昇し,50~80歳代28~30%であった.FRでは20~60歳代30~34cm,70~80歳代24~27cm,TUGでは20~70歳代6.0~7.6秒,80歳代9.1秒であった.立ち上がりテストでは20歳代SLS30cm,30~40歳代SLS40cm,70~80歳代BLS20cm,50~60代BLS10cm,2stepsテストでは20~60歳代1.42~1.50,70~80歳代1.18~1.28であった.【考察】 各測定項目ともに年齢に比例して、筋力,バランスや柔軟性の低下が認められた.2stepsテスト1.25未満では転倒危険が上昇すると報告されており、70~80歳代の県民においては転倒注意群と考えられる.40~60歳代では転倒危険を認めないが緩除な筋力低下を認められ,さらに体重や体脂肪率が上昇傾向であり、筋力および体組成に対する運動指導や生活指導が必要と考えられる.【理学療法学研究としての意義】 測定会を継続することによって,千葉県民各年代の転倒リスク,運動機能の指標が示され,測定会の項目が行政と理学療法士間の共通言語と化し,行政施策の中で理学療法士として役割が求められると考える.進行する要介護状態への早期発見,運動習慣への動機付けという早期対応の促進にも繋がり,要介護状態への抑制の一助となり得ると考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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