理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
転倒評価項目としての歩行周期変動係数の有用性の検討
田中 武一山田 実永井 宏達竹岡 亨上村 一貴森 周平市橋 則明
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キーワード: 高齢者, 変動係数, 因子分析
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p. Ee0061

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抄録
【はじめに】 転倒は様々な因子が複雑に絡み合って発生する事故である。転倒を予防するためには、それらの因子を事前に把握し、その要因に対処することが重要である。歩行機能と転倒との関連については、速度や歩幅等の平均値が関係していると報告されているが、近年では平均値を観察するのではなく、これらの変動係数 (Coefficient of Variability: CV) に着目した報告が増えてきている。本研究では、加速度計を用いて計測した歩行周期時間のCV(歩行CV)と転倒との関連を明らかにすることを目的とした。また、副次的解析として、このCVと他の転倒関連項目との関係を比較検討した。【方法】 対象は、独歩あるいは歩行補助具を使用して自立して歩行可能であり、日常生活動作は全て自立して遂行可能な者191名(平均年齢80.7±7.9歳・女性161名)とした。評価項目は、快適歩行時の歩行CVと過去半年の転倒経験歴、Timed Up and Go test (TUG)、Functional Reach Test (FRT)、10m快適歩行時間、二重課題下(Dual Task: DT)10m歩行時間、5秒間立位ステッピング回数の計7項目とした。歩行CVは10m快適歩行時に3軸加速度計(ATR-Promotions社製)を両側外果に取り付け、中央8歩行周期を解析対象とした。加速度計のサンプリング周波数は200Hzとし、垂直成分の加速度信号より床接地時の特徴的波形が確認できることから、同成分の信号を解析対象とした。DTは副課題としてManual Taskを採用し、右手掌にお皿をのせ、その上にボールをのせた状態で測定した。また、ボールを落とす失敗は1度までは再評価を行い、2度失敗した者は課題が困難と判断し除外した。立位ステッピングは、ステッピング回数測定器(竹井機械工業製)を使用し、肩幅に開いた立位にて5秒間での最速足踏み回数を計測した。計測値は左右のステッピング回数の合計を用いた。統計解析は、対象者を過去半年間の転倒経験の有無により、転倒群と非転倒群の2群に分類した。連続変数の場合はshapiro-wilk検定にて正規性の検定を行い、パラメトリックであった場合には対応のないt-検定を、ノンパラメトリックであった場合にはWilcoxon rank sum検定を用いて2群間の比較を行った。カテゴリー変数の場合はχ二乗検定を用いて2群間の比較を行った。また、歩行CVをはじめとした転倒リスク関連評価項目の特性を分類するために因子分析を行った。因子の抽出には重み付けのない最小2乗法を用い、因子数の決定には累積寄与率が80%を超えるまでと規定した。因子数を決定した後にVarimax回転を行い、各因子について因子負荷量が0.400以上の因子項目を抽出した。なお、いずれの解析も有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 対象者およびその家族に対して、本研究の趣旨を紙面および口頭にてインフォームドコンセントを行い署名にて同意を得た。【結果】 転倒群73名(38.2%)、非転倒群118名であった。歩行CVは、転倒群が4.7±2.3%、非転倒群が3.8±2.0%と転倒群が有意に大きな値を示した(p<0.01)。その他の測定項目でも、TUG(転倒群vs非転倒群)14.3±6.1秒 vs 12.3±5.5秒(p=0.02)、FRT 17.3±8.5cm vs 20.2±7.5cm(p=0.02)、10m歩行時間 15.2±7.2秒 vs 12.3±4.5秒(p<0.01)、DT10m歩行時間 17.1±8.9秒 vs 13.9±5.7秒(p<0.01)、立位ステッピング 17.4±6.1回 vs 20.2±7.3回(p<0.01)と、全ての項目において2群間に有意な差を認めた。因子分析では、3つの因子が抽出され、因子1を説明する変数には10m歩行時間、DT10m歩行時間、TUG、因子2にはTUG、FRT、立位ステッピング回数、因子3には歩行CVが該当した。【考察】 歩行CVが高齢者の転倒経験の有無により違いがあるかを比較検討した結果、転倒群は非転倒群に比して、有意に高い歩行CVを示した。先行研究からも歩行周期時間のバラツキが大きいと転倒リスクが高いと報告されており、本研究もその結果を支持する結果となった。因子分析の結果より、転倒に関連するとされる評価6項目を3つに分類することができた。因子1には10m歩行時間、DT10m歩行時間、TUGのような歩行を要す測定項目が該当し、因子2にはTUG、FRT、立位ステッピング回数のようにバランスを要す測定項目、そして因子3には、歩行CVのように歩行やバランスを要するだけでなく歩行リズムも必要とされる測定項目が該当した。つまり、歩行CVは他の評価要因では捉えることのできない要素で転倒リスクを評価できる指標であると考えられる。【理学療法研究としての意義】 疾病や障害の予防、健康増進の視点から見た理学療法の必要性が叫ばれる中、本研究は、近年注目されている歩行変動の有用性および高齢者の転倒予防の評価項目の共通因子が明らかとなり、今後の理学療法士の専門性を支える一助になりうる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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