抄録
【目的】 外来患者に対する理学療法において,患者満足度を高めるためには理学療法士(PT)と患者の信頼関係が欠かせない.そのため当院では,予約での理学療法を基本としているが,医師の診療後,直ちに予約外での理学療法が必要となる場合もあり,その対応が課題となっていた.また,当院では人工膝関節手術を行っているが,近年では身体活動量の高い患者が増加しているため,術後長期間を経過した患者に対して,医師の診療だけでなくPTによる身体機能評価,運動指導が必要であると考えられる.これまでは術後定期検診に合わせて評価することを患者に指示していたが,十分なフォローアップは困難であった.これらの課題を解決するため,医師の外来診療に合わせて「理学療法外来(PT外来)」を開設した.PT外来では,主に予約外での理学療法,運動指導,人工膝関節術後定期評価(定期評価)を実施している.今回,PT外来の開設後12ヶ月間の実績および患者満足度を調査した.【方法】 平成22年4月から平成23年4月までの期間において,PT外来を受診した患者を対象とした.調査項目は,1)PT外来依頼延べ件数,2)対象疾患,3)実施内容(理学療法,運動指導),4)定期評価件数とし,医療記録から後方視的に抽出した.定期評価は,平成18年4月以降に当法人で人工膝関節手術を受けた患者に対して,術後3ヶ月,6ヶ月,12ヶ月,以降6ヶ月ごとに実施し,膝関節可動域および等尺性膝伸展筋トルクの測定,ADL達成状況の評価,運動指導等を行っている.患者満足度については,平成23年4月から5月までの期間において,PT外来を受診した患者70名にアンケート調査を行った.「本日の理学療法外来の内容について,満足度をお聞かせください」という質問に対して,5段階(1:不満~5:満足)で回答させた.調査手順はPT外来でアンケート票を配布し,無記名で回答した後,院内の回収箱に投函させた.統計解析は調査項目の記述統計を行った.さらに,術後3ヶ月および6ヶ月の定期評価のフォローアップ率を算出し,χ2検定を用いて当法人の過去データ(平成19年5月から平成20年5月まで)と比較した.有意水準は5%未満とした.【説明と同意】 対象には事前に調査の趣旨を説明し,同意を得た.【結果】 PT外来の実施日数は12ヶ月間で144日であった.PT外来依頼延べ件数は1,280件(1日平均件数:8.9件,範囲:1-22件)であった.疾患内訳は,変形性膝関節症が827件(64.5%)と最も多く,次いで変形性股関節症126件(9.8%),肩関節疾患(腱板損傷,脱臼,拘縮)111件(8.7%),脊椎疾患(脊柱管狭窄症,椎間板ヘルニア)76件(5.9%),膝スポーツ障害(膝前十字靭帯損傷,半月板損傷)69件(5.4%),その他73件(5.7%)であった.実施内容は理学療法133件(0.9件,0-11件),運動指導467件(3.2件,0-15件),定期評価件数680件(4.7件,0-20件)であった.定期評価時の術後経過期間は3ヶ月-4.8年であった.3ヶ月および6ヶ月でのフォローアップ率は,PT外来ではそれぞれ89.8%,86.0%,過去データでは64.5%,51.9%であり,両期間においてPT外来が有意に高かった.患者満足度において,理学療法または運動指導に対して,満足64%,やや満足24%,普通12%,定期評価に対して満足77%,やや満足13%,普通10%であった.PT外来に対する意見として,「詳しく説明を受けられて良かった」,「(筋力を)測定してもらえて安心する」,「分からなかったことをまた聞けて良かった」などが挙がった.【考察】 当院における予約理学療法の患者数は,PT 1名あたり10名/日であり,PT外来では1日約9件の予約外での患者に対応していたことから,業務を円滑に進める上で十分な役割を果たしていると考えられる.人工膝関節術後患者においては,PT外来ではより多数のフォローアップが可能であり,PTによる運動機能評価,運動指導は,高い患者満足度を得ることができる.通院での理学療法を終了した後でも,身体機能を維持できているか確認できること,疑問を相談できることが要因であると推察する.今後は,PT外来単独の効果を明らかにすること,より長期にわたって高いフォローアップ率を維持することが課題である.【理学療法学研究としての意義】 PT外来での理学療法,運動指導,身体機能評価は,業務の効率化,患者満足度の向上に貢献することができる.またPT外来は,PTの職域拡大においても意義深い取り組みであると考える.