理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
客観的臨床能力試験(OSCE)に関する検査技術習得の効用と評価尺度の信頼性
藤田 智香子岩月 宏泰
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キーワード: OSCE, 検査技術, 評価尺度
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p. Ga0189

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抄録
【はじめに、目的】 客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination:OSCE)は事前に受験生へ課題と評価項目を提示し,標準模擬患者(Standardized Patient:SP)がいる部屋で課題の実技を行わせて臨床能力を評価する。OSCEは1970年代から医学教育へ導入され,近年理学療法教育でも拡がりつつある。我々はOSCEを優れた臨床能力の試験としてだけでなく,臨床的な検査技術の習得を促す機会ともとらえ,関節可動域テスト(ROMT)と徒手筋力検査(MMT)について,教育的介入をはさみ2回OSCEを実施し,検査技術習得の効用と独自に作成した評価尺度の信頼性を検討した。【方法】 1.事前準備:ROMTのSP(左大腿骨頸部骨折・人工骨頭置換術後)とMMTのSP(腰椎椎間板ヘルニア)の年齢・現病歴等と両下肢のROMまたは筋力を設定した。SPは理学療法士(PT)が演じ,他のPTが設定ROMまたは筋力の再現性を確認した。また,ROMT・MMTの検査技術と学生の自己評価用の評価尺度を作成した。評価内容は,先行研究を参考にオリエンテーション,測定肢位,測定方法,注意点等の5カテゴリー10項目とし,判定は「5:よくできた~1:かなり不十分であった」の5件法とした。2.OSCE1回目:本学理学療法学科2年生30名(男女各15名)が,SPの指定された両下肢のROMT(2方向)またはMMT(2筋)を測定し,SPとPT教員の2名が検査技術を評価した。測定後学生は自己評価を記入し,評価者から助言を受けた。一人あたりの所要時間は,入室から課題指示1分,測定7分,評価記載1分,助言2分,退室1分で計12分。3.教育的介入:1回目のOSCE後に学生全般の不足点を説明して実技練習した(2時間)。4.OSCE2回目:1回目同様に実施したが,課題は1回目と異なる運動方向または筋力測定を出題した。調査期間は平成22年11月8日~平成23年1月25日。5.分析:ROMT・MMTの評価結果を集計し,SPとPT教員の検査技術評価の一致度は級内相関係数(ICC)で検証した。【倫理的配慮、説明と同意】 研究協力者公募に応じた学生に研究概要と対象者の有する権利を記載した文書を配布し,口頭で説明した後,全員から同意書の署名を得た。【結果】 1.評価合計点(平均):ROMTの検査技術評価は50点中1回目28.1±4.6点,2回目31.9±6.6点。学生自己評価は1回目27.7±6.1点,2回目32.4±5.7点。MMTの検査技術評価は1回目26.8±4.1点,2回目29.4±4.0点。学生自己評価は1回目26.9±5.5点,2回目30.3±5.2点。検査技術評価と学生自己評価は,ROMT・MMTともに類似の結果となった。2.評価尺度の信頼性(検者間の一致度): SPとPT教員の検査技術評価における各項目のICCは,ROMTで1回目0.089~0.401,2回目0.249~0.552。ICCが2回とも0.4以上の項目は「指示内容の適切さ」「わかりやすい説明」,0.2以下が1回目の「適切な測定肢位」「姿勢の安楽さへの配慮」「ゴニオメーターを適切にあてる」「必要な固定」「代償運動への注意」であった。同様にMMTでのICCは1回目0.062~0.588,2回目0.298~0.674。ICCが0.4以上の項目は「わかりやすい説明」「指示内容の適切さ」「正確な判定」,0.2以下が2回目の「代償運動への注意」であった。【考察】 検査技術の評価合計点は,ROMT・MMTともに1回目より2回目が高く,検査技術の向上が認められた。但し,介入後の評価向上は当然とも考えられ,また想定したより少ない伸びであり,今後さらに技術習得を促すための学生への動機づけや学習環境の整備,介入方法の工夫が必要と考えられる。今回作成した評価尺度では,2回実施したOSCEの検査技術評価と学生自己評価で類似の結果が得られたことから妥当な内容であったと考えられる。但し,指示・説明に関する項目ではICCが比較的高かったが,測定方法に関する項目では低く,測定方法の細分化を図り,評価基準を明確にする等修正が必要である。なお,ICCはほとんどの項目で2回目に高くなっており,評価者の慣れの影響も示唆され,事前の綿密な打ち合わせとシミュレーションでの確認等で共通認識を高める必要もあると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 OSCEが学内演習として臨床実習前の検査技術習得の有用な機会であることを示した。また,評価尺度は評価基準の明確化や評価者の共通認識を促す啓発でより信頼性向上が期待できる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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