理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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テーマ演題 口述
神奈川リハビリテーション病院における理学療法士卒後教育の取り組み
相馬 光一下田 宏登森井 和枝波多野 直澤田 あい
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p. Gc0407

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抄録
【はじめに】 理学療法士養成校の増加に伴いセラピスト数も急増している。この現状において卒後教育の必要性が高まっている。日本理学療法士協会の理学療法教育ガイドライン(1版)では臨床実習の到達目標のミニマムを「ある程度の助言・指導のもとに、基本的理学療法を遂行できる」としており、卒前教育の到達目標の中に「自ら学ぶ力を育てる」とある。理学療法士の質の向上のためには卒後教育が重要であるが、施設によっては新人教育が十分整っているとはいえない現状があるように思われる。神奈川リハビリテーション病院では総合リハビリテーション施設としての特徴を生かして、平成19年より臨床研修に取り組んでいる。今回、その取り組みを紹介すると共に平成21年から23年の3年間の結果をまとめたので報告する。【卒後臨床研修の紹介】 研修の目的は、臨床現場の治療を通じて基礎的な理学療法技術を習得する事である。募集は公募とし、対象は県内に在職中の臨床経験4年未満の理学療法士を基本としている。開催は8月で期間は当初は4週間であったが、現在は1週間とした。研修内容は1日平均6症例の治療見学と動作分析、介助方法やシーティングの講義、症例検討会、他部門の見学である。見学は補装具外来、更生援護施設、作業療法、体育、リハビリテーション工学、希望者には手術見学や家屋環境調査の同行を実施している。毎日、参考になったことや学んだこと、明日行いたい事や希望などを記載できる気づきシートを作成し、研修生とのコミュニケーションを図っている。受け入れ状況は、平成19年は1名の応募があった。平成20年は8月と2月に2週間ずつの合計4週間としたが応募がなかった。平成21年は参加しやすい期間を考え1週間とし、8名の応募の内7名、平成22年は5名、平成23年は4名の研修を実施した。【方法】 平成21年~23年の3年間の実績、終了時のアンケートと気づきシートをまとめ、効果の検証を行った。【倫理的配慮】 アンケートは無記名とし、個人が特定できないよう配慮した。【結果】 3年間の研修生は16名、経験年数は1年未満3名、2年未満9名、3年未満3名、4年未満1名。所属施設は病院9名、クリニック3名、老健3名、市職員1名であった。費用負担は出張8名、自費8名であった。期間や時期については特に問題の指摘は無かった。講義は大変役に立ったが77%、役に立ったが20%で良好な結果であった。補装具外来の見学により理学療法士があまり関与していない施設もあり必要性を感じた、更生援護施設の見学からグループ指導について参考になったとの意見が多くきかれた。他部門の見学より作業療法を見学する機会が無い、クリニックに作業療法士がいないので参考になった。体育やリハビリテーション工学の見学から、理学療法と関係が深く興味を持てたなどの意見があった。手術(人工股関節置換術)見学希望は10名であった。治療研修は症例に直接触れる事でより参考になったとの回答が多かった。気づきシートの内容は触り方から姿勢アライメントの見方、可動域・筋力の改善、動作分析・ハンドリング、車いす調整・シーティングなど多岐にわたる内容が記載されていた。未経験の疾患が診られてよかった、多くのセラピストの治療見学ができて良かったとの感想が多かった。また、細かい配慮に感謝するコメントが多く、気づきシートにより研修の内容や希望の確認を行った結果と考える。研修の評価として、他の人に勧めるかの問いに全員が勧めたいと回答していた。【考察】 卒前教育の不足を補完するためには卒後教育が必須である。しかし、就職先によっては人員の不足などにより充分な教育指導が受けられない場合も多い。卒後教育では理学療法士の質の向上のために、施設を超えて学習を行っていくシステム作りが必要と考えている。研修結果より、評価・治療・効果判定、患者への取り組みや治療効果を見学し体験することで理学療法の実践を学ぶことができ、他部門の見学によって理学療法士としての知見を広げたことが確認できた。また、動作分析、介助指導やシーティングなどの講義が有用であったとの評価も受けており、研修を通して、理学療法士として研鑽していく姿勢を提供できたと考える。一方、開催する側の利点として教授することで理学療法士の資質向上につながり双方の学習の場となった。卒後臨床研修のような取り組みは国内ではあまり類が無い。今後は学習内容の分析や追跡調査を行い、より良い臨床研修を開催していきたい。【理学療法学研究としての意義】 卒後教育において他施設での臨床研修は有効である。様々なニーズに応えられる理学療法士を育てるために、更なる卒後教育の充実とそのシステム作りが望まれる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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