理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
キセノン光の星状神経節近傍照射実施中の血圧変動特性に関する検討
吉田 英樹
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p. Fb0795

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抄録
【はじめに、目的】 キセノン(以下、Xe)光の星状神経節(以下、SG)近傍照射は、非侵襲的に自律神経活動動態の変化、すなわち交感神経活動の抑制および副交感神経活動の相対的な亢進を引き起こし得る手法である。その一方で、このような自律神経活動動態の変化が、Xe光のSG近傍照射実施中の血圧にどのような影響を及ぼすのかという問題については未だ十分に検討されていない。以上から本研究の目的は、Xe光のSG近傍照射実施中の血圧変動特性について検討することとした。【方法】 若年健常者60例(女性23例、男性37例、年齢23.5±3.9歳)を対象として、以下の2つの実験を実施順序をランダムとして1日以上の間隔を空けて実施した。<実験1>対象者は、15分間の安静仰臥位保持(以下、馴化)終了後、同一肢位のまま両側のSG近傍へのXe光照射(以下、Xe-LISG)を10分間受ける。<実験2>対象者は馴化終了後、Xe-LISGを伴わない安静仰臥位保持(以下、コントロール)を10分間継続する。測定及び分析項目について、自律神経活動動態の指標には心拍変動データを採用し、各実験の馴化開始時からXe-LISG及びコントロール終了時までの間、対象者の心拍変動データを心拍計(RS800、Polar)を用いて連続測定した。その後、各実験の馴化終了時とXe-LISG及びコントロール終了時の心拍変動データを周波数解析し、副交感神経活動の指標である高周波成分(以下、HF)と交感神経活動の指標である低周波成分(以下、LF)とHFの比(以下、LF/HF)を求めた。その上で、実験1での馴化終了時とXe-LISG終了時及び実験2での馴化終了時とコントロール終了時との間でのHF及びLF/HFをWilcoxonの符号付順位検定により検討した。血圧については、測定部位を右上腕部とし、自動血圧計(UA-786、A&D)を用いて各実験での馴化終了時に加えて、Xe-LISG及びコントロール実施中の収縮期血圧(以下、SBP)と拡張期血圧(以下、DBP)を1分間隔で測定した。その上で、各実験における対象者の馴化終了時のSBP及びDBPを基準値として、Xe-LISG及びコントロール実施中の1分間隔で測定されたSBP及びDBPの基準値からの経時的変化をDunnettの検定を用いて検討した。全ての統計学的検定での有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者に対しては、本研究の目的や本研究への参加の同意及び同意撤回の自由、プライバシー保護の徹底等について予め十分に説明し、書面による同意を得た。なお、本研究は、弘前大学大学院医学研究科倫理委員会の承認を受けた。【結果】 HF及びLF/HFについては、実験2では馴化終了時とコントロール終了時との間で両指標ともに明らかな変化を認めなかったが、実験1では馴化終了時と比較してXe-LISG終了時でのHFの有意な増加及びLF/HFの有意な減少を認めた。血圧については、コントロール実施中ではSBP、DBPともに経過中での基準値からの明らか変化は認められなかった。これに対して、Xe-LISG実施中では、SBP、DBPともにXe-LISG開始5分以降での基準値からの有意な低下が認められた。【考察】 本研究結果から、Xe-LISGは、交感神経活動を抑制し副交感神経の相対的な亢進を引き起こす一方で、Xe-LISG実施中のSBP及びDBPを低下させる可能性が示唆された。Xe-LISG実施中にSBP、DBPが低下する理由としては、Xe-LISGに伴う自律神経活動動態の変化、特に交感神経活動の抑制を背景とした末梢血管抵抗や心筋収縮力の低下の関与が推察される。演者は以前、Xe-LISG後にSBPの低下に起因した起立性低血圧症状の発生率が高まることを報告したが、本研究結果はXe-LISG実施中の血圧にも注意すべきであることを示唆している。なお、本研究の対象が若年健常者であったことを考慮すると、今後、高齢者や自律神経障害を有する症例を対象として更なる検討が必要であろう。【理学療法学研究としての意義】 Xe-LISGは、主に上半身領域に出現した慢性疼痛や末梢循環障害に対する有効な物理療法としてしばしば用いられており、重篤な副作用を伴うことなく星状神経節ブロック様の効果を得られることが大きな利点とされてきた。しかし、本研究結果から、Xe-LISG実施中にSBP及びDBPが低下する可能性が示されたことから、特に高齢者や自律神経障害を有する症例に対してXe-LISGを実施する場合は、リスク管理の一環としてXe-LISG実施中の血圧チェックなどの対応が取られるべきであろう。このことは、臨床理学療法上、極めて意義深い示唆であると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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