理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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テーマ演題 口述
臨床実習における問題修正のための検討
─実習進行を妨げる要因に着目して─
真塩 紀人平林 弦大白石 和也高島 恵
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キーワード: 臨床実習, 主体性, 指導技術
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p. Gc0405

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抄録
【はじめに、目的】 昨今、社会状況や世相の変化、反映により、理学療法士養成校の学生においても質の問題が問われることが多い現代であると考える。特に、養成校からの臨床実習において、実習進行を妨げる要因が度々問題視されている。臨床実習において学生自身の問題点がクローズアップされがちであるが、真摯に実習指導者側や教員の問題点にも焦点を当てる必要がある。今回、本学の関連実習施設における臨床実習指導者と本学教員との「臨床実習検討会議(委員会)」において、実習進行を妨げる学生側の要因ならびに指導者・教員側の要因に焦点を当てて論議した結果を以下に報告する。【方法】 本学の教員と関連実習施設との臨床実習検討会議(委員会)は、年4回実施されている。臨床実習検討会議(委員会)の参加メンバーは、各実習施設において実習指導をこれまで数多く経験している者で構成されている。今回は、「実習進行を妨げる要因」に着目して、KJ法を用いながら学生側、指導者側の双方において、情意面・知識面・技術面の3つの側面における問題点に焦点を当てた。3つの側面に関して、各々小項目からそれに関連する大項目へとカテゴリー化し、内容を集約しながら論議した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、今後の学生の臨床実習教育をより発展的にして行くためのものである趣旨を会議参加者に説明し同意を得、また臨床実習における学生個人の情報を特定できないように配慮した。本研究は、本学の運営会議の承認を得た上で実施した。【結果】 臨床実習における情意・知識・技術の3つの側面に関して、学生側の問題点と指導者側の問題点を集約した結果を以下に述べる。大項目における情意面では、学生側の要因として、1)主体性の低下2)メタ認知能力の低下3)精神面の弱さ4)実習に対する動機5)社会性(ルール)の低下が挙げられた。一方、指導者側の要因として、学生に対する態度・接し方が挙げられた。知識面では、学生側の要因として、1)考える力2)勉強の仕方、が挙げられ、指導者側の要因として、1)考え方の提示2)セラピストとしての未熟さ3)実習への準備が挙げられた。また、技術面では学生側の要因として、1)基本的な技術不足2)表現力が挙げられ、指導者側では、1)指導方法2)実技指導3)業務量とのバランス4)課題量の設定が挙げられた。以上の議論の核心としては、学生側の要因では特に情意面に問題点が多く、指導者側では指導方法等の技術面に問題点が集約される傾向にあった。【考察】 今回、「実習進行を妨げる要因」に着目し、学生ならびに臨床実習指導者の諸問題を明らかにするべく、論議を行った。上記の結果から、学生側の主たる要因としては、学生の情意面の問題点が集約される傾向にある。情意面の中でも特に「実習に取り組む姿勢」に関することが多く、医療人になるための自覚の欠如、自発的な発言や行動力の乏しさ、実習上の確認や課題作業の怠りが考えられる。また、学生自身の振り返りが行えず、軌道修正が困難になり易いことが考えられる。先行研究によると、臨床実習の総合評価が高い学生は、情意面が指導者の考える及第レベルで、かつ理学療法評価が遂行でき、担当症例の疾患に関する知識を有している者とされ、「情意面と理学療法評価が低いと判断された場合、たとえ知識と技術に優れていても、総合評価は本来よりも低くなるかもしれない」としている。一方、指導者側の主たる要因としては、指導方法等の指導技術の不足に関することが多く集約された。学生を上手に誘導して行く技術や指導形態、学生指導と自身の業務量とのバランス、課題の適正量、等が考えられる。これらから、ある程度の実習指導経験がある指導者は、学校での既習知識を求めるだけではなく、学生自身が内省しながら主体的に実習を行うことを求めている。また、指導者側は、理学療法技術だけではなく、教育方法論や教育の実施方法を身に付ける必要性を感じていると言えるのではないだろうか。つまり、学生の主体的な働きかけと指導者側の適切な促しの相互作用によって、学習活動が促進されると考える。今後も臨床の先生方と継続的な話し合いを行いながら、学生指導方法の改善、新しい指導形態の模索、学生の動機付けを高める方法等について考えていく。【理学療法学研究としての意義】 臨床実習教育は、学内教育と併せて臨床の経験値を積み上げて行く過程では不可欠である。学生は、指導者の指導・監視の下、対象者のもつ障害について評価を行い、治療計画立案を摸倣レベルで実現できることが目標となる。実習を進めて行く上で、学生と指導者双方の問題点を明らかにし、改善策を考えることで、より明確かつ有効な臨床実習、リハビリテーション教育を行うための糧とする。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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