理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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テーマ演題 口述
臨床実習施設による取り組み
―事前課題実施の問題点―
小次 康家相馬 千鶴子
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p. Gc0404

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抄録
【はじめに、目的】 現在、臨床実習において養成校数・学生数の増加や、それに伴う実習施設の不足、症例の確保が困難、モチベーションの低下など様々な問題点が挙げられる。その中で実習中の課題が増加すると、患者様に触れる機会が低下し、また睡眠不足によるリスクの増加などがより実習を困難なものにする。第一報として円滑な実習を遂行するため、当院での臨床実習における事前課題の実施を報告し、実習中の課題を減少させる事前課題の実施状況について検討を行った。結果として実習生5名全員が80パーセント以上の成績をおさめ、感想文では全員が非常に効果的で力がついたと自覚している内容であった。その後、継続して効果判定を行う中で課題をクリアできる場合(以下ケースA・第一報)と課題をクリアできないケース(以下ケースB・第二報)が発生した。今回は課題をクリアできない(ケースB・第二報)学生への対応について、その原因を考察する。【方法】 ケースBは第一報と同様に、8週間以上の長期実習で来院した4名に、当施設にて選択した筋肉名を100個、簡易な起始停止・神経支配・髄節を実習前に覚え、実習開始時にテストを実施し、実習終了後の意見を得た。【倫理的配慮、説明と同意】 学校側に承諾を得て、学生には臨床実習指導者会議等で口頭と文書にて直接十分な説明を行い、同意を得た。その際に資料・正解解答を配布し、自主学習が可能なように実習開始までの期間は余裕を持って2ヶ月以上の期間を確保した。【結果】 実習開始時の初回テスト(ケースB・第二報)では4名全員が60パーセント以下の成績だった。実習終了までに再テストを行い2名は80パーセント以上を獲得し、2名は初回と同じ60パーセント以下であった。学業成績との関連では(ケースA・第一報)は5名全員が学業成績中位~上位の学生であり、(ケースB・第二報)では4名全員が学業成績下位の学生であった。実習終了時の感想では「国家試験でも役立つ」や、「実習前の何をしたら良いのかわからない期間にやるべきことがはっきりした」、「褒められて嬉しかった」、「今後ももっと勉強をしたい」などの肯定的意見や、「やらなければいけないのはわかっていたが、手をつけなかった」、「めんどくさい気持ちがあった」、「やらなくてもなんとかなると思っていた」などの否定的意見があった。【考察】 ケースAでは先行刺激として事前課題を与えることで、今まで勉強したことを復習し、実習前に何をすればよいかわからない不安な学生に方向性を持たせることが出来た。その結果、具体的な行動として、実習開始前までにきちんと事前に学習し、暗記・模擬テストを繰り返し実施するなど適切な行動がとりやすくなった。しかしケースBでは先行刺激としての「事前課題をやらなければいけない」という気持ちでは具体的な学習行動を引き出すことが出来ず、学生生活での下位レベルで合格してきた経験が、やらなくてもなんとかなるという認識を生むことになった。その結果、事前課題の点数が悪く、後続刺激として自信を無くす、実習へのモチベーションが低下し自己学習時間がさらに減少するという悪循環に陥った。ケースBのそれまでの学業成績との相関については、事前課題を遂行困難な学生は、学業成績が下位の学生にみられ、「学習習慣」の確立が学校同様に実習においても克服できなかった。知識の有無や技術の無さではなく、そこに至った主原因の「学習習慣」の欠如が大きく影響していると考えられ、今後の検討課題となった。現状の実習形態では画一的・標準的な実習レベルを求めるのではなく、「学生のレベル」にあわせた実習がより必要になることが今回の事前課題の実施により再認識した。【理学療法学研究としての意義】 養成校の増加・学生数の増加による臨床実習現場の負担を軽減し、円滑な臨床実習を行うことが重要であり、今後もツールとしての事前課題について更なる効果判定を行う必要があると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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