抄録
【はじめに、目的】 近年、日本の理学療法士の急増により日本理学療法士協会、都道府県士会では組織力の強化が重要視されている。福島県理学療法士会(福島県士会)においても組織力の強化に取り組んでおり一応の成果を収めている。福島県士会では、より組織力強化、活性化を企画実行する組織を作るため平成22年4月に活性化委員会準備室を立ち上げた。本研究の意識調査は福島県士会が組織力強化に必要なことを明らかにするために実施した。今回、活性化委員会準備室が行った会員の意識調査結果と活性化委員会の人材発掘、立ち上げをまとめたので報告する。三菱総合研究所(三菱総研)では活性化した組織とは高い組織としてのやる気を高い成果につなげている組織と定義している。【方法】 1)福島県士会に対する意識調査;対象は平成22年4月に福島県士会所属2年目以上の会員759名とし、郵送にて調査を行った。調査期間は平成22年4月18日~5月15日。三菱総研「組織を活性化させる風土づくりに関する調査」2003年の結果をもとに組織活性化の風土に関する項目を福島県士会に合わせ改訂し5項目、情報共有の主体性に関して2項目、福島県士会各局各支部の役割達成について5項目、福島県士会を良くするためのアイデアを自由記載、福島県士会に積極的に協力可能な会員の方に「記名」を含む設問で構成された調査票を独自に作成した。2)委員会の人材発掘;調査票にて得られた協力可能な会員に活性化委員会の趣旨や役割、活動内容案等の説明用紙を郵送し、活性化委員を立候補により募集した。【倫理的配慮、説明と同意】 本調査を実施するにあたり紙面により研究の趣旨およびプライバシーの保護、学会等公式な場での公表、人材登用にのみ使用することを説明し、調査票の提出により本研究への同意を得たものとした。【結果】 調査票回収率は292名38.5%であった。組織風土の項目は「私は士会が外部情報に敏感な組織だと思う」はい40.1%。「私は士会が情報共有を重んじる組織だと思う」はい46.6%「私は士会が目標に向かって一丸となる組織だと思う」はい35.3%。「私は士会が会員の個性を尊重している組織であると思う」はい22.6%。「私は士会が地域社会への貢献を重んじる組織だと思う」はい50.7%となった。情報共有の主体性の項目は「私は士会からの連絡・広報は十分と感じている」はい41.8%。「私は士会からの連絡・広報を積極的に情報収集している」はい28.8%となった。会員が感じる各局各支部の役割達成度については「わからない」と回答した割合が39.8%となった。自由記載欄には情報共有や会員交流について27件、学術研修会について19件、福島県士会がわからないことを知った7件、その他28件。福島県士会活動に協力可能な会員への記名104名であった。2)人材発掘立候補者数は4名であった。その後調査票自由記載の内容を考慮し、準備室長が電話で登用し9名となった。2つの支部からの人材登用ができず各支部長に推薦してもらい準備室長が説明意思確認を行った。平成23年1月に活性化委員会が11名で立ち上がった。【考察】 今回、組織活性化の風土に関する5項目について三菱総研が企業2001社から回収した調査結果(活性化した組織の回答の平均値)に対し「はい」と答えた割合がすべて上回った。対象や質問を一部改訂しているため単純比較はできないものの現状の福島県士会が活性化した組織の風土は持っていると考えられる。しかし「会員の個性の尊重」や「会員の情報収集」が低値を示しており、自由記載にも多く記入されていたが、会員は福島県士会の活動に対し興味関心が低い、受動的との側面があると言える。このことから活性化委員会の組織作りに関しては意欲的、能動的を特に考慮して行った。さらに各局各支部の役割達成について「わからない」と回答した割合は39.8%と高く、福島県士会の大きな問題点と考えられる。よって福島県士会の組織力強化にまず必要なことは「知ること」であり、現状よりも多くの会員同士の交流が必要と結論付けた。これらにより2011年の活性化委員会では多施設会員が顔を合わせる「交流会プロジェクト」時間場所を問わない「ソーシャルネットワークサービスプロジェクト」 匿名の意見を集める「マーケティングプロジェクト」役員の考えを紙面で届ける「ニュース連載プロジェクト」の4つプロジェクトを立ち上げ活動中である。さらに今回の東日本大震災に伴い「会員災害対策プロジェクト」も立ち上がった。【理学療法学研究としての意義】 都道府県士会において組織活性化に対する風土の調査や立ち上げの紹介をしたものは少ない。今後の都道府県士会の組織力強化においてひとつの参考になりうると考えられる。