理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
デイケアサービス利用者の歩行能力別に必要なBerg Balance Scaleの水準
杉本 諭大隈 統古山 つや子小島 慎一郎佐久間 博子町田 明子坂本 佳代小宮山 隼也尾澤 勇海谷本 幸恵中城 美香室岡 修木橋 明奈丸谷 康平
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p. Ee0063

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抄録
【はじめに、目的】 Berg Balance Scale(BBS)は歩行能力に影響を与える要因の1つであり、理学療法場面においてもバランス練習がしばしば行われている。しかしながら歩行能力のレベルによって必要なバランス能力は異なるため、目標とする歩行能力に応じたバランス練習を考慮すべきであると考えられる。今回我々は、歩行能力とBBSの成績を比較し、各歩行レベルに必要なBBSの水準について検討した。【方法】 通所介護サービスを利用している高齢者のうち、介助での20m歩行が少なくとも可能であり、BBS測定時の指示理解が十分可能な者224名を本研究の対象とした。平均年齢は80.9±9.3歳、性別は女性144名、男性80名、要介護状態区分の内訳は要支援1が20名、要支援2が37名、要介護1が63名、要介護2が64名、要介護3が31名、要介護4が9名であった。自宅での歩行能力は、自己の身体機能だけではなく、家屋状況や自宅周辺状況などの外的要因にも影響を受けるため、今回は身体機能に着目し、評価時の「できる能力」としての歩行能力を測定した。段階付けはFunctional Independence Measureの移動項目を参考に、杖なしにて50mの連続歩行が自立している者を「独歩群」、杖使用にて50mの連続歩行が自立している者を「杖歩行群」、歩行は自立しているが連続歩行距離が50m未満または歩行に監視が必要な者を「監視群」、歩行に介助が必要な者を「介助群」とした。BBSは14項目の課題からなる総合的なバランス評価であり、各項目が0から4点で判定され、56点満点となる。分析方法は、まず歩行能力により対象を4群に分類し、クラスカルワーリス検定によりBBS合計得点を群間比較した後、マンホイットに検定によりBBSの各下位項目について歩行能力レベル間で群間比較した。次にBBS下位項目の群間比較により有意差の見られた項目について、変数増加法によるロジスティック回帰分析を行い、項目の重みの強さを求めた。統計学的分析にはSPSSver11.5Jを用い、有意水準を5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究で用いた測定項目は、利用者の身体運動機能の変化を捉えるため経時的に評価しているものであり、対象者には治療のためだけでなく研究活動にも利用することを説明し、書面にて同意を得ている。 【結果】 歩行能力別の内訳は、独歩群73名、杖歩行群71名、監視群59名、介助群21名であった。BBS合計得点の中央値は独歩群53点、杖歩行群51点、監視群41点、介助群31点であり、歩行能力が良好であるほどBBS得点が有意に高く、多重比較検定においてすべての群間にも有意差を認めた。BBS下位項目の分析の結果、独歩群と杖歩行群の比較では、「前方リーチ」、「拾い上げ」、「一回転」、「台への足載せ」において独歩群が有意に良好であった。杖歩行群と監視群の比較では、「座位保持」、「立位保持」、「閉眼立位」を除く11項目において杖歩行群が有意に良好であった。監視群と介助群の比較では、「座位保持」を除く13項目において監視群が有意に良好であった。これを基にロジスティック回帰分析を行った結果、独歩群と杖歩行群間では「一回転」、杖歩行群と監視群間では「一回転」および「台への足載せ」、監視群と介助群間では「一回転」が最終選択された。なお各群における「一回転」の中央値は、独歩群4点、杖歩行群3点、監視群2点、介助群0点であった。【考察】 本研究の結果、歩行レベル間の違いを最も良く表わしているBBS下位項目は「一回転」であり、各群によって中央値が異なっていた。一回転の各得点基準は、4点が「両方向ともに4秒以内で可能」、3点が「一方向にのみ4秒以内で可能」、2点が「ゆっくりであるが安全に可能」、1点が「監視が必要」、0点が「介助または不能」である。このことからバランス練習として一回転の要素を含んだ練習を行い、目標とする歩行能力に応じた一回転の得点基準を加味してバランス練習を考慮することが、歩行能力の改善に有用であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 本研究では、何れの歩行レベルの比較においてもBBS下位項目のうちの「一回転」が関連していたが、歩行レベルによって遂行の難易度が段階的に異なっていた。したがってバランス練習を行う際には、目標とする歩行レベルに応じたバランス(一回転)能力の水準を設定することで、より具体的なバランス練習の立案が可能となると考えられ、臨床研究として意義が高いと思われる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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